日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

「雨の朝」。「水を貯えた木」

2010-10-21 12:08:55 | 日本語の授業
 今朝は雨です。パラパラと、雨と呼ぶにはかなり間遠に雨粒が落ちてきます。「アカメ」の植木の下など、まだ全然濡れていません。それくらい雨ともいえないような雨なのです。しかしながら、「アカメ」をしっかりと見てみれば、枝も幹もぐっしょりと濡れています。葉の上には大きな雨滴が溜まっています。風が一吹きでもしようものなら、バラバラと音を立てて崩れていくことでしょう。

 見ているうちに思い出したのですが、十年以上も前のこと、朝、奥多摩のどこかの山を廻っていたときのことです。晴れていたのに、急にパラパラと来たのです。雨かと驚いて仰ぎ見ても、青い空と白い雲が流れているだけ。いっこうに雨の降りそうな様子はありません。林の中は、風のそよぎすらなかったので、気がつかなかったのですが、上空を風が渡ったのです。それで、梢が揺れ、堪えていた露を落としたのです。

 山では林の中と木々の梢の方とでは、全く風の様子が異なります。上空では重い木の枝を軋ませるほどの風が吹いていたのです。それで、朝方の露が零れたのです。林の中はいろいろなことが起こります。急に足下を走っていった影の姿を見定めようと目を凝らすと小ねずみだったり、石が落ちてくるので慌てて崖の上を見上げると、キジバトが歩いていたり…。そして、この雨滴です。

 これが冬になりますと、早朝など、葉末に溜まった雨滴が氷になっていますから、この小さな氷の欠けらが、風が梢を渡るたびに、キラキラと小さな光となって、地上に落ちてくるのです。それを山の中腹にでもいれば、煌めきが緑の針葉樹の上に降りかかり、そして消えていくという幻想的な光景を見ることもできるでしょう。まあ、できると言いましても、私だって見たことはたったの一回しかないのですから、余り威張れたものではないのですが。

 これは降りかかる桜の花びらの中を歩くことができたというのと同じくらい、いわば僥倖と言ってもいいようなことなのです。とはいえ、山は、いつも、行けば、なにがしかの贈り物をしてくれます。それは春であれ、夏であれ、季節を問わず、時を問わず、同じことなのですが。

 もっとも、私が行けるような山ですから、せいぜい500か600㍍くらいの低山ですし、時には、「登る」とも言えないような、里山程度のものなのです。が、それでも自然の恵みは十分に与えてくれます。実際に、自然に恵まれていると私は思うのです、東京は。ずいぶん都心に近いところでも、そういう山がたくさんあるのですから。特に青梅線の青梅駅から先であれば、どこで降りてもいいのです。行きは、朝一番の電車に乗り、帰りも早めに下りて、電車に乗れば、疲れを翌日に持ち越すこともないでしょう。

 ただ、混むのです。電車が大変なのです。山好きといっても、私のように、そう高い山には上れないという人間は多いようですし。難を言えば、行きはいいのですが、帰りに何時間も立っているのは、こたえますね、山に登るよりも。

 今、在籍している学生の中には、大学院で森林や、ガーデニングを専攻したいと考えている者がいます。彼らに日本の山を歩かせてやりたいと思うのですが、なかなか時間が取れません。彼らも日本の山とはなんぞやと思っていることでしょう。日本に来たばかりの頃も、成田から行徳に到るまで、窓から見える水田や所々に残っている林に、感動していたくらいですから。

日日是好日
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