ドンドコ、ピカゴロ。
ドンドコ、ピカゴロ。
かみなりさまはおまつり好き。
たいこをたたいてさわいでいる。
雲の乗りものでさっそうとおでましだ。
「うるさーい」
森にすむ生き物たちはさけびました。
リスの親子は目をつりあげ、雲をゆびさして、ぶつくさともんくをいっている。
チューリップは葉っぱで耳をおさえてガマンしている。
「しずかにしておくれ。ねむれやしない」
みんなは昼寝のじゃまをされて、カンカンに怒っていました。
なにもしらない、のんきなかみなりさまが地上におりてきた。
「みんな、あそぼうぜ!」
ひょいっと雲の乗りものからおりて、両足でちゃくちしました。
オオカミはウーとほえました。クマはアッカンベーと舌をだした。
「にげろ!」
カラスの一声で、動物たちはいっせいににげていきました。
「あれれ?」
かみなりさまはぽかんと口をあけている。あっというまに誰もいなくなりました。
「おーい! まってよ!」
ひとあしおくれて走りだす。
すると、小石につまずき、スッテンコロリン。たおれてしまいました。
「ワァァァ~ン、いたいよ」
ひざこぞうをすりむいて大声でなきました。
でも、誰もたすけにきてくれません。
かみなりさまの目から大つぶの涙がおちました。空がはんのうして、いなずまがピカッとおちました。
ドンドコ、ピカゴロ。
ドンドコ、ピカゴロ。
ふたたび、かみなりさまがやってきました。
「あそぼうぜ!」
笑顔で話しかけました。
つめたくされてもあきらめません。
タンポポは花びらをとじました。もみの木はつっ立ったまま動きをみせない。セミは無言でじっとかたまっている。
また誰も話をきいてくれません。
ふとヘビをみつけ、「おーい! あそぼうぜ!」
おどろいたヘビはにょろにょろと土の中へもぐっていきました。
「もうにがさないぞ!」
つかまえるために穴をほる。ヘビはもっと奥へともぐりこむ。
ああ~、ざんねん。手がとどかない。
こんどは風をみかたにつけようと、空気をいっぱいすいこみました。
でも、北風はつめたくしらんぷり。パッと消えてしまいました。
かみなりさまはさみしくて肩をおとしました。
「あそびましょう」
遠くで声がきこえた。ふりかえると、長い黒髪のきれいな女の子がこちらへ近づいてきました。
湖のほとりにすんでいる水のかみさまでした。
やっと友達ができるぞ!
かみなりさまはうれしくなって、あくしゅをしようと手をのばした。
ビリビリビリ。火花がちる。光が走る。つよい電流が体をかけめぐる。
水のかみさまの長い髪はさかだち、白いドレスはまっ黒。
かみなりさまのクルクルパーマもとんがって、トラ柄のパンツもこげてしまった。
水と電気はあわないので、あくしゅはできませんでした。
びっくりした水のかみさまは、ものすごいスピードで走ってにげていきました。
かみなりさまはまたひとりぼっち……。
「バイバイ」
森の方角に手をふる。かみなりさまはたくさんの雲をひきつれていなくなりました。
森はしずまりかえり、ドンドコ、ピカゴロ、うるさいたいこの音もまったくきこえなくなりました。
「さいきん、よくねれるね」
「かみなりさまがいなくなったからだよ。ウフフ」
お花畑でミツバチとテントウムシがうれしそうに話をしていました。
日がたちました。
雲ひとつない、のどかな天気がつづく。
スズメの兄弟はノドをうるおすために、湖へやってきました。
「あっ、水がない!」
どうしたことでしょう。あるはずの湖がなくなっているではありませんか。
かわいた地面に、水のかみさまがたおれていました。
「水のかみさま、どうしたの?」
「どうか、かみなりさまをさがしてください。彼がいないから雨がふらないのです」
さぁ、たいへんだ!
晴れつづきで湖がひあがってしまった。
花は枯れ、木はやつれ、風はやみ、太陽はもうしわけなさそうに輝いている。
かわりはてた森の風景。
このままではみんなが死んでしまう。
あわてたスズメの兄弟は、森の仲間たちにしらせました。
「てわけして、かみなりさまをさがすんだ!」
森の仲間たちは元気がありません。
「ぼくたちのせいだよ」
「わるいことをしたなぁ~」
「うるさいけど、たいせつなお役めをはたしていたんだね」
「かみなりさまは森になくてはならないかみさまだったんだ」
みんなはうつむいて、仲間はずれにしたことをはんせいしました。
つばさをもつ鳥は空から、つばさをもたないサルやクマは陸から。
木のかげや草のねっこまでみてまわりました。
夜はコウモリやフクロウが目を光らせてさがしてくれました。
お月さまもさんかして、夜の闇をてらしてくれました。
「おーい! かみなりさま!」
よんでも返事がありません。
いったい、どこにいったのでしょう?
