日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

「人面桃花」

2008-10-07 07:20:57 | 日本語の授業
 先日、かわいいエコバックを見つけました。ミニブタの写真が全面に貼り付けられたものです。もう少し小さかったら、絶対に買ったのですが、なにさま、大きすぎました。それで、無念の涙を呑んだという次第。

 ブタと言えば、姉の友人の妹の家では、ペットはブタならぬイノシシの子供、瓜坊主です。八重山列島のある島で暮らしている家族だそうで、そこの娘さんが友だちのうちへ遊びに行く時も、瓜坊主を何匹も従えてのお出ましなのだそうです。これを聞いて、すぐに林の中をミニブタがちょこまかと歩く姿と、草むらの花を摘んだり、虫を捕まえたりする元気な女の子の姿が、脳裏に浮かび上がりました。いいですねえ。「人間と動物の共生」なんて大上段に構えて言うのではなく、「一緒に暮らしている」、ただそれだけのことが、余計に羨ましく感じられます。

 そう言っていますと、「あら、うちの里では黒豚がペットよ」と怖ろしいことを言う人がいました。黒豚ですぞ。よくスーパーで、売られている、あの「鹿児島特産の黒豚」です。聞くとやはり、鹿児島の出だそうで。なるほど、なるほど。

 うちで飼っていた黒豚の中の一頭が、人間に慣れてしまって、というより自分をブタではなく人間だと思いこんでしまっていて、何でも人間と同じことをしたがるのだそうです。特に留守にして戻った時が大変。「会いたかった。どうして置いていったの」とばかりに突進してきて親愛の情を限りなく振りまきながら、ペタッとくっついて離れないのだそうです。もう、こうなってしまうと、いくら商売だとはいえ、「肉用」になんてできません。「死ぬまで面倒をみる。かわいくてかわいくてたまらない」状態になってしまったのだそうです。彼女曰く、「ブタはとても賢い」。そう言えば、宮沢賢治の童話にも、哀しみと悩みで痩せていくブタの姿が描かれていましたっけ。

 最近はブタづいています。私の鍵もライトのついた黄金ブタに守られていますし、目にとまるのはかわいいミニブタばかり。しかし、この近辺では飼っていそうな家は見あたりませんねえ。

 と、辺りを見渡しているうちに、小さな秋を見つけました。小さな小さな蓑虫です。植木の「幸福の木」の枝先にブラブラと揺れていました。

 外では木々の葉が丸まり始め、蓑の材料には困らないでしょうに、どうしてこんな小さな蓑にしにくそうな植木の世話になることを思いついたのでしょう。

 学校のホームページに載せてある写真をごらんになれば、すぐにおわかりになるでしょうが、下の教室の前には植木がいくつか置かれています。四季の花は定期的に替えられるようですが、端っこの「モミジの木」と、この「幸福の木」だけは、年中姿を見せています。特に「モミジの木」は、「紅葉狩り」を説明する時に都合がよく、その上、四季折々に姿を変えるものですから、日本の季節を体感させるにもちょうどよい教材なのです。

 しかし、どうして、あの蓑虫は「モミジの木」を選ばずに、過ごしにくい「幸福の木」を選んだのでしょう。

 もっとも、そう思っているのは、人間だけで、蓑虫にしてみれば、手近にあったからかもしれず、また、他の木と比べたことがないからかもしれません。

 学校にある、いくつかの植木に、学生達が興味を示すのは、実の姿を見かけた時に限られています。「スモモ」や「姫リンゴ」の姿を認めた時などは、「食べられますか」。何年か前には、「ニガウリ」がぶら下がっていましたが、その時は、「ニガウリ」の前で「国別『料理』の仕方の講習会」が始まってしまいました。

 花の赤や、白に目を留める学生は、思えば、それほど多くはありませんでした。けれども、中には、「とてもきれいだったから」と学校に持ってきてくれた学生もいました。「うちに置いていても、世話をすることが出来ないから」と言って。

 そう言った学生は、今はもういませんが、花だけは、去年同様、きれいな白い姿を見せてくれることでしょう。

日々是好日
コメント
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