みゆみゆの徒然日記

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第25回MOA美術館 薪能 1日目

2009年08月01日 | 能・狂言
 毎年8月1・2日に行われるMOA美術館の薪能に今年も行ってきました。無料で楽しめるというイベントですので、ここ数年毎年足を運んでおります。でも雨天だと無料の一般客はモニター鑑賞。今年は祥人さんのお能がかかるので、モニターは嫌だなぁ・・と思っていたし、雨女の私はいつも以上に当日の天気予報を気にしていました。数日前は確率は80%だったけど、今日は良い天気で開催決定!でも開演前にちょっと雨が降って・・・やっぱり私は雨女~と思ったけど、大丈夫でした。今までこれほど「雨降るな!」と念じたことはなかったかも(爆)


能 『熊野』 読次之伝、村雨留
 舞囃子の部分も道行の部分のお稽古もしたり、熊野のご当地とご縁がある関係で勝手に親しみを感じている曲のひとつですが・・・意外にも生の舞台でちゃんとお能として見るのは初めてでした。
 平宗盛の寵愛を受けている熊野(ゆや)は、故郷池田の宿の母親が重病だという知らせを受けるも、宗盛の許しを得ることができず故郷に帰ることができません。清水寺の花見の席で舞を舞うように命じられた熊野は、舞の途中で降ってきた村雨が散らした桜の花に、母の命を重ね「いかにせん都の花も惜しけれど、馴れし東の花や散るらん」という歌を詠みます。その歌に心を打たれた宗盛は熊野を故郷に返してやります。というお話。
 中之舞も村雨留という小書きがつくと、中之舞が常よりも早く終わります。なので余計に熊野の早く帰りたい・・という気持ちが伝わってきますね。でもこういうものは幽霊が出てきてどうこうというお話ではないし、綺麗だし、わかりやすいですよね。だからこそ人気曲なんでしょうけど。でも、サシ・クセの部分がカットされていたのが残念。ここの詞章が綺麗で好きなんだけどな~・・。そういう演出もあるんでしょうか?勉強不足ですみません。
 ちなみに『熊野』関連の謡跡の記事がありますので、よろしければご覧ください→熊野の長藤

シテ:山階彌右衛門
ツレ:武田友志、ワキ:村瀬純 ワキツレ:村瀬堤
笛:槻宅聡 小鼓:大倉源次郎、大鼓:亀井広忠


狂言 『成上り』
 鞍馬寺に参詣するために主人が太郎冠者に太刀を持たせていると、太郎冠者は太刀を持ったまま寝てしまいます。そこへすっぱ(泥棒)が現れて、青竹と変えてしまい、いつの間にか太刀が青竹に変わっていて・・・というストーリー。いろいろなものが成り上がることを主人に話して、太刀も青竹になる・・・なんてばかげた言い訳をする太郎冠者のアホらしさ(?)が狂言にでてくる太郎冠者のよいところでしょうか。

シテ:野村万蔵 アド:吉住講 小アド:野村扇丞


能 『葵上』 梓之出
 はい、今日はこのために熱海に参りました(笑)つい2週間前にも祥人さんの舞台を見たばかりですが、今日の祥人さんも執念深く怖い女性の役で、後シテは般若です。ですが、『道成寺』よりも、こちらはより高貴な身分ですからやっぱり違いますけど。
 『葵上』の題名である葵上は『源氏物語』の登場人物で光源氏の正妻。ですが、この曲のシテ(主人公)は六条御息所です。葵上という登場人物は出てこず、物怪に憑かれ病床に臥している葵上の象徴として小袖が正先に置かれます。物怪の正体を暴こうと照日の巫女が梓弓を弾くと、元皇太子妃でかつて源氏の愛人であった六条御息所の生霊が現れます。
 このときは辺りも暗くて、薪能は音がスピーカーから伝わってきますからね、そういうのが嫌だな~とついつい思ってしまうのですが(無料で見ているくせに偉そうなことをいうな!ですが・・・)、でも雰囲気はこのシーンにぴったりですね。暗闇に光るかがり火が加持祈祷を彷彿とさせて、さらに御息所の心情にぴったりのような。普段の能楽堂とは違う自然の織り成す演出効果を感じることができました。(まあ、能楽堂が一番適した環境だとは思いますが。)源氏の心変わり、葵上の妊娠、車争いで破れたことなどいろいろなことが重なり、嫉妬と恨みのために生霊となってしまうのです。そして、葵上の枕元で後妻打ち(うわなりうち)をする枕之段は物語性も高く好きなのですが、やっぱり祥人さんの表現力はすごいですね。小袖に扇を打ち付けるのが怖い!でも、教養深い元皇太子妃としてのプライドもあるのでしょう・・・そんな自分を恥じる一面もあるのが、この曲がというか御息所の生霊が怖いだけではなく哀れでもある点。「枕に立てる破れ車、うち乗せ隠れ行かうよ、うち乗せ隠れ行かうよ」で、着ていた唐織を外して担ぎ自分の姿を隠しながら去っていくのは、葵上も破れ車に乗せて連れて行く・・のだけれど、自分の恥ずかしい姿も隠したいのかな・・・と思ってしまいます。
 後シテは般若の面をつけて、鬼の形相となった御息所の生霊が現れます。『道成寺』とは違い、こちらは鬼の形相といえど、まだ人間ですからね、横川の聖とのバトルは迫力満点ですし、怖いのですが、その怖さの中にもどこか人間ぽさも感じるのです・・・。これは以前見たときにも感じたことですけれど・・・。今回すごいなとうなってしまったことがあります・・・。祈り伏せられて、成仏した生霊。その瞬間、それまで怖い表情だった般若の面の表情が、安堵感に包まれたように見えたのです。(遠いからオペラグラスで観察していました・・・^^;)生霊となった自分を恥じてはいるのでしょうけれど、救われた感を感じました。やっぱり祥人さんってすごい・・・そう思わざるを得ない舞台でした。


