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胃薬を飲めば飲むほど胃は悪くなる(付記:お茶も薬のうち)

2015年03月10日 | 胃の病

胃薬を飲めば飲むほど胃は悪くなる(付記:お茶も薬のうち)
(最新更新:2018.6.21)

 1997年に抗酸剤H2ブロッカー・ガスターテンがOTC薬として店頭販売できるようになったとき、テレビCMの効果もあったのでしょう、かなり多くの方がドラッグストアでこれをお買い求めになったようです。そして、ガスターテンを飲まれた方が“胃の調子がひどく悪くなってしまった”と、何人もが当店に相談にみえました。その多くは消化不良による胃の変調です。
 発売当初に当店にも若干名のお客様がガスターテンをお求めにいらっしゃいましたが、お客様には「この薬は胃酸が出るのを強くブロックしてしまいますから、胃の荒れからくる痛みは解消してくれますが、消化不良を起こします。胃が空っぽの状態でガスターテンを飲み、次の食事は抜いてください。胃をその間休ませて胃壁が修復されるのを助けてあげてください。」と説明したものです。
 なお、ガスターテンの効き目には個人差があるようでして、全然消化不良を感じない方もいらっしゃいます。これは、それまでの胃薬の常用で胃が慣れてしまい、ブロック効果があまり生じなくなってしまっているからでしょうかね。反面、滅多に胃薬を飲んだことがない方だとバッチリ効きすぎるほど効いてしまう、そんな感がしないでもないです。
 さて、胃薬といえば、太田胃散、サクロンなど制酸剤中心のものがまずあげられます。これは胃酸をどれだけか中和させて胃の中の酸度を下げ、荒れた胃壁が強酸でこれ以上のダメージを受けないようにするものです。ガスターテンほどではありませんが、消化不良にしてしまう傾向にあります。なお、この種の胃薬にはアバロンS(大正製薬)などのように胃粘膜保護剤を加えたものもけっこう多いです。
 次に、大正漢方胃腸薬など、主に健胃成分からなる漢方処方のものがありますが、たいていのものは「安中散」プラスアルファとなっていて、安中散に配合されている「ボレイ」に制酸作用があります。なお、ボレイとは牡蠣(かき)殻粉末のことで主成分は炭酸カルシウムです。これは各種制酸剤の中で中程度の制酸作用がありますが、太田胃散などに含まれる制酸剤の数分の一以下の配合量です。
 これ以外に胃薬としてはガロニン(全薬工業)などの消化薬があり、通常、油っぽいものの消化を助ける胆汁エキスをメインとしてデンプン消化酵素なども配合されていますが、これに制酸剤や健胃薬がどれだけか配合されるのが普通です。
 ところで、ガスターテンがそうですが、パッケージに「胃腸薬」と記されており、全般にこうした胃薬が多いです。でも、決して「腸」に効くものではないです。また、効能が幾つも並べられている場合が多いのですが、この薬にこのような効能があるとはとても思えないというケースもあります。そのいい例がガスターテンの効能「もたれ」です。冒頭で述べましたように、ガスターテンを飲めば消化不良で胃がもたれるのですからね。なぜに「もたれ」が効能として書かれているかというと、2、3週間ガスターテンを飲み続ければそのうち胃が元気を取り戻して「もたれ」を感ずることはなくなる、といったところでしょう。
 このように、どんなときにどんな胃薬を飲んだらよいのか消費者には非常に分かりにくいものになっているのが、日本の胃腸薬です。そして、どんな胃薬にも大なり小なり制酸作用のあるものが配合されているのも日本ならではの特徴です。加えて、何にでも効かせようとして相反するものまであれこれ配合し、結果、ほとんど何も効かない胃腸薬まであります。
 日本で市販されている胃薬は、このように困ったものが多く、また、多くの胃薬は常用することによる害がけっこうあります。
 ここまで、当店に置いている胃薬のオールラインアップを1品だけ商品名を伏して紹介させていただきました。いかに売れていないか、ご推察いただけたかと思いますが、売ろうとしないから売れなくなったと言った方がいいかも。自信を持ってお勧めできるものがないから、必然的にそうなります。
 おっと、1品忘れていました。「御岳百草丸」がありました。これはお年寄りがお1人買っておられましたがお亡くなりになってしまいましたから、期限が来たら廃盤でしょう。これは漢方処方にない生薬が2品目入っている和漢薬で、健胃・整腸・下痢止め効果があり、制酸作用はないものの筋弛緩(けいれん緩和)作用がありますから、これもまた飲み続けてよいものではありません。

