日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

「一人一人の『力』と、一人一人の『思い』」。

2011-05-24 08:54:21 | 日本語の授業
 昨夜来の雨が、重くしとしとと降り続いています。まるで梅雨時の雨であるかのような降り方です。きれいな黄緑をした「アマガエル」や「アジサイ」の花が恋しくなってくるではありませんか。そろそろ蛍の話が出てもおかしくない…などと、「小満」が過ぎたばかりなのに、そんなことまで、ふっと心をよぎってしまいます。

 今朝も、雨が道に大小の水たまりを作っていました。遠くからすかしみると、道のところどころにそれがあることがわかります。人は、それを避けながら歩くわけで、その流れが蛇の歩みのようにも見えてきます。自分も、前の人があの樹のところで右へ行ったなと見ながら歩いていると、その人が右へ曲がったところに、水たまりがあるのを発見し、同じように右へ曲がってしまうのです。

 雨の日は下を向いて歩く必要はありませんね。眼を前に据えて、前の人の動きを見、その人と同じように動いていけば、水しぶきを浴びるという可能性は少なくなります。

その人の前にも、人がい、きっと何人かは失敗したでしょうが、その後の何百人かの中には知恵者がおり、あるいは跳ねを防ぐ歩き方のプロがおり、それを見た人が、その人の通りに歩いて行けば、まず失敗はないのです。それをまた後ろの人がうまいものだなと思いながら真似ていく。そしてまたその後ろの人も…そういうことの繰り返しなのでしょう。

 もちろん、いったん切れてしまえば、一からやり直しです。何事によらず、一からやり直すのは大変です。振り出しに戻ってしまうわけですから。その点、梅雨に入りますと、毎日が雨のようなものですから、知恵がない私でも、この辺りに水たまりがあったはずだなとかすかな記憶に支えられてうまく歩くことだってできるのです。

 ここまで書いてきて、ふと先日見た「粘菌」の動きを思い出してしまいました。学習することのできる偉いヤツです。人は万物の霊長などとエバッテなどいられません。人間の作ったコンピューターだって、計画道路だって、これからは粘菌さんの指導の下に作られていく可能性だってあるのですから。

 人は、いつから、こうも愚かになってしまったのでしょう。いえ、愚かというのは間違い、自分が見えなくなってしまったのでしょう。人の失敗を見る度に、それを他山の石とすることなく、常に、「あいつは馬鹿だ、あんな失敗をして。だが俺は違う」と思ってしまうのです。それこそ己を知らぬ者の証。

 そうは言いましても、それは今だけの話ではなく、昔も、確かに、今の人間のような者はいました。「お山の大将、俺ひとり」なんてのが。ただその割合がドンドンドンドン増えていき、今ではそうではない人を捜す方が難しくなっているのです。

 私だってそうです。「今の科学力なら」とか、「日本の力をもってすれば」とか、そういう言葉に踊らされて前が見えなくなっていたのですから。だいたいからして、「日本の力」なんて国の力が、あるはずはないのです。そんなものは、画に描いた餅。それが証拠に、未だに前に進もうとする人たちを遮っている「立法の壁」なんてのがあることからも、わかるではありませんか。

 あるのは、一人一人の人間の力であり、それを支えたいと願う「人の本然」が生み出した「思い」です。国とか地方の政府とか役人とかは、その手助けをすればいいだけなのです。知恵なんて、大してみんな変わらないのですから(専門家にいくら知識があっても、それを活かせる人がいなければ、無に等しい)。それよりも「やりたい」「こうしたい」という思いの方がずっと強い。愕然とし、呆然としているときには、何かをやろうなんて気力は生まれませんもの。

 しかし、何かをやりたいと思ったときに、そこに、大きな壁が築かれていれば、個人の力ではどうすることもできないほどの、高く頑丈な壁になっていれば、人は今度は無気力になってしまいます。もう、再起不能になってしまうのです。そして次は、現状から逃れようと、「惚け」の世界へ逃避行したりもするのです。

 人は、社会的動物と言われるけれども、まず個人あっての社会であることも忘れてはならないと思います。社会が先にあるのではないのです。こういう抽象的な存在が、あれこれと人に命令するのでは、人はうまく生きていけないのです。

 教育もそうです。学校もそうです。まず学校があって、学生がいるのではなく、学生がいて、それから、その人たちを教えるための学校なるものが作られるのです。そこで必要なのは、学びたいという気持ちだけ。

 その先は多分、人それぞれ。その人たちの、その「人それぞれ」の願いに添うよう、学校なるものが手を尽くしていけばいいのです。

日々是好日
コメント
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