日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

「台風襲来」。「『入学式』で。先輩、『おしゃまさん』たち」。

2009-10-08 08:12:27 | 日本語の授業
 台風が来ているというけれど、今、ここは晴れています。涼しげな風が吹いています。穏やかな天気です。しかも、台風の風が、湿った暖かい風を運んできてくれたのでしょう、昨日までの「寒い。寒い」が消えてしまいました。

 惜しかったですね。もう少し出るのが遅かったら、自転車で来られましたのに。今日は、台風が来る。被害はこれくらいになる」と、朝から実況中継が続いていましたので、窓の外のお天気と比べながら、首をかしげていたのです。けれども、「目」よりも「公共の耳目」を信じてしまって、失敗しました。

 出がけも、(自転車に乗るのに)無理をすればできないことはないくらいの雨ではありました…が、大事をとってしまったのです。それでも、ぎりぎりまで、空模様と格闘していました。で、とうとう「エイッ」とばかりに出て来てしまったのですが、それが、多分、5分ほども早すぎた…のでしょう。もう少し遅かったら、自転車でスーイスーイと来られたでしょうに。残念至極…です。

 とは言いましても、昨日の段階で、この近所の小中学校は、(台風による)休校となっていましたから、その面倒さ加減は、私たちの比ではありますまい。本当に教職員の方々はご苦労様です。子供たちも、今日の分は、どこかで「落とし前がつけられる」ことを、きっと知りますまいから、今日一日は幸せに過ごせるでしょう。

 で、この学校の学生達の事です。私たちも、昨日、「雨風が強かったら、来なくてもいい」と言ったのですが、この「強さ」をどう理解するかが問題です。それによって、登校してくる人数が違ってきます。学校が好きな学生や、根がまじめな学生は来るでしょうが、「休み」に違いないと有頂天になっていた学生は、宿題もしてないでしょうから、もしかしたら、「急病」になるかもしれません。

 まあ、来たら来たで、「先生は、明日台風が来ると言ったのに、来なかったあ」とか、必ず言うでしょうね。何とかこちらのアラを見つけて「イチャモン」をつけてやろうと待ち構えている彼らに、絶好の言質を与えてしまうことになったでしょうから。

 ところで、この学生達の反応についてです。特に、高校を卒業して直ぐに来た学生達は、私たちが驚くほど、すくすくと大人になっていっています。「物わかり」がよくなっているのです。毎日顔を合わせていますし、いつも同じクラスの中でしか会っていないので、それとは気づかないことが多いのですが、半年というスパンで見てみると、やはりこの変化の大きさに驚かされてしまいます。それが、最もはっきり見えるのは、来日後一年ほどもたった「入学式で」というところでしょうか。

 今週の月曜日にも、「(10月生のための)入学式」があったのですが、その時に、去年の「7月生」である、例の「おしゃまさん」たちにも「新入生への一言」を述べてもらいました。「式」に参加したのは、今年の「一月生」と「4月生」、そして「7月生」だけだったのですが、この日も、上の自習室で、「おしゃまさん」たちが勉強していたので、「ちょっと、ちょっと」と連れていったというわけです。

 つまり、来日後、幾段階かの期間が異なっている学生達がいたことになり、それぞれが自分の「一言」を、「新入生」たちに言ってもらうという予定だったのですが、今年の「4月生」は、そういう応用が苦手の人が多かったので、そこで、「先輩」に代役を頼んだというわけです。ところが、これを聞いている学生達よりも、却って、私たちの方が、いろいろな感慨を抱かせられてしまったのです。

 この「おしゃまさん」たちの言葉を聞きながら、去年の「おしゃまさん」たちの様子や、今年の4月に入学した学生達に言っていた言葉などを思い出していました。

 今年の4月には、いかにも背伸びをしているなという感じで、来日したばかりの「4月生」たちに「歓迎の言葉」を述べていました。しかしながら、大卒者が目立つ「4月生」に比べると、たとえ、8か月ほども前に日本へ来ているとはいえ、高校を卒業したばかりだった彼らは、いかにもあどけなく、初初しく見えました。先輩面をしての「歓迎の言葉」は、どこかしら実体と離れ、上滑りしているような印象を与えてしまっていたのです。

 ところが、今回は違っていました。日本語で、新入生たちにこの学校のことを紹介してもらったのですが、その時の彼らの態度も、言葉も、すでに今年の四月に来日した、年上の人たちを食っていました。

「みんなは、進学するために日本へ来たのだから、どんなに大変でもその気持ちを忘れてはだめだ」。
「そのためには、どんなにアルバイトが大変でも、勉強に来たという本分を忘れてはだめだ」。
「先生は厳しいけれども、みんなを大学や大学院に入れるために、そうしてくれているのだから、先生を信じて頑張らなければならない」

まるで、大人のような口調でした。しかしながら、実際のところ、彼らとても、今が一番辛い時なのです。こうして、先輩風を吹かしている時とは違い、その毎日というのは、相変わらず子供子供しており、特に大学を選ぶ時に、教師に叱られたりすると、大粒の涙をこぼして泣いたり、すねたりしていたのです。そんなわけで、あの人たち(おしゃまさん)に関しては、来日後既に一年が過ぎており、それに見合うだけの変化が起こっていたのだということに、ウッカリと気づかずにしておりました。

 彼らの言葉は、「4月生」により、それぞれ、中国語、ヒンディ語、シンハラ語、ネパール語に訳され、新入生に伝えられていきました。彼らの、今の自分たちの現状を映し出した真摯な「思い」は、きっと「新入生」たちにも伝えられ、いえ、それよりも、来日後既に10か月が過ぎた「1月生」や、半年を過ぎようとしている「4月生」たちに伝わったと思います。そして、来年の4月には、新たにこの「4月生」たちが、一番の先輩として、新たな「4月生」たちに、「おめでとう」という言葉と共に伝えていってくれることでしょう。

 壇上で、先輩面をしていた「おしゃまさん」たちは、今、一番大変な時期にあります。「留学試験」や「日本語能力試験(一級)」の準備の傍ら、大学の選択、そして、志望書書き、面接や入試試験の準備なども同時にやっていかなければならないのです。その上、彼らには、「一級試験」のあとも、「国立大学」を目指して、最後の最後まで勉強は続くのですから。

日々是好日
コメント
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