山の奥の暗いほら穴から、なき声がきこえました。
「たいこをならすと、みんなにめいわくがかかるからやめよう」
かみなりさまは大好きなたいこをなげすてました。
しょんぼりとうつむいて、ないていました。
おまつりのあとのようなしずけさが広がりました。
みるにみかねた宇宙のかみさまは声をかけた。
「かみなりさま、かみなりさま」
「ぼくをよびましたか?」
かみなりさまは空にむかって話しかけた。
「みんながきみのことをしんぱいしているよ」
かみなりさまは首をよこにふって、
「ぼくはきらわれています」
ワ~ンとまたなきだした。
「ちがうよ、かみなりさま。みんな、きみのことをきらっていない。ずっと帰りをまっている」
「ほんとう?」
涙がぴたりととまった。
「ほんとうだよ。ホホホ」
宇宙のかみさまがわらうと、いくつもの星が七色に輝きました。
かみなりさまは勇気がでて、たいこをひろいあげた。
「よしっ、いくぞ!」
拳をふりあげました。
雲ゆきがあやしくなり、雲は灰色にそまる。
ドンドコ、ピカゴロ。
ドンドコ、ピカゴロ。
らいめいがとどろいた。
ザァー、ザァー、ザァー。はげしい雨がふる。
土は水をふくんで川ができ、川は長くのびて湖にたどりつきました。
「めぐみの雨だ!」
森の仲間たちは大よろこび。たくさんの生命が息をふきかえしました。
ドンドコ、ピカゴロ。
ドンドコ、ピカゴロ。
ここぞとばかりにたいこがなる。
かみなりさまはいっしょうけんめいはたらきました。
雨は一日中ふりそそぎ、大きな湖をたたえました。
おかげで水のかみさまもたすかりました。
雨がやむと、空が明るくなり、太陽があらわれてニコニコとほほえみました。
しごとをおえたかみなりさまは森にもどりました。
「かみなりさま、今までごめんね」
森の仲間たちはペコリと頭をさげました。
かみなりさまはほほを赤くそめて、「いいんだよ」といいました。
水のかみさまが手をのばし、あくしゅをもとめる。
ビリビリビリ。火花がちる。光が走る。つよい電流が体をかけめぐる。
髪はさかだってまるこげだ。それでも二人は楽しそう。
ハッハッハッハ。
みんなも声をだしてわらいました。
かみなりさまは森の仲間の一員になった。
歌を歌ったり、かけっこしたり、おどってみたり、楽しい毎日をおくりました。
ドンドコ、ピカゴロ。
ドンドコ、ピカゴロ。
かみなりさまはおまつり好き。
たいこをたたいてさわいでいる。
雲の乗りものでさっそうとおでましだ。(終)
ドンドコ、ピカゴロ。
かみなりさまはおまつり好き。
たいこをたたいてさわいでいる。
雲の乗りものでさっそうとおでましだ。
「うるさーい」
森にすむ生き物たちはさけびました。
リスの親子は目をつりあげ、雲をゆびさして、ぶつくさともんくをいっている。
チューリップは葉っぱで耳をおさえてガマンしている。
「しずかにしておくれ。ねむれやしない」
みんなは昼寝のじゃまをされて、カンカンに怒っていました。
なにもしらない、のんきなかみなりさまが地上におりてきた。
「みんな、あそぼうぜ!」
ひょいっと雲の乗りものからおりて、両足でちゃくちしました。
オオカミはウーとほえました。クマはアッカンベーと舌をだした。
「にげろ!」
カラスの一声で、動物たちはいっせいににげていきました。
「あれれ?」
かみなりさまはぽかんと口をあけている。あっというまに誰もいなくなりました。
「おーい! まってよ!」
ひとあしおくれて走りだす。
すると、小石につまずき、スッテンコロリン。たおれてしまいました。
「ワァァァ~ン、いたいよ」
ひざこぞうをすりむいて大声でなきました。
でも、誰もたすけにきてくれません。
かみなりさまの目から大つぶの涙がおちました。空がはんのうして、いなずまがピカッとおちました。
ドンドコ、ピカゴロ。
ドンドコ、ピカゴロ。
ふたたび、かみなりさまがやってきました。
「あそぼうぜ!」
笑顔で話しかけました。
つめたくされてもあきらめません。
タンポポは花びらをとじました。もみの木はつっ立ったまま動きをみせない。セミは無言でじっとかたまっている。
また誰も話をきいてくれません。
ふとヘビをみつけ、「おーい! あそぼうぜ!」
おどろいたヘビはにょろにょろと土の中へもぐっていきました。
「もうにがさないぞ!」
つかまえるために穴をほる。ヘビはもっと奥へともぐりこむ。
ああ~、ざんねん。手がとどかない。
こんどは風をみかたにつけようと、空気をいっぱいすいこみました。
でも、北風はつめたくしらんぷり。パッと消えてしまいました。
かみなりさまはさみしくて肩をおとしました。
「あそびましょう」
遠くで声がきこえた。ふりかえると、長い黒髪のきれいな女の子がこちらへ近づいてきました。
湖のほとりにすんでいる水のかみさまでした。
やっと友達ができるぞ!