 さて、これより表題にしました「胃薬を飲めば飲むほど胃は悪くなる」このあたりのことを根拠を示して説明させていただこうと思います。でも、ここは、医学も薬学も正式に学んでいない小生の口から説明しても“ほんまかいな?”と信じてもらえそうにありませんから、この分野の重鎮でありかつ最も信用がおける新谷弘実氏にご登場願うことにし、最後の最後で新谷氏がおっしゃっておられなかった事項を付言させていただくことにします。
 氏はその著書「病気にならない生き方」の中で、表題の項目以外にもズバズバ述べておられますので、関連することも含めて少々詳しく紹介しましょう。
 なお、新谷氏は内視鏡外科の先駆者であり、たぶん世界一の臨床例(著書発刊時で日本人・米国人合計30万例)をお持ちで、患者が胃薬を常用していたか否か、どんな食事をしてきたかをヒアリングし、それによって胃壁がどうなっているか(「胃相」の良し悪し)をつぶさに観察なさっておられ、その深い経験から導き出された有意義なお話です。
 少々長い引用となりますが、最後までよろしくお付き合いください。なお、引用に当たっては、本書の後ろの方の頁に書かれたものを一部関連する前の方の頁に入れ込んで編集しています。

 …薬で病気を根本的に治すことはできません。薬は激しい痛みや出血など、どうしてもすぐに食い止めなければいけない症状を抑えるためのものと考えたほうがよいでしょう。私も胃潰瘍を起こして出血と痛みを訴えている患者さんにはH2ブロッカーのような抗酸剤を処方します。でも、その期間はどんなに長くても2~3週間です。そして、薬で痛みを止めているあいだに、潰瘍の原因を取り除くのです。胃潰瘍の原因は、食事の量、質、時間やストレスなどさまざまですが、そうした原因が取り除かれないかぎり、いくら薬を飲んだところで効果はありません。一時的に薬で潰瘍が治癒したように見えたとしても、必ずまた再発してしまいます。
 病気を根本的に治すことができるのは、日々の積み重ねだけです。ですから、原因を取り除き胃潰瘍が治ったら、その後は二度と胃潰瘍を起こさないよう、規則的な食生活と生活習慣を実践していくことが大切です。
…だいたい「胃酸過多」という考え方自体が間違っていると、私は思っています。胃酸が出すぎるということは、実際にはありません。胃酸は健康を維持するために必要だから出ているのです。そうした体の仕組みを無視して薬を飲むことは、文字どおり命取りにつながります。
…薬に思わぬ副作用があるものも少なくありません。たとえば、消化性潰瘍治療薬やH2ブロッカー系の胃薬を男性が常用すると、インポテンツを起こす可能性があります。さらにインポテンツにならなくても、精子の数が急激に減少するというデータも出ているのです。ですから、近年、問題となっている男性の不妊の原因も、いろいろな強い制酸剤を服用したせいであるといっても過言ではないでしょう。
…人間の顔に人相のよしあしがあるように、胃腸にも「胃相」「腸相」のよしあしがあります。人相はその人の性格が表れるといいますが、胃相・腸相にはその人の健康状態が表れます。
 健康な人の胃相・腸相はとても美しいものです。胃であれば、粘膜が均一のピンク色で、表面にでこぼこがなく、粘膜下の血管が透けて見えることもありません。また、健康な人の粘膜は透明なので、内視鏡が照らす光に粘液が反射し、キラキラ輝いて見えます。…
 人間は誰でも子供のころはきれいな胃相・腸相をもっています。それが日々の食事や生活習慣によって変化していくのです。
