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更年期過ぎの女性のコレステロール値の異常は正常です

2018年06月04日 | 脂質異常症

更年期過ぎの女性のコレステロール値の異常は正常です

  このブログやホームページで健康相談を受け付けているのですが、最近その半分ほどは更年期過ぎの女性からのコレステロール値に関するものです。「検査数値が高いほうで引っかかって医師からコレステロール薬をすすめられ、どうしよう。」あるいは「コレステロール薬の副作用が出て困っている。」といった内容です。
 結論は、「値は無視しろ。薬は飲むな。」ということになるのですが、そのあたりのことをやんわりと説明し、その方その方にふさわしい助言をさせていただいています。

 でも、なかにはごく少数ですが、家族性高コレステロール血症の方もいらっしゃいます。つまり遺伝性のもので、血中のコレステロール値がいつも異常に高いというものです。
 そうした方から今まで3件相談があり、これはこれで、また別の助言をすることになるのですが、そうそう心配するものではなく、誰でも高齢となれば血管性疾患で死ぬ率が高くなるのであり、それが多少早まるだけのことですから、場合によってはかえってそのほうが有り難いとも言えます。なぜならば、ピンピンコロリと逝ける確率が高まるからです。
 なお、家族性高コレステロール血症は2タイプあり、両親ともから異常な遺伝子を引き継いだ「ホモ接合体」の場合は小児の段階で異常値を示し、命の危険がありますが、極めてまれです。片親から異常な遺伝子を引き継いだ「ヘテロ接合体」の場合は500人に1人程度のようで、総コレステロール値の平均は320~350 mg/dlですので、そう極端に高い数値でもないですから、これが原因して血管性疾患で若死にするという心配は無用です。肥満・飽食・運動不足による血管性疾患の発症よりも危険度は少ないと考えていただいていいのではないでしょうか。

 さて、「総コレステロール値は280あっても心配ない。その方が元気で長生きできる。」ということが、随分前になりますが、幾つかの大規模な疫学調査で分かっており、「高コレステロール値、驚くに当たらず。かえって喜ぶべし。」ということになりましょう。ただし、美食・飽食ゆえに高コレステロール値になっていることがままあり、これは血管性疾患のみならず、最近とみに増えてきた大腸がんや膵臓がんの原因にもなりますし、いわゆるメタボ疾患を引き起こしやすくなりますから、食生活の見直しをすべきということになりましょう。
 このことは通常は男性について言えることでして、更年期過ぎの女性の場合には、美食・飽食せずに粗食で腹八分としていても、けっこう高い総コレステロール値(例えば280)を示すことは、まれではありません。
 ですから、けっこう健康相談を受けることになるのですが、本稿では、こうした更年期過ぎの女性に絞って、以下、述べることとします。

 まずは、「コレステロールは生命維持活動になくてはならないもので、体中の細胞に補給するために肝臓から血液中に十分な量を絶えず放出し続けなければならない」ものであることを説明しましょう。

 ヒトの体の中で一番多くコレステロールが使われているのは、脳細胞や神経細胞の信号伝達が正常に行われるよう、神経線維の絶縁性を保持するためのものです。ですから、脳味噌はコレステロールの塊と思っていただいていいです。
 
そして、体中の細胞の細胞膜はコレステロールを元にして作られています。お肌の細胞もそうですから、若々しい肌を保つにはコレステロールは必須のものになります。
 次いで重要なのが、生命維持活動に不可欠な様々なものがコレステロールを原材料として体内合成されるということです。ビタミンDがそうですし、各種ホルモンの多くがそうで、女性ホルモンなどもコレステロールを元にして合成されます。
 これらコレステロールを元にして作られたものは、どれも少しずつ消耗していきますから、血液を通して体中に絶えずコレステロールを供給せねばならないのです。
 もう一つ、コレステロールの大きな使い道があります。肝臓で胆汁酸に作り替えられ、脂肪を分解するために十二指腸へ分泌されます。脂肪は水に溶けませんから摂取した脂肪は大きな塊となっており、これを非常に細かい粒にする(乳化)ために胆汁酸が働きます。これによって、膵臓から分泌される消化酵素が働きやすくなるのです。そして、胆汁酸は、消化された栄養素と一緒に小腸の後ろ半分ぐらいの所から順次吸収され、門脈を通って肝臓に戻されます。ですから、胆汁酸は繰り返し利用されますが、若干量は大腸へ行ってしまい、腸内細菌によって分解されたり、排泄されてしまいます。

