薬屋のおやじのボヤキ

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生菜食の是非について考える。完全生菜食で信じられない健康体に!

2014年01月13日 | 食養

生菜食の是非について考える。完全生菜食で信じられない健康体に!

 新鮮な野菜は生きているが、煮炊きすると死んでしまい、生命力のないものを食べても意味がない。野菜は生(なま)で食べて、はじめて本来の効果が得られる。

 このように言われることが多いのですが、観念的には、そのとおりだろうと思われるものの、果たして、どこまで本当なのでしょうか。
 このことについては、いまだ科学的に解明されておらず、これは永久に解明されないようにも思われますが、経験則として、どれだけかのことが分かっています。
 本稿においては、小生が今までに知り得たことについて、その概略を述べつつ、逆に、煮炊きすることによって得られる効能についても論ずることにします。

 ヒト以外の動物は、火食(煮炊きしたり、焼いた物を食べること)をしません。ヒトも遠い祖先にあっては火食をしていなかったことは間違いありません。
 ヒトが火の利用を体得したのは約150万年前とも言われますが、その確たる証拠はなく、遺跡調査によれば最古の焚き火跡は約80万年前のもののようです。それ以降、盛んに火食するようになったかというと、これも怪しいです。
 その当時の原人の主食は芋類と思われるのですが、今日、未開な地で行われているような、焼いた石でもって芋を蒸し焼きにする方法、あるいは芋を焚き火の灰の中へ入れて焼く方法
を既に採っていたのか、そうした面倒なことをせずに生で齧っていたのかどうか、これがよく分からないのです。
 なお、ヒトが穀類を食べるようになったのは、どう考えても、ごく最近のことでして、麦をすり潰してパンを焼いた最古の遺跡が約2万3千年前のものですから、たぶんそれ以降のことだと思われます。
 そして、ヒトが盛んに穀類(地域により麦または米)を食べ始めたのは、人口密度が高まり、食糧不足になって面倒でも農耕を始めざるを得なくなり、新石器時代に至った、高々約1万年前からと思われ、この時点から火食が主体になったものと思われます。穀類は生で噛むのは難儀ですから、面倒でも手を加えて調理するしかなく、脱穀した上で、麦は製粉し焼いてパンにし、米は蒸したり煮たりして食べたに違いありません。

 ところで、芋類も穀類も主成分はでんぷんで、生はベータでんぷんの状態になっていますから、ヒトの消化酵素では少ししか消化されませんが、水を加えて熱することによってアルファでんぷんに変性し、これでもって格段に消化されやすくなります。
 このことからすると、火の利用を体得した原始人は、これを知っていて、古くから芋の火食を始めていた可能性も捨て切れません。
 熱帯、特にアジアでは、各種芋類の自生地がいたる所にあり、株分けして幾らでも増やせますから食糧難になりにくく、米の栽培は大幅に遅れましたし、現在でも芋類しか栽培していない地域もあります。そして、ニューギニア高地民族となると、芋類と少々の野草以外はほとんど食べない(飼っている豚は年に数回の祭礼時などに食べる)のですが、芋類は
生食ではなくて火食です。その彼らは、すこぶる健康で、持久力は抜群、裸でも寒さにめっぽう強いです。穀類に無縁の彼らは何万年か前にアジア大陸からニューギニアへ移住してきたと思われますから、それ以前から行っていた芋類の火食を今日までずっと続けているとも考えられるのです。
 こうしたことからすると、原人時代の焚き火跡の遺跡がほとんど発見されていないものの、芋類の火食は随分古くから常態化していた可能性があります。
 そして、焼いた石でもって蒸し焼きするには芋類の他に野草や硬い果物
も一緒に入れていたことでしょう。さらには、祭礼時などには捕獲した動物も加わったと思われます。

 ここで、火食の有利性について概説しておきましょう。
 最大の効能は、でんぷんが熱変性してアルファ化し、ヒトの消化酵素で格段に消化が進むようになることです。唾液でかなり消化でき、そして小腸でほぼ完全に消化され、エネルギー源となるブドウ糖が容易に得られます。
 次に、たいていの物が軟らかくなって、咀嚼しやすくなり、胃腸への負担を大幅に減ずることができます。また、コロイド状になりやすく、消化効率が上がります。これによって量多く食べることができる利点がありますが、過食へ走らせる欠点を併せ持っています。
 3つ目が、植物が有する有害成分の無毒化です。煮汁にアクが溶け出し、それを捨てることによって無毒化(弱毒化)するのですが、熱で無毒化するものもあります。
 以上のことは、一般常識として知られていることで、おさらいの意味で紹介しました。

