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魔王/伊坂幸太郎 [Book]

2007-01-20 | (review:all)
 伊坂幸太郎:著 『魔王
 
魔王

講談社

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 いつものごとく、軽妙な語り口で始まったのに、
 いつのまにか、不穏な、目に見えないものが
 ひたひたと迫ってくる、恐ろしさ。

 「魔王」といえば、シューベルトの有名な歌曲があり、
 この作品のモチーフにもなっています。
 魔王の存在に気づいている子どもは、
 何度も何度も、父親に訴えるも、
 父親はとりあわず、そして、子どもは息絶える・・・。

 皆が犬養を讃え、アメリカを攻撃し、熱くなる。
 そんな群集心理の働く風潮を恐ろしく感じる「俺」は
 もちろん少数派で、無力で、
 まるで「魔王」に出てくる子どものようで。
 不思議な「力」をもっている「俺」でさえ、
 1人ではどうしようもない。
 「俺」のあせりがほんとうによくわかって、
 (私には「俺」のもつ「力」はないですが
 もどかしく、そして恐ろしく。

 後半は「俺」が出てこないけど、
 「俺」の存在は消えていません。
 「俺」の弟、潤也との、そんな兄弟愛や、
 潤也の彼女(のちに妻)の詩織ちゃんのふわふわ感は、
 対照的に、希望の象徴のようにも思えました。

 「クラレッタのめくれ上がったスカートを、
  直してあげられる人間になりたい」
 「少なくとも、“直してあげたい”と思える人間に」
 この言葉、私もすごく共感したし、
 一緒になっておもしろがるような人には、なりたくない。
 群集心理に飲み込まれないことは、
 なかなかたいへんなことだとは思うけれど。

 荒れ果てた土地の、その遥か遠くには青空が広がっている。
 未来は晴朗なものなのか、荒廃なのか。
 その問いかけに、今答えは出ないけれど、
 「空を見上げて、鳥を待つ」
 潤也のような、そんなゆったりとした気持ちも、
 ときには大事なのかもしれません。

 考えろ、考えろ、マクガイバー
 ・・・ただし、考えすぎるな。


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Unknown (藍色)
2007-01-21 01:31:41
はじめまして。
トラバありがとうございます。

安藤と弟の潤也くん、そして詩織ちゃんの信頼感が心に残っています。
自分で考え、行動する事を提起する作品でしたね。

お近づきに、同じ伊坂さんの「砂漠」にトラバさせていただきました。
コメントやトラバ返しなど、いただけたらうれしいです。
お気軽にどうぞ。
こんばんは♪ (miyukichi)
2007-01-21 02:36:37
>藍色さん

 こちらこそ、どうもありがとうございます。

 あの3人の信頼感、よかったですよね。
 読んでいても安心できました。

 自分で考え、行動する。
 これって当たり前にわかっているようで、
 実は周りに流されていることも多いように思います。
 もちろん、自分も含めてですが。
 そういった風潮に、「いいの? それでいいの?」
 って何度も問いかけてくるような、
 そんな感じを受けました。

 「砂漠」へもTBどうもありがとうございます。 
 こちらからもTBさせていただきますね。
 後ほど、うかがいますね
はじめまして (bibliophage)
2007-01-21 10:08:42
こんにちは。TBありがとうございました。

私にとって伊坂さんの作品は、面白いものとそうでないものの落差が大きいのです。でも気になるので読んでしまいますw。とても面白かった「陽気なギャング…」にもTBいたしました。これからもよろしくお願いします。
考えろ・・・ (みわ)
2007-01-21 12:53:46
この兄の方が「考えろ、考えろ、マクガイバー。」というのがとても印象に残っています。人間って考えなくなったら終わりですよね。。。
こんにちは♪ (miyukichi)
2007-01-21 13:24:40
>bibliophageさん

 こちらこそ、どうもありがとうございます。

 落差大きいですか。
 たしかに、理屈抜きにおもしろいものと、
 それだけではないものと、あるかもですね。

 私の場合は、『グラスホッパー』がちょっと暗めで
 読んでてしんどかった部類です。
 もう1回読むと、変わるかもしれませんが・・・。
 ま、それでも伊坂さんは読んじゃいますよね(笑)

 「陽気なギャング~」にもTBどうもありがとうございます。
 こちらからもTBさせていただきますね。
 後ほどおうかがいいたします
こんにちは♪ (miyukichi)
2007-01-21 13:38:39
>みわさん

 ご訪問&TBどうもありがとうございます。

 「考えろ、考えろ、マクガイバー」ってフレーズ、
 前半は何かというと出てきましたもんね。
 読んでいるときも印象的でしたが、
 読み終わった今でも、あのフレーズが
 耳に残っている感じがします。

 自分で考える、って、大事なことですよね。
 忘れないようにしたいと思います。
冒険野郎マクガイバー (るい)
2007-01-21 23:40:45
こんばんわ、こちらもお邪魔しております^^*
TB&コメントどうもありがとうございました!

うーん、群集心理の描き方が凄かったですね。
まさにそれのために書きました、と言う圧倒的存在感がとても。
私はどちらかと言えば、「空を見上げて、鳥を待つ」人間を目指したいかな。
それにしても考えては見るべきかも知れませんね、マクガイバー然り。
そのためにも近々「それでもボクはやってない」を観てこようと思います。
Unknown (chiekoa)
2007-01-22 11:52:37
雑誌掲載時に読んで、単行本も買ったのに、そっちを読んでいない私です。ちゃんと読もう…もったいないです(笑)。私にはこの作品がすごく「きた!」って感じだったんですけど、世間の評価的にはそうでもないらしく…さみしいです…。
Unknown (june)
2007-01-22 12:29:50
私も「俺」の焦りを感じて、もどかしくて怖くなりました。
これ、世間的にはそうでもないんですね・・。
以前から伊坂さんの作品は好きだったんですが、私はこれにガツンとやられました。
考えろ、考えろ、 (miyukichi)
2007-01-22 20:02:31
>るいさん

 こちらこそ、どうもありがとうございます。

 なんか、目に見えない怖さ、みたいなものが
 すごくうまく描かれていたように思いました。
 マジで怖かったですもん(笑)

 マクガイバー、DVDにもなってるそうなので、
 観てみたいなぁ、って興味湧いてたりします。

 「空を見上げて、鳥を待つ」
 うん、潤也みたいな余裕も、大切ですよね。
 兄と比べて、なんというか、傍から見てても
 安心感がありました。

 「それでもボクはやってない」、
 法律を勉強しているるいさんから見れば
 物足りないところもあるかもしれませんけど、
 でも、見ごたえはあると思います。
 観れたらまた感想楽しみにしてますね

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