 以前、前半のクライマックス部分の「枕之段」のお稽古をしたことがありました。ちょうどそのときに初めて『葵上』を見て、能っておもしろい!と強く思ったのです。物語性にも富んでいるし、打っていて楽しかった曲です。また久々に打ちたくなってしまいました。葵上を打つ・・のではなく鼓をね(笑)


シテ:関根祥人
ツレ:角幸二郎 ワキ:村瀬純 ワキツレ:村瀬慧
笛:槻宅聡  小鼓:大倉源次郎 大鼓:亀井広忠 太鼓:金春国和

 でも今日はお天気がよくて本当よかったです。『熊野』『葵上』のどちらもお稽古をしたり、好きな曲だったので、充実した1日でした。もちろん今日も関根祥人師の舞台に酔いしれることができたことに感謝します。あ、自分もお稽古がんばらなくては・・・。

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7 コメント

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薪能 (りり)
2009-08-02 20:38:12
こんにちは。
普段の舞台では地裏がないので、昨日は初めて地裏から拝見しました。
祥人先生よかったですね。舞も謡も大好きです。私が申し込んだ時はまだ演者を知らなかったのですが、祥人先生だと知って晴れるのをお祈りしていました。
コメントありがとうございます (みゆみゆ@管理人)
2009-08-02 22:34:18
★りりさん
はじめまして。コメントありがとうございます。
私も地裏から見てみようかな?とも思いましたがこの記事の画像の角度から舞台を見ておりました。
私は申し込み前にたまたま知りましたが、きっとそうであってもそうでなくても申し込みはしたと思いますが、気合の入り方が違いました(笑)
祥人師の『葵上』はすばらしかったですね。
りりさんは祥人さんのファンでいらっしゃるのでしょうか?今後ともよろしくお願いします!
Unknown (エクスカリバー)
2009-08-03 22:12:27
今日は彦根城に行っていたのですが、ここにも能舞台があるんですねぇ。
なんか本格的に見てみたくなりました。
狂言 (kokeobasan)
2009-08-04 15:56:26
皆さん北海道は北見の「萬狂言」でご一緒した方々です。
「成り上がり」私も何度か拝見いたしました。
あちらこちらで薪能が上演されていますが
今年は雨に悩まされていますね。
薪能 (みゆみゆ@管理人)
2009-08-04 21:32:20
★エクスカリバーさん
そうなんですよね~
ひこにゃんにも興味はありますが、そういう意味からも彦根城には興味があります。
私の好きな京都の狂言師さんの家が昔は井伊家のお抱えだったそうで、その舞台でも活動されているみたいです。
お城で仮設の舞台ではよくあると思いますが、こういうところで見てみたいなぁ・・・。


★kokeobasanさん
薪能の季節ですもんね。
薪能は、本当天候に左右されますからね。
今年は恐らくもう他に薪能は行かないと思いますが・・・
まだわかりませんね(^^;
見ようと思えば機会はあるのですが (とみ(風知草))
2009-08-06 12:37:53
>みゆみゆさま
雑食のくせに、落語、能、狂言は行けていません。謡曲のよいところは、習おうと思えば、レベルに応じた師匠がおられることと思います。また、どんな題材も謡曲になってしまいそうなところもいいですし。
歌舞伎に大老があるのですから、謡曲に、桜田門、埋木はありそうな。
是非♪ (みゆみゆ@管理人)
2009-08-06 22:17:23
★とみさん
私も落語は興味があるんですが、なかなか・・・です(苦笑)
能はお囃子もいろんな先生につけますからね。まあ、どんな先生につくかも大事なんですが。

幕末のものはどうでしょうねぇ・・・あるのかしら?申し訳ありませんが、ちょっとわかりません。
ま、新作もあるにはありますが。

是非、何かの機会がありましたらお能。。。または気軽に狂言でもいかがでしょうか?(^^)

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