 コレステロールは動物性食品から摂取可能で、特に鶏卵の黄身に大変多く含まれています。大雑把にいうと、1日当たり食品から400mg摂取し、半分が吸収されて200mgが肝臓に入ります。それ以外に肝臓で脂肪や炭水化物を原材料にして800mgのコレステロールが合成されます。1日に合計1000mg(実際はもう少し少ない)のコレステロールが必要で、これが体中であれこれ使われるのです。なお、最大の使い道が胆汁酸の製造で、400mgといったところです。つまり、2割は食品から、8割は体内合成され、コレステロールの最大の使い道が胆汁酸の4割となるのです。
 ところで、ある日、ご飯を少なくし、いつもより鶏卵(コレステロール約200mg含有)を2個余分に食べて、2倍の800mgのコレステロールを摂取したとなると、半分の400mgが吸収されますから、あと600mgを体内合成すれば、1日の必要量が事足ることになり、その分、肝臓での合成が落ちます。逆に、動物性食品を全く摂らない日には、コレステロールの吸収量は、ほとんどゼロですから、肝臓で1日に1000mg合成せねばなりません。肝臓での合成量は、このような形で調節されます。

 つい最近まで「卵をたくさん食べるとコレステロール値が上がる」と言われ続けていたのですが、これは幾つかの臨床実験でも証明されていますが、完全な間違いでして、ヒトの体には、今述べた調節機能がちゃんとうまく働いているのです。
 どうして、こんな間違ったことが言われ続けてきたかといいますと、1913年にロシアのアニスコフらが発表したウサギを使った実験で、ウサギにコレステロールを摂取させたところ動脈硬化を起こし、これでもって「コレステロールの多い食品を摂取すると、コレステロール値が上がり、動脈硬化の原因になる」という学説が定着してしまったからです。
 しかし、 この実験はあまりにも乱暴すぎます。草食動物であるウサギの餌となる植物にはコレステロールはほとんど含まれておらず、そのため、ウサギは体内でのコレステロール産生調節機能を持っていないからです。一方、肉食・雑食動物は食べ物から摂るコレステロール量に応じて肝臓で合成するコレステロール量を増減し、血液中のコレステロール濃度を一定に保つ仕組みがあることがその後(随分前のことですが)判明しましたから、先ほどヒトの例で説明したように、ウサギとは違って、コレステロール摂取量と血液中のコレステロール値は無関係となるのです。

 大雑把な説明となりましたので、少々補足します。脂っぽいものをほとんど摂取しない人は脂肪を乳化するための胆汁酸が大して必要でないですから、その分、コレステロールの体内合成量が少なくてすみます。逆に、毎日脂っこい中華料理ばかり食べている人は、胆汁酸を多く分泌する必要がありますので、その分、コレステロールの体内合成量が増えるのです。こうしたコントロールの下、恒常的に一定量必要な脳・神経細胞、細胞膜、ホルモン合成などのための血液中へのコレステロールの供給は安定して行われることになるのです。

 次に、コレステロールは水に溶けませんからリポたんぱく(運び屋の役割)というものがくっついて血液中を運搬されます。肝臓に回収されるときも同様です。どちらもコレステロールは同じものですが、運び屋のリポたんぱくに違いがあります。往路はLDLが、復路はHDLが運び屋となります。通称、前者を悪玉、後者を善玉と呼んでいますが、何ともおかしな命名法です。善玉・悪玉という言葉をあえて使うのであれば、往路のLDLは体に必要なものを運んでくれるのですから、これを善玉と呼び、不要な廃品回収ともいえる復路を悪玉と呼んだほうがいいのではないでしょうかねえ。
 いずれにしても、体中が欲しがるコレステロールですから、肝臓は十二分な量のコレステロールを血液中に放出します。そして、体中の細胞が十分なコレステロールを取り込み、必要量を超える不要なコレステロールを運び屋HDLに渡して肝臓に戻すのです。
 どの程度の量が十二分な量なのか、これはその人その人の体質によって異なり、肝臓がコレステロールを豪勢に放出する人もあれば、けちくさく放出する人もいることでしょう。その違いが、血液検査数値の大小になって現れるということになるのです。

 さて、ここからが本題ですが、更年期を迎え、あるいは更年期がすぎると、女性はLDLコレステロール値も総コレステロール値も30歳代の時に比べて40ぐらい高くなります。
 どうしてそうなるかは不明なようですが、小生は次のように想像しています。
 動物の生殖可能年齢はまちまちですが、体力的な衰えが生ずると、メスは高齢出産を機に死んでいくものです。それがヒトの場合、動物界唯一の例外(クジラもそうらしい)と言えましょうが、女性は体力的な衰えが生じ、生殖可能年齢を過ぎると、それに伴って女性ホルモンなど妊娠に必要な各種ホルモンの分泌が急減して妊娠することはなくなり、その先も長く生き続けます。
 メスは生きている限り、体力的な衰えが生じても繰り返し妊娠し、子を産もうとする、その動物本来の性(さが)が、ヒトの女性にもまだ残っており、「子を産みたい。妊娠に必要な各種ホルモンを何とかして今までどおり製造したい。そのためには原材料となるコレステロールを多く供給してもらわねば。」と、卵巣がもがくのではないでしょうか。このもがきによって、血液中のコレステロール値が急上昇するというものでしょう。

 これは小生の単なる想像に過ぎませんが、これ以外に説明のしようがないと思うのですが、いかがなものでしょうか。
 それはさておき、女性は更年期ともなれば、コレステロール値が急上昇するのが正常であって、その昔は何の問題にもされなかったのです。ですから、もしコレステロール値が上がらなかったとなると、それこそ肝臓かどこかに異常があるのではないかと心配せねばなりません。

