goo

くるいびと

私に、あなたを くれ

身体はいい、

そんなものはどうとでもいい

時間も

ちょっとで いい

それらは別に いいのだ。


言葉を くれ

魂をくれ

あなた をくれ


よこせ、餓える

餓えるだろ


この狂気を生んだのは

あなた なのだから

あなたでなければ 餓えたままなのだ

あなたを くれ

身体も、

時間のほとんども

別の誰かにあげてかまわぬ



だから魂だけは おれに くれ

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

うたかた なれば

うたかたの

身なればこその

仮宿に


朝焼けしみし

一人の散歩


************

朝日の友に からすの足音

 かぁと鳴かずに、二人でじっと

************

薄紅の

空を見上げて 参るなり

雲なき空は 色気足らずなり
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )

ありが10匹

ありがとうってなんだろう。


宿題ちゃんと終わらせた

かぁさん僕に「偉いね」という。


部活を毎日休まず朝練

近所のおばちゃん僕に「頑張ってるね」という。


受験勉強必死にやって東大受かる。

親戚一同「すごいね」という。



みんなみんな、僕を褒めてくれるけど、

誰も誰も、僕に「ありがとう」はくれないんだ。


みんなそっちのほうがいいと言うけど、

世間一般に求められていることしたって
誰も喜んでなんてくれないんだね。


たった一人のためのことこそ、
ありがとうが、返ってくるんだ。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

流浪の心

われわれは、様々 知らねばならぬ。

喜びの種類のその多さを。

悲しみの種類のその深さを。

そして、孤独の意味の様々さをも。

時過ぎ行く事を止めていれば

知る事のなかったであろう事。


時代時代にそれぞれに

友は多くを得れるとも

永久(とこしえ)友で居座りし

友の数たるはなんと少なし。

距離という名の敵に耐え

境遇という名の雨をしのぎ

立場という名の風に飛ばされず

互いという名の溝を越えねば


いつでもふとした弾みでも

心の一番奥の間まで

一足飛びには行けぬから。


我らいかなるときにでも

時空の流浪の民なれば

心は海に揺られたり。



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

母と踊り

50を越えた
もう女ではほとんどなくなった

私の母親という人が

台所で踊りながら料理をしている。

久しぶりに帰ったもうずいぶん老けた

泥の代わりの、社会の手垢まみれの子どもの
料理を作る事の何が楽しいのだろう。

間抜けに思えたからからかい半分に私は
その人に向かって言うのだ。

「あんたは、人生楽しそうやなぁ、長生きするで」

「そりゃそうや、楽しいもん。長生きしまっせ」

「長生きしてなんかいい事あっかいな」

「そりゃあんた、私が生きてるとあんた死ににくいやろ。
 親より先に死ぬほど親不孝な子やないからなぁ」


そうして笑うこの人は、

ずっとずっと女であったのだ。

ずっとずっと私の母親だったのだ。


ずっとずっとこの人の

子どもであった人は

心の中で、つぶやいた

「ありがとう、おかぁちゃん」


伝わると思って言葉に出さない甘えた愚息であった。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 前ページ