日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

「『補講組』の三人」。

2013-02-01 08:20:28 | 日本語の授業
 晴れ。

 さて、補講の学生達のことです。
 フィリピンから来た学生は、彼の地でも大学二年までは通っていたとのことで、他の二人に比べてしっかりして見えます。(日本語の)基礎もやっていた。但し…忘れているふう。もっとも授業に参加しているうちに少しずつ思い出しているようですから、「ひらがな」からやらねばならぬ他の二人に比べ、補講の時間はかなり余裕があるようです。

 そして残りの二人。聞くと二人とも17才で同じ年。数日遅れてきた中国人学生は、正規のクラスに中国人がいることもあり、何かと頼って教えてもらえるようですが、タイから来た学生には、身振り手振りで対するしか手段がありません。もっとも、明るくて、「テキトー」を地でいっているような少年ですから、あまり気にしてはいないようです。

 昨日は、この(正規の)クラスでも、「どうですか」と、「どんな○○ですか」が入りましたから、早速、スリランカとベトナム、中国の山を使って練習してみました。勿論、スリランカの学生には、「短い名前の山」と念を押しておきます(名前が長いのです)。一通り終わった頃、フィリピンから来た学生が、言いたそうに私の顔を見ています。「大丈夫?」と聞くと、頷きます。それで、彼女にも参加してもらいました。

 すると、それを見ていたタイ人少年、急に慌てだして、教科書やら、翻訳やらをひっくり返しはじめました。どうも、来たばかりの彼女が当てられたと言うことは、お鉢が自分にも回ってくる…と思ったらしい。それに気づいた隣のベトナム人学生が笑いだしたので、後ろの席の学生達も気づいたらしく、いつの間にか、皆、目引き袖引きで、彼の様子に注目しています。

 さて、フィリピンから来た学生が言い終わりました。タイ人少年、「う、う、ブハオ」と言うのです。中国人学生二人が、「は?」。これはどうも中国語の「不好」に聞こえたらしい。少年の左傍らに座っていたスリランカ人学生が、一生懸命、日本語と英語で「『山』のタイ語を聞いているのではなくて、タイの『山の名前』を言います」と彼に教えています。

 少年の表情やらが面白いので、黙ってみていますと、どうやら分かったらしく、やっとホッとしたような顔になって、タイの山の名前を、ぽろりと言いました。思わず、皆が拍手。皆、笑って見ていたけれども、「できるかな、出来たらいいな」と、少し心配していたのでしょう。そばのベトナム人学生など「すごい、すごい」と言って彼の肩を叩いています。

 そして、最後に来た中国人学生です。彼には隣の中国人学生が助け船を出し、それでも日本語でどうにか言うことが出来ました(彼の場合は、ほんの数日前に日本に来たばかり、しかも日本語など全く耳にも頭にも入っていないのです)。

 但し、この中国人学生は、補講組の、タイやフィリピンから来た学生に比べて、肩の力を抜くことができます。休みになると下の階のクラス(「中級」に入っています)から同じくらいの年の学生が様子を見に来てくれますから。最初に学校に来た時の表情と、昨日の表情とは全く違って見えました。日本語学校で、同じ年の中国人とあれやこれや話すことができてホッとしたのでしょう。彼女とは境遇も似通っているでしょうし、しかも半年ほど先に来日しているので、いろいろなことを訊ねることもできるでしょうし。

 彼ら二人(タイ人少年や中国人少年)だけではありません。高校生や中学生くらいの年で外国(彼らの場合は日本ですが)に来てしまうと、友達も作れず、その結果、社会が広がっていかないのです。その頃は、まだ学校という基地が必要で、そこを拠点に社会の接点を探すくらいしかできないものです。それを経ずに、一人で世間に乗り出すことなど、出来ないと見ていた方がいいでしょう。

 ここは日本ですから、日本語が出来なければ、何をしたいと思っても、狭き門になってしまいます。彼らが、特に、中国から来た少年が、それに早く気づいて、上の学校に通うことを考えてくれるといいのですが。

日々是好日
コメント
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