 火食については、中医学(漢方)で、これをかなり重視しているようです。
 その一つが、冷え症の改善です。
 中医学の陰陽論からすると、冷え症=陰性体質と考えてよいです。一方、体がポカポカして真冬でも薄着でいられる方、これは陽性体質と考えてよいです。
 一昔前までは“子供は風の子”と言い、子供は陽性体質でした。それに比べ、お年寄りは寒がりになり着込んでコタツに入るというふうに陰性体質に変化していきます。
 文明社会では、これが普通なのですが、一部の子供そして若い大人であっても陰性体質であるがゆえに、その程度の差にもよりますが、様々な疾患を抱えて苦しむというケースが少なからずあります。そして、近年、これが非常に多くなってきています。
 この陰性体質を改善するための食養生として、体を冷やす食品を避け、体を温める食品を摂ることがすすめられます。ことわざに“秋ナスは嫁に食わすな”とあるのは、子を授かるであろう嫁の体を冷やしてしまっては妊娠できなかったり流産する恐れがあろうというものです。そして、夏野菜は体を冷やして体に熱がこもらないようにしてくれ、冬が旬の根菜類は一般的に体を温めてくれる、というものです。
 中医学では、あらゆる食品を「熱、温、平、涼、寒」の5区分(一般的には「温、平、冷」に3区分)し、食養生の参考にしています。そして、体を冷やす食品であっても、熱処理することによって体を温める食品に変わるということが経験的に分かっていますから、陰性体質の方には、これがすすめられます。ただし、食品によって変化の程度に差があり、中には変化が認められないものもあったりするようです。
 いずれにしましても、陰性体質の改善には火食が望ましいものとされます。こうした食生活にすると、陰性体質に起因する様々な症状を緩和することが期待できるのです。陰には陽でもって陰陽のバランスを整えるというものです。

 ところで、火食による食養生法とは本質的にどういう療法かと言いますと、それは対症療法です。冷えるから温めるという、症状そのものに短絡的に直接対処する療法です。
 しかし、これは中医学の本道ではありません。中医学では、症状即療法が本道であり、例えば、風邪を引いて熱が出てきたら体を温めて熱を逃がさないようにし、これでもって自然治癒力を高め、治りを早くし完治させるのです。風邪を引いて熱が出てきたら解熱剤で熱を下げる、という対症療法では自然治癒力が発揮できず、風邪は長引くばかりです。
 これと同じで、体を温める食品で冷え症が一時的に良くなっても、それは見かけ上の“疑似陽性体質”であって、実際には陽性体質に変わっていないのです。
 そして、年がら年中体を温める食品ばかりを摂り続けていると、体質はますます陰性化してしまいます。温室育ちがひ弱な体になるのと同じことです。
 その冷え症を根治するには、中医学の基本に立ち返れば、「冷え症は体を冷やして治す」という症状即療法が本道でしょうから、これを適切に行えば、陰性体質が
陽性体質に変換する、つまり真に体質改善できて健康体になろうというものです。

 その症状即療法の一つが長期断食と言えましょう。
 長期断食すれば、その間は体は冷え続け、様々な症状が悪化しますが、それを乗り切ることによって、陰性体質が劇的に陽性体質に変換することが期待できます。もっとも1回ではだめで、何度か長期断食を繰り返す必要がある場合が多いようです。
 この療法は、元々は陽性体質の方が暴食を続け、特に甘い物好きで冷え症になってしまった場合に効果的な方法のようです。
 ただし、長期断食による様々な症状の悪化は“症状即病気”となる恐れがあり、生死に関わることになりかねませんから、決して独断では実行なさらないでください。
 もっとも、単なる冷え症だけでは、長期断食などという苦行はできませんが、各種の難病は冷え症と密接な関係にありますから、難病の治療にはかなり効果的なようです。

 もう一つの症状即療法が、本稿がテーマとする「生菜食」です。
 これには、数多くの治験例があります。特に、故・甲田光雄医師による60年にわたる様々な臨床の積み重ねから素晴らしい結果が出ています。
 基本的には、肉を断ち、火食を全くせず、数種類の生野菜を中心に、穀類は生の玄米を少々といったものです。生野菜は多くのものが体を冷やす食品ですから、これによって体は冷え続けます。また、生野菜や生玄米はたくさんは食べられませんから、カロリー摂取量は通常1000キロカロリー以下となり、カロリー不足が輪をかけて体は冷え続けます。これを少なくとも3か月、半年、そして1年2年と続け、場合によっては一生続けるというものです。
 ただし、極度の冷え症の場合は、生野菜を受け付けない体質になっていて、まずは皮膚への寒冷刺激で冷え症を少々改善させてからでないと生野菜は食べられないようです。
 
