みゆみゆの徒然日記

日本の伝統芸能から映画や本などの感想、
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DVD 『狂言劇場 その壱』 野村万作+野村萬斎~「三番叟」「鎌腹」「川上」~

2008年11月09日 | DVD(映画以外)
 図書館にあったので借りてきました。世田谷パブリックシアター芸術監督の萬斎師プロデュース公演です。世田谷パブリックシアターには一度も行ったことがないのですが、橋がかりが通常の能舞台と同じ位置にあるもの、後方や上手側にも橋がかりがあったり、鏡板の代わりに注連縄が掲げられていたりするのがのが印象的です。なので入退場なども常とは違う使い方がされていて面白い試みではあるなと思います。狂言の他に能楽囃子(演奏)も収録されています。
 
 『三番叟』
 萬斎師の三番叟は颯爽としていますし、体のキレ、足捌きがカッコイイです!お囃子も笛が一噌隆之師、小鼓が大倉流の源次郎師、吉阪師、古賀師の御三方、大鼓が亀井広忠師という顔ぶれ。けれど、これはお囃子の音響に限らず台詞もそうですが、どうもこういうホール的空間だと鼓の響き方などが気になります。実際そこの空間にいるのと、映像はまた違うのかもしれませんが。

 『鎌腹』は以前、茂山狂言会で見ました。夫が仕事をしないからと妻にいつも文句を言われる怠け者の夫が妻へのあてつけに死のうとする時の一人芝居(?)が見所です。死のうと試みるけれど、死ねない・・・・なんとなく妻が怒る理由も分かるような。けれど、ラストは以前見た茂山家のものとは違いました。個人的には以前見た茂山家のスパイラルな展開を想像してしまうにぎやかな(?)終わり方の方が好きですね。

 能楽囃子は特に曲名などがありませんが、『道成寺』の囃子をアレンジした『道成寺組曲』でしょう。乱拍子など緊迫感はシテ方と共に作るものかもしれませんが、囃子のみでも急之舞や祈りなどカッコイイですね。


 このDVDに収録されているもう一つの狂言『川上』も『鎌腹』同様に夫婦のお話。こちらは目が見えなくなった夫が、目が見えるようにと地蔵菩薩に祈り、願いが叶い目が開くようになったけれど、ある条件があって・・・。家に帰ると目が開いたことに妻は喜ぶけれどその条件を聞いて激怒!「悪縁の妻と別れろ」という地蔵菩薩の条件をのんだ夫に対して、別れないという妻。それを諦めた夫は再び目が見えなくなるという狂言にしては「笑い」だけではなく、見る人によっても感想がかなり違うような曲。夫のためを思うなら別れるのも選択だけれど、支えていくというのも愛ですよね。でも夫は夫で条件を受け入れるし、別れた後別の男と一緒になれとか後妻もらうかもみたいな展開もあったりだし・・・。けれど、再び目が見えなくなった夫の手を取り共に歩くラストを見ると、ある意味ハッピーエンドなのかな?と思います。奥が深い狂言ですね。
 それにしても夫役の万作師はすばらしいですね。目が見えない時と目が見えるようになった時の演じわけもそうですけれど、気品が漂っていますし。こちらも『鎌腹』同様にたった一人の演技もありますし、再び目が見えなくなった時の辛さが痛いほど伝わってきて思わず涙してしまいました。こちらもいつか実際に見てみたい曲。

 このDVD、萬斎さんメインなのかな?と思いましたが、一番の見所は万作さんだ!と思いました。