想い続けることができれば、その想いはいつか成就する

その日その日感じたことを詩、エッセイ、短歌、日記でつづります。野菜も育ててます。

「荒くれ漁師をたばねる力」を読んで

2018年09月11日 | エッセイ
荒くれ漁師をたばねる力 ド素人だった24歳の専業主婦が業界に革命
クリエーター情報なし
朝日新聞出版

震災8年9月9日

 

 2011年に東北大地震があったのですが、それも足掛け8年が過ぎ、先日も北海道で震度7の大きな地震ありました。自然は侮ると大変なことになります。早く復興して欲しいですね。それと、最近の日本列島も温暖化ばかりでなく、付随の自然災害は頻発しています。気を引き締めて生活したいですね。

 

 

 

  さて、ある本屋の前で「荒くれ漁師をたばねる力」という本が目にとまりました。ぺらぺらめくっていると、表紙のお姉さんがきれいなばかりでなく、内容が斬新で読んでいるうちにどんどん引き込まれてしまい、その本を図書館で借りることにしました。幸い、新しい本なのに、近くの図書館にあり、すぐ、借りることができました。家に帰り一気に読んでしまいました。

 

 読みながら色々な事が脳裏に浮かんで来ました。ど素人だった24歳の専業主婦が漁業界に旋風を巻き起こしたのです。文字通り荒くれ男社会に3歳の子を抱えて飛び込んでいった熱血感溢れる若い母親の物語です。実話であり、文体は文学作品の文章とは違って洗練されていませんが、その方の足跡が手に取るように分かりました。久しぶりに心が揺さぶられる作品に出合えました。

 

 主人公は大学を中退し、離婚し、子持ちシングルマザーです。どこからそんなエネルギーが出てくるかという女性でした。きれいな人ですので、着飾ればどこかの女優さんのような顔立ちですが、考えること、行動力は並はずれていました。

 

 どうして、そういう力が湧いてきたのかも、考えてみました。まあ、今でいう男勝りという女性でしょう。すごい女性もいるもんだな、しかも、まだ、二十代と若いではありませんか、しかも、子連れでシングルです。並大抵のことでは、男社会の、しかも、見たこともない漁業の改革だなんて、想像すらできません。

 

 飽食の時代と言われ久しいわけですが、今の若者も、昔の若者もエネルギーも持つ人は同じようにいるんだなとつくづく思いました。千差万別、色々な人がこの世にはいます。若者を心配することはありません。次から次へとこういう人は必ず出て来ます。

 

 一人の人間の成長の裏には必ずその人の生い立ちが大きく関連しています。彼女もまた、その萌芽を生い立ちや子供の頃の想いに宿していました。彼女は福井県の事業家の家に生まれ、祖父は不動産と繊維で成功し材をなし、また、父も保険業やレンタル業を営む経営者でした。きっと頭もよかったのでしょう。子どもの頃は何不自由なく暮らしていたのにもかかわらず、彼女はその環境に満足することなく、違和感さえ抱いていたということです。普通の人なら満足してしまってそこで終わりです。凡人とはそこが違うんですね。彼らなら、そこで満足してしまうのが、落ちですが、安穏とした現状を憂えていたのでしょう。器が違います。

 

 子どもの頃は、船乗りかパイロットになりたいというあこがれを持っていました。あこがれを持つということは凄いエネルギーに繋がりますね。いつか、福井を離れて世界に羽ばたいてみたいと思っていたようです。そのためには英語力だといって、高校生の頃にはオーストラリアにも留学もしています。その頃から、行動力も並はずれなものを持っていたようです。反面、高校生の頃にはまさかの病気も患い余命半年といわれたこともあったようです。余命半年と宣告された時の驚きは将来に大きな影響を残したことは安易に想像できます。そのむなしさと、恐怖が未来をつなぐ漁業との縁に繋がり漁業の改革へと彼女を誘っていったようです。

 

 折しも、国では農水省が「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」(六次産業化・地産地消法)の制定が後押しをしていました。
平成22年12月3日に公布されたこの法律は、
(1)農林漁業者による加工・販売への進出等の「6次産業化」に関する施策
(2)地域の農林水産物の利用を促進する「地産地消等」に関する施策を総合的に推進することにより、農林漁業の振興等を図ることを目指しています。

 

  その流れもあり、国も漁師と消費者の間にある中間業者を通さずに魚を売る新しい流れを推奨していました。

 

 昔から続いている漁業組合に魚を卸し漁師は単に魚を取るだけという現状はずっと続いていました。また、魚の水揚げも近年徐々に減少の一途を辿り、漁師たちは危機感を抱えていながら、転職したりどうしようもない現実があったわけです。彼らもそれなりに直販なども考えてはいたのですが、その辺の知識や行動力はあまりなく、困難を抱えていたわけです。そこへジャンヌダルクのように現れたのがその女性、坪内知佳さんであります。因縁果という言葉がありますが、まさに因と果が縁で結ばれたのです。

 そんな折、ひょんなところから出会いがあり、彼女はその現実を知ることになります。彼女は幼子を抱えて生きてゆくために得意な英語の翻訳やインターネットで細々と生活をしていました。島の漁師と関わるようになり、持ち前の男勝りの性格と、幼いころからの想いに火が付いたようです。

 

 荒くれ漁師たちと葛藤や時には争をしながらも、漁師や日本の将来の漁業のことも想いその漁師たちの代表となり、奔走することになっていったのです。そのエネルギーは誰も真似できないぐらいの凄いパワーだと思いました。子どもを持つ母親の強さをまざまざと感じさせてくれました。「母の恩は海よりも深し、父の音は山よりも高し」と昔の人は言いましたが、その母の力は偉大だったなと感心した次第です。なかなか、そういう女性はいないと思いますが、坪内知佳さんという強くて才能のある男勝りの女性がいたという事実は本を読んでいて、飽食の時代に大きなインパクトを与えてくれましたし、私の生き方にも後ろから背中を押された思いでした。

 

 京セラを起こし、晩年JALを再建させた稲盛和夫さんは、会社を経営するときは「私心無かりしか?」と、自問自答して身を引き締めた経営にあたったといた言葉を思い起こしていますが、まさに、彼女はそれにまして、凄いエネルギーがあったように思います。

 

 私なら、是非、メガホンをとって、映画化してみたいですね。そうすれば、ヒット間違いなしの物語になるでしょう。主役には大竹しのぶさんが浮かんできますが、ちょっと年を取り過ぎているかな、なかなか若い役者さんで、男勝りで苦労人でしっかりした役者さんは思い当たらないですね。

 

 

 

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