 不健康な人の胃は、粘膜の色がまだらで局所的に赤くなっていたり、はれたりしています。また日本人に多い萎縮性胃炎になると、胃粘膜が薄くなるので、粘膜下の血管が透けて見えるようになります。さらに、胃の粘膜が萎縮すると、それを補うために表面細胞が部分的に増殖するため、胃壁がでこぼこになってきます。ここまでくると、もうガンの一歩手前です。
…腸相は肉食文化の影響でアメリカ人のほうが悪いのですが、胃相はじつは日本人のほうがアメリカ人より悪い人がはるかに多いのです。私はアメリカ人と日本人、両方の胃を診ていますが、胃の粘膜が薄くなる萎縮性胃炎になる人は、私の臨床経験では日本人のほうが20倍近くも多いのです。そして、萎縮性胃炎は胃ガンを発生させることが多いため、胃ガン発生率も日本人のほうが10倍も多いのです。
…内視鏡で胃を診ていて不思議に思っていたのですが、日本人とアメリカ人では、症状の感じ方にかなりの差があります。日本人は診てみるとたいした症状でもないのに、胃の痛み、不快感、胸やけなどの症状を訴えることがとても多いのです。ところがアメリカ人は、胃や食道の粘膜がかなり荒れていても日本人ほど胸やけを訴える人はいません。
 こうした違いが生ずる理由の一つに、食事に含まれるビタミンAの量があります。ビタミンAは、胃…粘膜をプロテクトする働きをもっています。…ビタミンAを多く含んでいるのは「油」です。日本の食事も欧米化したとはいえ、油…乳製品…の摂取量はアメリカ人にははるかに及びません。こうした食物は、体全体の健康を考えるとよくないのですが、粘膜のプロテクションという意味においては効果があるのだと思います。
 アメリカ人の胃腸が丈夫な理由として、もう一つ考えられるのが「消化酵素の量」です。…消化酵素の分泌量が不十分だと、消化不良を起こし臓器に負担がかかってしまいます。
 日本人の多くが、胃粘膜の状態がそれほど悪くないのに、胃痛や胃もたれなどの症状を感じやすいのは、(たんぱく質と脂肪の)消化酵素の量がもともとアメリカ人よりも少ないからだと考えられます。
 さらに、日本人は胃の調子が悪いとすぐに胃薬を服用しますが、アメリカ人は胃薬をあまり飲みません。彼らが飲むのはサプリメントの消化酵素です。これは日本では市販されておらず、必要に応じて医師が処方するようになっています。しかし、アメリカでは消化酵素は非常にポピュラーなサプリメントで、健康食品店で簡単に購入できるうえ、毎日飲んだとしても1か月20ドル(約2千円)程度しかかかりません。
 そしてじつは、この胃酸を抑える薬をすぐに服用するということが、日本人の胃を悪化させるのに拍車をかけているのです。最近日本で人気の高い「H2ブロッカー」や「プロトンポンプインヒビター(プロトンポンプ阻害剤)」配合の胃薬などは、胃酸の分泌を抑える働きが高いことを売りにしていますが、胃酸を薬で抑えてしまうと、胃粘膜は萎縮してしまいます。…胃の粘膜には「絨毛」という小さな突起があり、そこから胃酸が分泌されているのですが、胃酸を抑える胃薬を飲み続けていると、その絨毛の機能が低下し、どんどん短くなっていきます。これが粘膜の萎縮です。粘膜の萎縮が進むと、胃粘膜が薄くなるため炎症を起こしやすくなり、萎縮性胃炎へと移行します。萎縮性胃炎を起こしている胃は胃酸の分泌が少ないので、ピロリ菌や雑菌の温床となり、ますます粘膜の炎症を悪化させ、最後には胃ガンを発生させてしまいます。…
 ピロリ菌感染が必ずしもガンの発生に直結するわけではありませんが、ピロリ菌の増殖を防ぐためにも、制酸剤を含む胃薬の服用はできるだけ避けたほうがよいのです。