(なお、健康が取り戻せたからといって、生菜食を止めて以前の食生活に戻すと、元の木阿弥になってしまう恐れもあるとのことです。)
 その治験例については、著「生菜食健康法」(春秋社)、「冷え症は生野菜で治る」(文理書院)などで数多く紹介されていますが、先日記事にした「人はどれだけ食べれば生きていけるか(2013.10.17)」の中で紹介した森美智代さんもその1例です。
 この場合も、断食と同様に、生菜食を始めた当初は様々な症状が悪化することが多く、個人差があるようですが、3か月、半年と経って、「宿便」の排泄を切っ掛けにして、はじめて
陽性体質に体質変換し、病症も消えるようです。

 ところで、甲田氏は幾冊かの著で、その治験例から、体質変換は「宿便」を排泄することによって起きる、と主張されています。よって、いかにして「宿便」を排泄させるか、これに重点を置き、その食事療法を断食を含めて研究してこられました。
 こうしたことから、冷え症の抜本的改善には、生菜食だけではだめで、生菜食期間中にときどき断食を挟む必要があるようです。また、併せて皮膚の鍛錬や腸に良い刺激を与える運動も毎日行う必要があるようです。

 いずれにしても、生菜食に劇的な効果があることが経験的に分かったのですが、甲田氏は、その科学的解析に関しては、次のようにおっしゃっておられます。
 …私たちの祖先は…全て生のものをそのまま食べていた…、私たちの体は元来、生のものを消化分解するのに都合のよいように適応してきたのです。…「生の食材」は、体内に入ってからその人の生命力を高めてくれる力を秘めている…。
 (甲田光雄監修<奇跡が起こる「超少食」>(マキノ出版)より引用)
 なお、甲田氏の幾冊かの著から、氏の知見として、次のことが言えるとのことです。
 完全な生菜食を続けていると、腸内細菌がそれに適した、ヒト本来の腸内細菌にだんだん変わっていくようで、その腸内細菌の働きによって、ヒトの消化酵素では消化できないものが、発酵という別の形でもって有機酸(酢酸、酪酸、吉草酸、プロピオン酸などの短鎖脂肪酸=エネルギー源)やアミノ酸に分解生成され、これがヒトの栄養となる。

 生菜食する食材の全てを火食しては、陰陽論や症状即療法の所で述べましたように、体質改善の効果が得られないようです。実際、先に紹介した森美智代さんは、少しばかりの大根おろしさえ受け付けない体質であったがために、完全火食による玄米菜食の少食を長く実行するも、症状は悪化するばかりでした。
 このように、玄米菜食の少食であっても、生食か火食かで極端な相違が出るのです。

 ここからは、小生の推測になります。
 そうなってしまうのは、生の食材に含まれる何かの有用物が直接ヒトの体に吸収されて効果を発揮するとも考えられますが、生菜食の効果は通常かなりの遅効性であることから、どうも直接的効果ということではなさそうです。
 ちなみに、生菜食を始めると、やたらとおならが出るようになりますが、これは植物に含まれる酵素による発酵が原因であろうと、甲田氏は言っておられ、そして長期間生菜食を続けて体が生菜食に馴染んでくると、おならが少なくなると言っておられます。
 こうしたことからすると、腸内細菌の関わりが大きいのではなかろうかと思われます。
 つまり、生の食材でないとヒト本来の腸内細菌群が育たないか、あるいは適正な発酵を行うことができず、腸内細菌によるヒトに有用な有機酸やアミノ酸さらにはビタミン類の生成がなかなか進まない、と考えた方が良いように思われます。
 そして、生菜食を続けていると、それに適した腸内細菌群がだんだん勢力を伸ばしていき、ついには速やかに発酵を行うようになるのではないでしょうか。
 このことは、おならの出方から推測されます。つまり、生菜食の初期においては、腸内細菌による発酵力が弱く、植物の自己融解(植物に含まれる酵素による自己細胞の消化)に伴うガス発生が多いのに対し、腸内細菌群が生菜食に適したものに代わることにより、植物が自己融解する前に腸内細菌による発酵が行われ、この発酵によるガス発生は少ないと解してよいのではないでしょうか。

