定年後の生活

サラリーマンが定年後経済的に安心して生活する最善の方法は自分の事業を始めることです。

人材の流動性

2007-03-11 16:40:17 | Weblog
非正社員の正社員化が盛んに言われています。正社員の方が給与も地位も有利になるので勤務する立場では望ましいのですが、雇用者からすれば人件費の固定化と上昇によってコスト増、つまり競争力の減少になるので避けたいところです。労働分配率を高めればそれだけ企業は弱くなり、国際競争に不利となり、長期的には社員のためにもマイナスになるのではないか、そんな心配をしますが、他方経営者と株主のみが現在の利益を享受するのでは不公平です。この問題の背景は、日本の人材市場が流動性に欠ける点にあるのです。つまり、現在正社員として勤務できる人たちはそれなりの能力と努力に加え幸運にも恵まれた方々であります。また、正社員になりたくてもなれなかったためやむを得ず非正社員として働いている人も多くいます。同じ職場でも派遣社員や非正社員は正社員から下に見られるというのが現状です。私が某大会社の管理職をしていたときの経験でも派遣社員は勤務時間中実によく働くのに、一部の正社員はゴマすりと人事の噂話に精を出しているのを見てきました。大組織には年齢を問わず働かない人間が大勢います。
問題は、正社員の固定化であり、利権化にあるのではないでしょうか。非正社員の中にも能力や気力もあるのに機会に恵まれないために適職が与えられない人が多くいます。有能な非正社員に正社員と同じ仕事と待遇を与えることと、企業が正社員を不必要に増やすことなく、その競争力を維持強化することとは、果たして矛盾する課題なのか、このように考えてくると本当の問題は人材の流動性不足、つまり一度正社員になるとその地位は保証される反面、非正社員はなかなか仲間に入れてもらえない点にあります。
発想を変えてみましょう。労働基準法を改定して、一年以上の雇用契約は禁止する、としたらどうでしょうか。世の中のすべてのサラリーマンは、公務員も含め、雇用契約は毎年更改されるのです。雇用される立場からこれを不安定とみるか安定と見るか、どうでしょうか。雇用者側は有能な社員をキープするために常に緊張しなければなりません。同時に、一人でも多くの有能な社員を獲得すべく広くアンテナを張って競合他社と競争するでしょう。有能な人材は働く場所に事欠かなくなる、給与も上がる、勤務先は世の中にごろごろある。世間のニーズにそぐわない人、怠け者、ゴマすりだけのずるい人間などは、失業か、非正社員になるかです。
格差社会の真の問題は、多くの意欲ある人々を企業が(役所も)入り口で締め出す点にあります。雇用機会が少なすぎること、あってもその情報が必要な人に届かないこと、人材市場がうまく機能していないことです。終身雇用制の最大の欠点は正社員の利権化にあります。日本の会社の管理職ほど楽な仕事はありません。部長や役員になればどんなにひどい管理態度であっても部下は辞めません。これも利権化です。運がよいだけで景気の回復した企業で役員におさまっている人も多いのではないか。現在の勝ち組(いやな言葉ですが)その利権を死守しようとする、これが格差の始まりです。
わが国の近未来を考えるにつけ、中国、インドなどの新興の大国が怒涛のごとく追い迫る状況が容易に予想されます。これを迎え撃つためには、日本の優れた人間が能力をフルに発揮できる平等な社会の仕組みをつくること、これが生き残るためのキーファクターであります。格差は最小限にしなくてはいけない。未来を信じてがむしゃらに働いてきた世代の私たちは、そのために何かしたい、そんな気持ちです。