 日本人は、とても気軽に「薬」を服用します。でも薬はすべて基本的に体にとって「毒」だということを覚えておいてください。…漢方薬であろうが化学薬品であろうが、薬が体にとって毒であることに変わりはありません。
 ですから、胃もたれや胃痛を感じる人は、医師にきちんと自分の体調を伝え、症状にあわせたエンザイム(酵素)サプリメントを処方してもらうようにしてください。また、最近は日本でも海外のサプリメントが購入できるようになってきているので、安易に市販の胃薬(抗酸剤・制酸剤)を飲むのではなく、エンザイム・サプリメントを上手に活用するようにしてください。消化エンザイムのサプリメントを飲むことで、胃の具合は十分に改善されます。(引用者注:胆汁エキスもエンザイムと同等の扱いをしてよいでしょう。)
…人間の体には非常に強い酸で保護されることによって正常に機能する場所が2か所あります。一つは「胃」、もう一つは女性の「膣」です。この2か所はどちらもpH1.5~3という強酸を示しますが、なぜこれほど強い酸が出ているのかというと、一つはばい菌を殺すためです。
…胃にもさまざまな食物とともにばい菌が入ってきます。食事のたびに胃に入ってくるばい菌の数は、3千億とも4千億ともいわれています。そうした膨大な数のばい菌を胃液に含まれる強酸がその大部分を殺してくれているのです。
…体を守るために必要不可欠なその胃酸を薬で抑えてしまったらどうなるでしょう。…
 胃薬が体に与える害はそれだけではありません。胃酸の分泌が抑えられてしまうと、消化酵素を活性化させるペプシンや塩酸が不足し、消化不良を起こしてしまうのです。また十分な胃酸がないと鉄やカルシウム、マグネシウムなどのミネラルの吸収が阻害されます。…
 胃酸の分泌が不十分だと、…食べ物は消化不良の状態のまま腸へと進みます。そのため本来なら腸で消化吸収されるはずの食べ物が、不消化物として腸内に残存してしまいます。…当然のごとく腐敗・異常発酵が起きます。これにより腸内では悪玉菌が異常増殖し、免疫力が低下してしまうのです。
 そのようなところに、さらに胃で食い止められなかったばい菌が入り込んでくるのですから、
具合が悪くならないほうが不思議かもしれんません。
 このように、胃薬を飲めば飲むほど体はダメージを負ってきます。
 では、どうしたらよいでしょう。答えは簡単です。胃薬を飲みたくなるような胸やけや膨満感が起きないようにすればいいのです。なぜ胸やけや膨満感が起きるのかを知っていれば、ちょっとした心がけで防ぐことができます。
 胸やけは、食道に胃酸が逆流していることで生じます。もともと食道というところはアルカリ性になっているので、酸には弱い場所なのです。そのため普段から人間は、胃酸が上がってくると、無意識のうちにアルカリ性の唾(つば)を飲み込むことで、逆流してきた胃酸を洗い流しているのです。しかし、食べすぎや消化不良などによって、唾では洗い流しきれないほどの酸が上がってくると、食道に「びらん」というひっかき傷のようなただれができてしまいます。そこにさらに胃酸が来ると…痛みや不快感を伴う「胸やけ」という症状が起きるのです。胃薬を飲むと胸やけがスーッとひいていく感じがするのは、逆流している胃酸が抑えられるからなのです。
 つまり、胸やけを防ぐには、胃の中のものが逆流してこないようにすればいいということです。それには、まず暴飲暴食とたばこ、アルコール、コーヒーなどを控えることです。そしてもう一つ大切なのが、夕食は寝る前4~5時間前には終え、寝るときには胃がからっぽの状態にしておくということです。

