Dying Message

僕が最期に伝えたかったこと……

ビター・チョコレート

2013-05-13 18:24:34 | Weblog
 5月の夜はとても短く、僕が眠りにつくのを待ちきれぬように東の空が青白む。夢の中に逃げ込みたいと思えば思うだけ現実がどこまでも追いかけてくるようで、僕は否応なく自分の人生を顧みる。

 最近、自分の年齢についてすごく考えるようになった。俺も今年28歳で、仮に70まで生きるとして残り42年。一見まだ時間はたっぷりあるようにも思えるけれど、8歳から18歳までの10年より18歳から28歳の10年の方が誰も短く感じるはずで、これから先はさらに時が加速していくはずで、体感的にはすでに人生の折り返し地点を過ぎたのかも知れない。

 残りの半生で俺は何ができるのか。自分を納得させるだけの何かを遺せるのか。考えれば考えるだけ分からなくなって、一切の進歩がないままにまた今日を終わらそうとしている。焦りを感じこそすれ、具体的に何をしたらいいかさえ分からず、まだ見ぬ未来への畏怖だけが肥大化するようで、僕の前に大きな障壁として立ちはだかっている。

 俺は人間嫌いかつ人間恐怖症で、特に鬱状態の時は貝のようになってしまうこともある。人生が狂った全責任は自分自身にあるはずなのに、何もかも嫌になって、何もかも無意味に思えて、誰も彼もが敵のように思えて、マジでノイローゼみたいになって。隙あらば自分を終わらせてやろうと思うことだってたまにはある。

 それでいて心のどこかでは他人に救いを求めてしまってる。このまま誰にも愛されず、忘れ去られたままに死んでいくのはやっぱり寂しくて、俺は人一倍誰かに認めてもらいたい気持ちが強いし、評価だって受けれるものなら受けたい。そういう気持ちがあるからこそぎりぎり生きていられるし、そういう気持ちがあるからこそ現実とのギャップに苦しんだりするのだとも思う。

 子守歌を奏でるかのように遥か彼方でウグイスが鳴く。小学校の入学式当日、母と通学路を歩く道すがらで同じ声を聞いたのを覚えてる。もう20年以上前、遠い昔の話だ。この街も、そして僕も、何もかも変わり果てた。無垢な心、屈託のない笑顔、そんな君を僕は殺してしまった。僕は今や何もかも失くしたようで、僕はもはや死んだ顔で日々を過ごしてる。

 僕はだんだん意識が薄れてく。僕はとろけるチョコレートで、あの日の温もりが僕を溶かしてく。僕はとっても気持ちいい。でも僕はちょっと切ない。僕は形なき者として、永遠に覚めることのない夢の中、いっそ朽ち果ててしまいたい。


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