日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

「『柳』、『八重桜』、『菜種梅雨』、春の日本」。

2010-04-13 09:10:34 | 日本語の授業
 「サクラ(桜)」が終わると、次は「ヤナギ(柳)」。もっとも、「サクラ」には、まだ「ヤエザクラ(八重桜)」があります。「ヤエザクラ」は、「ソメイヨシノ」などに比べれば、少し遅く満開の時期を迎えます。満開になれば、昨日のように一日中、雨でも降ろうものなら、その重なり合った花びらの、一枚一枚に、水分をしっかり溜め込んで、陽に映えた時よりも、ずっとボッテリ見えてしまいます。それで、私たちは、あろうことか、高校生の頃、この美しい花を蔭で「ブタ桜」と読んでいたのですが。

 もっとも、こういう姿は、「花かんざし」としては、(明るく見えますから)適しているのでしょうけれど、なべて「サクラ」に求められる「はかなげな風情」など、どこをさがしたって見られませんから、常に「ヤエザクラ」は脇役ということになってしまいます。

 で、今年の「サクラ」は、もう終わりということで、「ヤナギ」です。

 「ヤナギ」と聞いて、すぐに浮かぶのは、啄木の
「やはらかに 柳あをめる 北上の 岸辺 目に見ゆ 泣けとごとくに」
でしょう。やるせない春です。川面に映るヤナギ影。これは郷愁の歌というよりも、傷つきやすい青年の心を、そのままに歌っているように思えるから不思議です。どこか、甘く、切ないのです。甘ちゃんの歌のように感じられるのです。青年期の剥き出しの心は、庇うものがないので、傷つきやすいのです。

 さて、学校です。

 昨日は、お昼から「入学式」でした。で、その前に、内モンゴルの学生と、ベトナムの学生を連れて、市役所へ「外国人登録証」と「国民健康保険」の手続きをしに行きました。その時に、ついでに、まだ「外国人登録証」の更新をしていないという在校生がいましたので、一緒に連れて行きます。

 この時も、ベトナム人学生が、なかなか来ないのです。来ないというか、まだ起きていないというか…、それで、同室の学生に電話をして、駅まで連れてきてもらいました。ところが、やって来た学生を見て、みんなで驚いてしまいました。ぱりっとしたスーツ姿なのです。寝起きという感じが全然しないのです。どうもおめかしに時間がかかったらしい…。入学式はお昼からですよ。

 この手続きに思いの外、時間がかかったのですが、その上、ベトナムの学生が、日本語も英語も駄目と言うことで、母国の住所が書けません。あわてて、学校へ連絡して、教えてもらうやらで大変でした。

 しかし、去年の学生達は、役に立ってくれますね。「外国人登録証」の手続きの時には、新入生のそばについてもらい、通訳やら、説明やらをお願いしました。それから、見ていると、新しく来た内モンゴルの学生が二人、日本語がほとんどわからないであるかのように見えるベトナム人学生に、一生懸命話しかけています。どうも、積極的に(無理矢理に)交流しようとしているらしいのです。あまりに二人が熱心に話しかけますので、ベトナム人学生のほうでも、何も言わぬではすまなくなったのでしょう。何やら答えているようです、日本語で。

 声こそ聞こえませんでしたが、口は開いていましたし、うなずきあっていました。こうやって少しずつ親しんでいくのでしょう。

 その帰りでのことです。シトシト雨の中を、(学校へと)戻っていると、突然、傘を打つ雨音が重くなりました。すると、内モンゴルの学生が「先生、梅雨ですね。毎日ずっと降るのですか」。なるほど、梅雨ですか。けれども残念ながら、これは、彼が知っている「梅雨」ではありません「菜種梅雨」と言いまして、「ナノハナ(菜の花)」が咲く頃に続く長雨なのです。彼が知っていた、夏の、酷暑の前に続く「梅雨」ではないのです。

 4月の初めに、フフホトへ行きました時も、私などには「ああ、ここには花もないし、樹々の緑もまだなのだ」と寂しく感じられたのですが、彼の地の人々からしてみれば、それは当然のことであり、なんの不思議もないことなのです。それどころか、逆に、日本は草花や木々の緑に溢れている国だとも見えるのでしょう。そして、おそらく、それを象徴するのが「雨」なのです。その「雨音」であり、その雨の「重さ」なのでしょう。いくら日本人が、(現状に)不満を持っていようとも、ああいう乾燥した大地に育った人たちから見れば、ここは緑の天国なのです。

 乾燥地から来た人たちばかりではありません。熱帯の国から来た人たちもそうでした。熱帯でも、思いの外、花は多くないのです。花どころか、木の種類もそれほど多くはないように見えました。人々が住んでいる所はそうなのです。どこかしら、だだっ広くて、日本の方が「色」に覆われているように思われました。だから、タイやベトナムから来た女学生が、「日本はきれい。花がたくさんある」と、散歩して民家の庭を覗くたびに言っていたのでしょう。

 もう一つ付け加えますと、日本の風は、この時期、特に柔らかく、しかもやさしいのです。南国で感じられるような、べとつくような、まとわりつくような熱気もありませんし。雨が降れば、多少寒くはなりますが、まだまだ風は、やさしいと言えます。

 これは、「フフホト」や「北京」から戻ってくれば、「成田(空港)」で、すぐにわかることです。外に出た途端、、柔らかい大気にくるまれて、ほうと落ち着くのです。それは、「春の季節に、日本へ戻った」ということを実感できる刹那でもあります。

 と、書き進めているうちに、外が随分明るくなりました。学生達も来始めました。また新しい学期が始まります。

日々是好日
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