(参考:本書において、「夕食は寝る前4~5時間前には終える」に関連する病気)
 睡眠時無呼吸症候群…もっとも患者数が多い「閉塞型」睡眠時無呼吸症候群をかんたんに治す方法があるのです。それは、睡眠の4~5時間前から、胃に何も入れないことです。もっとわかりやすくいえば、胃をからっぽにしてから寝るようにするということです。
 人間の気管は、空気以外のものが入らないような仕組みになっています。しかし、寝る前に胃にものが入っていると、横になることでその内容物がのどまで上がってきてしまうのです。これが著しく気道が狭くなる「閉塞型」の原因だと私は考えています。… 
 夜、どうしてもおなかがすいて耐えられないという人は、…果物を少し食べるようにするといいでしょう。(果物は消化されやすく)…1時間ぐらいたつと、横になっても逆流を起こす心配はありません。

(付記:本書の中で胃に関する「お茶」の害の記事)
 たしかに緑茶に多く含まれるカキテンには、殺菌効果や抗酸化作用があります。そのため日本茶をたくさん飲んでいれば長生きするとか、ガンの予防になるというストーリーが生まれました。でも私は、こうした「カキテン神話」にかねがね疑問を抱いていました。それは…「お茶をたくさん飲む習慣がある人の胃相は悪い」という臨床データが出ていたからです。
 お茶に含まれるカキテンが、抗酸化作用をもつポリフェノールの一種であることは間違いではありません。しかし、そのカキテンはいくつか結合すると「タンニン」とよばれるものになります。
 タンニンというのは、植物がもつ「渋み」成分で…非常に酸化しやすい性質をもっており、…容易に「タンニン酸」に変化します。そしてタンニン酸には、タンパク質を凝固させる働きがあります。ここからは私の仮説ですが、こうしたお茶に含まれるタンニン酸が、胃粘膜に悪い影響をおよぼし、胃相を悪くしているのだと考えられます。
 事実、タンニン酸を多く含むお茶(緑茶、中国茶、紅茶、どくだみ茶、杜仲茶など)を常飲している人の胃を内視鏡で見ると、粘膜が薄くなる萎縮性変化が起きていることがよくあります。…お茶の先生など仕事で大量のお茶を飲んでいる人には、胃ガンの前駆症状ともいえる萎縮性胃炎を起こしている人が少なくありません。…
…慢性の萎縮性変化、または萎縮性胃炎は、胃ガンになりやすくなることがわかっています。そして、この説を裏付けるように、2003年の9月には、日本癌学会において三重大学の川西正裕教授(衛生学)らが、カキテンによりDNAが損傷するというレポートを発表しておられます。
…お茶が好きな方は、…比較的胃粘膜に負担がかからないように空腹時を避け、食後に飲む。そして、1日2、3杯程度にとどめるようにしてください。

 以上、胃薬とそれに関連する事項の抜粋です。いかがでしたでしょうか。
 なお、参考としてあげた睡眠時無呼吸症候群に関する部分は、過去記事2015.2.19「睡眠時無呼吸症候群の治し方」でより詳しく紹介しています。胃を空っぽにして寝ることは、肥満防止もそうですが、健康上いろいろな面で重要なことになります。
 最後に、胃にそして腸にやさしい食事方法について新谷氏は本書において次のことを強調されていますので、併せて実践なさってください。

…入院した経験をおもちの方はわかると思いますが、いまの病院食というのは、何かというとすぐに「お粥」を食べさせます。とくに内臓を手術した後の患者などには、「胃腸に負担をかけないように三分粥から始めましょう」と、いかにも体を思いやっているような言い方をします。でも、これは大きな間違いです。
 私は、胃の手術をした患者さんにも最初から普通食を提供します。なぜお粥よりも普通食のほうがいいのか、それはエンザイム(酵素)の働きを知っていればすぐにわかります。
 普通食がよいのは「よくかむ」ことが必要だからです。よくかむことは唾液の分泌を促します。唾液の中には消化エンザイムが含まれており、かむことによってエンザイムと食物がよく混ざり合い、食物の分解がスムーズに進むので消化吸収がよくなるのです。
 しかし、お粥だと最初からどろどろしているので、ろくにかまずに飲み込んでしまいます。そのため、やわらかいはずのお粥は、エンザイムが充分に混ざっていないため消化が悪く、よくかんだ普通食のほうが消化がよいという皮肉な結果になるのです。
…よくかむとうことは、病人に限らず消化吸収をスムーズに行うためにとても大切なことです。とくに胃腸に問題ない人も、普段から30~50回はかむように心がけることをお勧めします。(
引用ここまで)

 本稿は随分と長文になってしまいましたが、読者の皆様には最後までお付き合いいただきまして有り難うございました。
 最後の最後に小生から1つだけ付言させていただきます。
 東南アジアへの旅行客にコレラが集団発生することがまれにあるのですが、欧米人が罹患することは少なく、たいていは日本人に集団発生します。これは、コレラ菌は酸に弱いので、充分に胃酸が出ていれば胃の中でコレラ菌が死滅してしまうからです。
 いかに日本人の胃酸の出が悪くなっているか、あるいは制酸剤を常用しているかを如実に示している例です。なお、たいていのカルシウム剤も制酸剤の働きをしてしまいます。なぜならば、カルシウム剤の多くは炭酸カルシウムだからです。
 よって、お医者様からダラダラ出し続けられている胃薬は直ちに飲むのを止めましょう。そうしないと、あなたの胃は“胃ガンへ一直線”となりかねません。市販薬もほとんどのものが同様で、我慢ができない痛みや不快感があるときだけにしましょう。なお、カルシウム剤は別の観点(カルシウム不足の米国人、充足の日本人)からもお勧めできません。
 何にしても「
胃薬を飲めば飲むほど胃は悪くなる」、これを肝に銘じておきたいものです。 