かみなりさまはうれしくなって、あくしゅをしようと手をのばした。
ビリビリビリ。火花がちる。光が走る。つよい電流が体をかけめぐる。
水のかみさまの長い髪はさかだち、白いドレスはまっ黒。
かみなりさまのクルクルパーマもとんがって、トラ柄のパンツもこげてしまった。
水と電気はあわないので、あくしゅはできませんでした。
びっくりした水のかみさまは、ものすごいスピードで走ってにげていきました。
かみなりさまはまたひとりぼっち……。
「バイバイ」
森の方角に手をふる。かみなりさまはたくさんの雲をひきつれていなくなりました。
森はしずまりかえり、ドンドコ、ピカゴロ、うるさいたいこの音もまったくきこえなくなりました。
「さいきん、よくねれるね」
「かみなりさまがいなくなったからだよ。ウフフ」
お花畑でミツバチとテントウムシがうれしそうに話をしていました。
日がたちました。
雲ひとつない、のどかな天気がつづく。
スズメの兄弟はノドをうるおすために、湖へやってきました。
「あっ、水がない!」
どうしたことでしょう。あるはずの湖がなくなっているではありませんか。
かわいた地面に、水のかみさまがたおれていました。
「水のかみさま、どうしたの?」
「どうか、かみなりさまをさがしてください。彼がいないから雨がふらないのです」
さぁ、たいへんだ!
晴れつづきで湖がひあがってしまった。
花は枯れ、木はやつれ、風はやみ、太陽はもうしわけなさそうに輝いている。
かわりはてた森の風景。
このままではみんなが死んでしまう。
あわてたスズメの兄弟は、森の仲間たちにしらせました。
「てわけして、かみなりさまをさがすんだ!」
森の仲間たちは元気がありません。
「ぼくたちのせいだよ」
「わるいことをしたなぁ~」
「うるさいけど、たいせつなお役めをはたしていたんだね」
「かみなりさまは森になくてはならないかみさまだったんだ」
みんなはうつむいて、仲間はずれにしたことをはんせいしました。
つばさをもつ鳥は空から、つばさをもたないサルやクマは陸から。
木のかげや草のねっこまでみてまわりました。
夜はコウモリやフクロウが目を光らせてさがしてくれました。
お月さまもさんかして、夜の闇をてらしてくれました。
「おーい! かみなりさま!」
よんでも返事がありません。
いったい、どこにいったのでしょう?
山の奥の暗いほら穴から、なき声がきこえました。
「たいこをならすと、みんなにめいわくがかかるからやめよう」
かみなりさまは大好きなたいこをなげすてました。
しょんぼりとうつむいて、ないていました。
おまつりのあとのようなしずけさが広がりました。
みるにみかねた宇宙のかみさまは声をかけた。
「かみなりさま、かみなりさま」
「ぼくをよびましたか?」
かみなりさまは空にむかって話しかけた。
「みんながきみのことをしんぱいしているよ」
かみなりさまは首をよこにふって、
「ぼくはきらわれています」
ワ~ンとまたなきだした。
「ちがうよ、かみなりさま。みんな、きみのことをきらっていない。ずっと帰りをまっている」
「ほんとう?」
涙がぴたりととまった。
「ほんとうだよ。ホホホ」
宇宙のかみさまがわらうと、いくつもの星が七色に輝きました。
かみなりさまは勇気がでて、たいこをひろいあげた。
「よしっ、いくぞ!」
拳をふりあげました。
雲ゆきがあやしくなり、雲は灰色にそまる。
ドンドコ、ピカゴロ。
ドンドコ、ピカゴロ。
らいめいがとどろいた。
ザァー、ザァー、ザァー。はげしい雨がふる。
土は水をふくんで川ができ、川は長くのびて湖にたどりつきました。
「めぐみの雨だ!」
森の仲間たちは大よろこび。たくさんの生命が息をふきかえしました。
ドンドコ、ピカゴロ。
ドンドコ、ピカゴロ。
ここぞとばかりにたいこがなる。
かみなりさまはいっしょうけんめいはたらきました。
雨は一日中ふりそそぎ、大きな湖をたたえました。
おかげで水のかみさまもたすかりました。
雨がやむと、空が明るくなり、太陽があらわれてニコニコとほほえみました。
しごとをおえたかみなりさまは森にもどりました。
「かみなりさま、今までごめんね」
森の仲間たちはペコリと頭をさげました。
かみなりさまはほほを赤くそめて、「いいんだよ」といいました。
水のかみさまが手をのばし、あくしゅをもとめる。
ビリビリビリ。火花がちる。光が走る。つよい電流が体をかけめぐる。
髪はさかだってまるこげだ。それでも二人は楽しそう。
ハッハッハッハ。
みんなも声をだしてわらいました。
かみなりさまは森の仲間の一員になった。
歌を歌ったり、かけっこしたり、おどってみたり、楽しい毎日をおくりました。
ドンドコ、ピカゴロ。
ドンドコ、ピカゴロ。
かみなりさまはおまつり好き。
たいこをたたいてさわいでいる。
雲の乗りものでさっそうとおでましだ。(終)