今日の視点 (伊皿子坂社会経済研究所)

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♯1085 機械の身体

2018年06月06日 | 日記・エッセイ・コラム


 21世紀の到来まで20年となった1980年、米国の未来学者アルビン・トフラーは、後に世界的なベストセラーとなる『第三の波(The Third Wave)』を著しました。この著書においてトフラーは、人々の生活様式を一変させ行動そのものを変革する「情報革命」の到来を予言しています。

 人類はこれまで大変革の波を二度経験してきたと、トフラーはこの著書に記しています。「第一の波」は新石器時代の農業革命で、農耕の開始により人類に定住・集住や人口規模の拡大、富の集積など文明の礎を与えました。また、「第二の波」は18世紀後半にイギリスで始まった産業革命で、世界は化石燃料と科学技術を駆使した経済規模の拡大や大量消費の時代を迎えることとなったということです。

 そしてこれから始まる「第三の波」として、トフラーは当時、情報革命による脱産業社会(情報化社会)が世界中に押し寄せると予言しています。

 気が付けば、トフラーが「第3の波」を著してから既に40年近くが経過しようとしています。この間、インターネットは世界の隅々にまで普及し、タンザニアで放牧生活を送っているマサイの人々がスマートフォンで世界の国際相場を検索するような時代を迎えています。

 各国の情報や文物を人々が瞬時に入手できるようになったことで経済のグローバル化はさらに進み、現在では、世界中の市場が地理的、時間的なギャップなしに直接結ばれています。

 中国ではキャッシュレス化が進んだことで、10万人近い人々が既に財布を持つ必要のない生活を実現しています。(彼の国では)防犯カメラと顔認証技術などを併せることで、国民の誰がどこで何をしたかなどがひとまとめの情報として把握される超管理社会が、もうすぐ現実のものになりそうです。

 また、政治的な意見や世論はSNS上で形成され、時に人々を激動の政治運動に巻き込むようになっています。またその一方で、情報をネットに頼る人々は、権力による情報操作に乗せられたりフェイクニュースで踊らせたりもしているようです。

 さて、こうして「第3の波」の真っただ中にある現代社ですが、4月4日の「ASCII.jp」が伝えるところでは、米国の物理学者ミチオ・カク氏は、人間の身体にチップを組み込みデジタル化することで、30歳以上は歳を取らなくてすむようになるような夢のような「第4の波」の到来を予言しているということです。

 全世界から4万人以上の関係者を集めIBMが米ラスベガスで開催した年次イベント「Think 2018」で講演したカク氏は、物理学者によって生み出された産業や社会の変化にも、これまでに大きな「3つの波」があったと説明しています。

 ひとつは「蒸気」の利用で、熱力学を活用して蒸気機関が生み出され、機械を動かす原動力になったというものです。次に、それから80年が経過して、物理学者は電気と磁気を発明しラジオやテレビが生まれた。そして、さらにその80年後にはトランジスタやレーザーが発明され、宇宙プログラムが開発されたことでハイテクが加速したとしています。

 それでは、それに続く「第4の波」とはどのようなものなのか。(先程も触れたように)それは「人工知能」「バイオテクノロジー」「ナノテクノロジー」の革新によるものになるだろうと、カク氏は指摘しています。

 これからは、人間の身体のデジタル化が進み、(例えば)ロボットの一部を自分の身体のなかに埋め込むことができるようになるだろう。小さなカプセルの中に磁石とカメラが入っていて、それを飲み込むと体内の写真を撮影して送ってくれる(文字どおりの)Intel Insideの状況なども生まれるだろうということです。

 さらに、人間の身体や臓器を人工化、デジタル化が進めば、AI技術との組み合わせで加齢の問題さえも解決することがかもしれないとカク氏は説明しています。

 氏はその具体例として、「細胞をプラスチックの容器のなかに入れておけば、ひとつの細胞から完全な耳や皮膚、骨、心臓弁も作れるようになる。若くて新しいものに交換することもできる。それを可能にするのはAIである」と話しているということです。

 カク氏はこの講演で、今後5年以内に砂粒よりも小さいコンピューターが登場し、日用品やデバイスに埋め込める世界が到来するといった予測もしています。半世紀に渡る半導体の世界に引導が渡され、AIや神経ネットワークが牽引するコンピューターと脳との(直接の)インターフェースが始まるということです。

 氏はまた、ロボットの台頭についても触れています。

 今のロボットの脳(=AI)はゴキブリ並みでも、長期的に見ればロボットは人類の存在を脅かす存在になり得る。その転換点としては、ロボットが「自己認識」を持つ時ではないかと氏は指摘しています。

 今のロボットたちは、自分たちがロボットだとは認識していないが、時がたてばネズミぐらいの頭脳やうさぎレベルの頭脳を持つようになるだろうと氏は言います。そして、次には猫や犬ぐらいになり、さらには猿と同じぐらいの知性を持つようになるはずだということです。

 犬はまだ混乱していて、ご主人を一番偉い犬だと思っているかもしれないが、猿は確実に「自分たちは人間でない」ということがわかっている。なので、もし、ロボットが猿レベルまで自意識を持てるようになったら、脳にチップを入れて(悪い考えを持ち出すロボットがいたら)すぐにシャットダウンできるようにしておかなければならないと話したということです。

 いずれにしても、(そう遠くない未来)人間の身体にAIやロボット技術が影響する未来がやってくるのは明らかだというのが、「第4の波」を受け止めた人間社会に関するカク氏の認識です。

 1970年代の終わりに人気を博した松本零士氏の手によるSFアニメ「銀河鉄道999」は、不老不死の機械の身体を求めて宇宙をさすらう少年が主人公でした。そして、そこに描かれていたのは、機械の体を手に入れることができた(恵まれた)人たちだけが、幸せに暮らせる世界です。

 また、ハリウッドで実写映画化もされた日本のアニメ「攻殻機動隊」では、サイボーグ化された身体に脳の神経を直接ネットに接続する電脳化技術を組み込んだ、21世紀の終わりごろの完成された管理社会を描いています。

 はてさて、技術によって加齢や生命を完全に管理できる時代は本当にやってくるのか。我々の予想をはるかに上回る技術がもたらす社会の在り方を想像すると、楽しみでもあり恐ろしくもなるところです。


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