 小生思うに、ヒトは進化の歴史の中で、火食に適応した体質をまずまず獲得していて、栄養源の多く(特にエネルギー源)を自力で消化吸収するようになり、その結果、腸内細菌による発酵という助けを借りなくなってしまった、ということではないでしょうか。
 しかしながら、元来のヒトは、近種のゴリラと同様に後腸発酵動物であって、自らの消化酵素でもって栄養を賄いきれるも
のではなく、主として腸内細菌が作り出してくれる発酵生成物を栄養源としていたものと考えられますから、まだまだこちらの方がヒトに適した食性であると言えましょう。
 さらには、腸内細菌の活発な活動に伴って、かなりの発酵熱が生産されるでしょうから、これによって内から体温が高まり、つまり陽性体質を維持できようというものです。
 現に陰性体質の人が生菜食を半年、1年と続けていると、初めは冷えを強く感ずるものの、やがて真冬でも素足・薄着で過ごせ、寒さを感じなくなることが多いと言います。
 これは、腸内細菌による後腸発酵で生じた発酵熱に起因するとしか考えられないのではないでしょうか。これには類例があります。孫悟空のモデルになった小猿「キンシコウ」はチベットの極寒の地に住んでいますが、彼らは木の葉や皮などの食物繊維食であって、これを前胃発酵させ、その発酵熱でもって、小さな体であっても極寒に耐えられるのではないかと考えられています。

 ヒトの進化の歴史をたどっていくと、様々な面でいまだ進化途上にある感がし、その食性においても安定した状態には至っていないと考えられます。
 と言いますのは、個人差があるようですが、完全な生菜食に切り替えれば、何か月かすればそれに適応できてしまい、全ての方が驚くほどの健康体になるようですから、ヒト本来の食性を、少なくとも日本人は誰しもがまだ失っていないことでしょう。
 ところで、ヒトが代替食とした芋類、こればかりを生で食べる食生活をするとどうなるかについては、小生の不勉強で全く分かりませんが、ほとんど芋類ばかりの火食生活であっても、ニューギニア高地民族のようにすこぶる健康に暮らせる例があります。 
 となると、穀類・野菜など様々なもののほとんどを火食しても、同様に健康体でいられてもいいはずです。現代人にはそうした方は少ない感がしますが、江戸時代の庶民はかなりの健康体であったようですから、そのようにも思われます。
 こうしたことから、ヒトは進化の過程で、野草、芋類、穀類と順々に食材を広げていき、それに対応できる能力を順次身に付け、さらには火食にも対応できる能力さえも身に付けてしまっている、とも考えられます。
 ただし、ヒトのあまりの進化の速さに、その生体機能が十分に着いて行けているかとなると、これには疑問符が付きましょう。やはり、芋類や穀類は完全には体に順応できておらず、まだまだ代替食の域を出ていないように思われますし、火食についても同様に完全には対応できていないのではないでしょうか。
 ましてや動物食となると、これは代替食としても未完成で、イヌイット(エスキモー)だけが辛うじて代替食として対応できているだけでしょう。

 ここまで、食の質的な面から人の健康を考察してきましたが、人の健康は生活環境の良し悪し、毎日体を十分に動かしているか、絶えず寒冷刺激を受けているか、といったことと関係が深いですから、人の健康を食だけで論ずることはできません。
 また、食の面において、忘れてならないのが、食べる量と食事の時刻・回数でして、これらが健康に思いのほか大きく影響するようです。
 今や飽食時代。故・甲田光雄氏は、正しい食生活とはどんなものかを考えたとき、何よりもまず少食にせねばならないと言っておられます。

 本稿は、非常に長文となり、かつ、とりとめもない話となってしまい、申し訳ありませんでした。また、部分的に生菜食を取り入れた場合の効果の有無について論ずることできず、このことについては後日記事を起こしたいと思っています。
(追記)2014.1.31 それを記事にしましたので、よろしかったら下記をご覧ください。
  → 「完全生菜食ではなく、一部生菜食とした場合の効果はいかに
(再追記)2014.2.23 関連して次の記事を起こしましたのでご覧ください。
  → 「果物は体にいいのか?人の健康を害するのか? 」

(追記2)2014.3.4
 ほぼ完全生菜食を実行されている方のブログを見つけましたので、ここに紹介します。
 → 「日々花家 西式健康法食養指導士のブログ

追記3)2016.11.23
 7年間も果物(トマトなどの果菜類を含む)だけしか食べない食研究者が、先日テレビに登場されていました。
 参考までに、ネット記事とご本人のブログを貼り付けておきます。
 なお、ご本人は丸っきり完全な果物食ではなく、塩は摂っておられるようですし、冬季は激痩せ防止のためにナッツ類(最近は栗)を少々摂っておられるとのことです。
 http://news.livedoor.com/article/detail/12044728/
 http://ameblo.jp/fruit-mizuki/


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1 コメント

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ありがとうございます (まよ香)
2014-03-07 18:06:06
興味深くブログを拝見しておりましたら、なんと、ご紹介いただいていて驚きました。
とても恐縮です。

もうお一人の方も、以前にブログを見てくださって、お会いしたことがあります。

今後もお勉強させてください。

よろしくお願いします。
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