 以上のことからして、コレステロール値の血液検査での現行の基準、これが間違っているのであって、基準を改正する必要があるのです。いや「そもそも血液検査でコレステロール値を測る必要がどこにあるのか、これは無駄な測定だ。」と言ったほうがいいです。現に、日本脂質栄養学会では、そのように考えておられ、その旨をコレステロール基準値作成の大本である日本動脈硬化学会への公開質問状でもって意見を発しておられます。それに対して、いまだ日本動脈硬化学会は何の回答もしていません。
 どちらの学会をあなたは支持されるのか。
 何事もそうですが、これからの時代、政府など権威者の言うことを信ずるという日本人的悪習から脱却し、権威者の言うことはいったん全否定し、自分自分で個々に判断するという欧米的考え方で対処していかねば、今日のグローバル社会では生きていけないのではないでしょうか。政府など権威ある機関は既にグローバル社会に適応し切っており、自分たちに都合が良いことをさも正しいものとして広報するようになっているのですからね。

 ところで、困った相談が今までに2件ありました。会社の定期健診でコレステロール値が基準を超えたがために、就労が困難になったというものです。お2人とも定年後の再雇用で、1年更新の雇用契約です。会社の人事部から「コレステロール値が高くても就労に支障がない」という医師の証明書をもらってこなければ再雇用契約はできない、と告げられたというものです。
 1名の方は、かかりつけの医師以外に別の医院を知っておられましたから、そこへ行ってお願いされてみては、ということにしましたが、はたして証明書を書いてもらえたのか。老先生で、もう商売根性がないお医者さんの場合はそれが可能となりましょうが、通常の開業医となると、たいていは借金
の返済に迫られており、“いいカモが来た”とばかり、“必ず薬を飲みなさい”となってはしまわないか。相談されたその方、以前にコレステロールの薬でひどい副作用が出て、薬を飲むのは怖いと言っておられましたから、さてどうなったか気になります。
 もう1名の方は、少々肥満体で過食気味とのことでしたので、再検査の前2、3日間は、塩気(体のだるさを防ぐ)が効いた温野菜ジュース(冷たいジュースは胃腸を冷やし、トラブルが生じやすい)で断食してみてください、とアドバイスしました。これで、どれだけの効果が出るのか、あまり自信がありませんが、市販の健康食品などでは効果がほとんど期待できないのが現実ですから、コレステロールの原材料となる脂肪や炭水化物を断つしか方法はないでしょう。その結果がどうなったのか、報告を受けていませんが、そのときは無事に再雇用契約がかなうよう、ひたすら祈るしかありませんでした。
 こうした無茶な会社側の要求は高血圧でも相談を受けたことがあるのですが、メタボ検診が始まって以降、だんだん政府の締め付けが強まり、企業検診で数多くの基準値オーバーの従業員を抱えている企業は、それを減らさないことにはぺナルティー(補助金カットなど)が課されますから、一番簡単なのは高齢者(基準値オーバーが多い)の首を切ればいいのです。その犠牲が、「医師の証明書」という要求でもって依願退職へ追いやられる、といったことになるのでしょう。高齢者でも働かねば食っていけない方が数多くいらっしゃいますから、実に困った問題です。

 最後に、コレステロール値に関して相反する見解を持つ2つの学会の考え方を下段に参照として掲げておきましたので、ご覧になってみてください。
 なお、その日本動脈硬化学会のガイドブックのなかで、疑問が3点ありますので、以下に付記しておきます。
家族性高コレステロール血症「ヘテロ接合体」の割合
 「人の約100人に一人は遺伝的に脂質異常症を起こすと考えられています。」という記述があり、別の所で「日本人の500人に1人は家族性高コレステロール血症の遺伝子異常を受け継ぐ」という記述がある。100人、500人、どっち?
②コレステロールを多く含む食品を避けるべしという考え方は、厚労省も既に引っ込めたのですが、次の記述がある。
 「コレステロールと飽和脂肪酸を多く含む肉の脂身、内臓、皮、乳製品、卵黄…を摂りすぎないようにしましょう。」
③コレステロールの薬の投与について
 「薬が出る場合 食事・運動療法に取組んでから3カ月から6カ月たっても脂肪異常症が改善されないと、医師が薬を出すことがあります」とあり、これはこれでよいとしても、現実としては、開業医のなかには「検査数値異常、即投薬」というやり方をする所がかなり多いのではないでしょうか。要開業医指導、これを熱望します。

 

参照1:2014.8.25 日本脂質栄養学会主要メンバーから日本動脈硬化学会への「コレステロール低下医療に関する緊急提言
( ↑ これを開くには、クリックしたのち、「ファイルを開く」「許可する」を順次クリック。ただし、難解で、かつ長文ですから、その要旨は下記の関連記事で書きましたので、よろしかったらそちらをご覧ください。)
参照2:日本動脈硬化学会 一般の方々向け 動脈硬化の病気を防ぐガイドブック

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