(2016.9.14 追記その1)
 胃薬に頼りすぎて、どんどん胃が変調をきたし、どうにもならなくなった方々からコメントやメッセージを幾つかいただき、その対処法をアドバイスさせていただいております。
 本稿の中でも対処法が少し登場しますが、それを含めた対処法の概略を以下に整理しておきましたので、参考になさってください。なお、胃が極端に悪い人は腸も悪くなっていますから、腸の健全化も併せて取らないと体調は良くなりません。

・食べ物はよく噛んで丸飲みしない。「一口30回噛む」を目標にゆっくり食事する。
・暴飲暴食を止め、たばこ、アルコール、コーヒー、濃いお茶など刺激物は控える。
・間食の甘い物は厳禁で、どうしても食べたいときは食後に少々よく味わって食べる。
・夕食は寝る前4~5時間前には終え、胃を空っぽにしてから寝る。
・胃酸の出を良くするには食塩が必須で、減塩しない。
・朝の梅干が効果的で、口の中でよく溶かし、十分な温かい白湯で飲む。
・冷たい物は極力避け、努めて体温より高いものを口に入れる。
・胃に休養を与えるには「朝食抜き」が一番。体を慣らすため、だんだん減らしていく。
・朝食抜きにすると空腹感とともに胃の荒れを強く感じるので、温かい白湯を飲む。これで楽にならないときは、温かい「すまし汁」を飲む。(「すまし汁」は、断食のときに汎用されるもので空腹感も和らぎます。作り方:乾燥椎茸、昆布を水で戻し、醤油(お好みの量)、黒砂糖(なるべく少なめ)を加えて煮出したもの。料理で作るお吸い物に比べ、乾燥椎茸、昆布は倍の濃さが目安。このすまし汁を昼食前まで何度か水分補給のつもりで飲む。)
・牛乳・乳製品は一時的に胃の痛みを緩和したり、空腹感を消してくれますが、腸へのダメージが大きいですから、避けてください。
・必要に応じて消化薬を食事のときに飲む。なお、動物性タンパク質や脂肪の摂取を少なくし、胃腸への負担を軽減する。
・腸内環境を改善するために野菜中心の食事にするとともに、整腸剤の助けを借りる。
・口の中がただれているときは歯磨きは乳酸菌入りのものにするか、整腸剤をよく噛んで、しばらく口の中にふくんでから、のどに流し込む。
 <乳酸菌入り歯磨き> わかもと製薬 アバンビーズ
  http://www.wakamoto-pharm.co.jp/avantbise/index.html
・お腹を温めるツボに貼るカイロのミニサイズを下着の上から貼るといいです。「環跳」というツボで、立ったときにお尻の両脇にできるくぼみです。お腹から離れた場所にありますが、お腹に一番効くツボで、間接的に胃にも効果的です。温まりすぎて気分が悪くなるようでしたら、取り外します。
・新谷弘実氏がおっしゃておられるようにビタミンAの補給もいいでしょう。
 カワイ肝油ドロップSが信頼が置け、お勧めです。 

生薬「刺五加(シゴカ)」(単剤または配合剤)は胃を温めてくれ、胃がホッとします。漢方薬としてイチオシのものです。
 JPS製薬 双参

(2016.9.14 追記その2)
 胃が極端に悪い状態が続くと腸も悪くなってきて、
リーキーガット症候群を引き起こす恐れが多分にあります。これについては別途記事にしましたので、併せてご覧になってください。
  → 
リーキーガット症候群を克服しよう

(2016.9.24 追記その3)
 
この記事を読んで数多く寄せられたこの1年半の健康相談を振り返って見ますと、けっこう慢性胃腸炎の方がいらっしゃいます。そして、慢性胃腸炎になってしまった原因は心因性のものとが多い感がしました。そこで、違った角度から慢性胃腸炎を捉え直し、別途記事を起こしましたので、参考になさってください。
  → 胃の調子が少々おかしくてもヒーヒー言うんじゃない!

(2017.10.12 追記その4)
 「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」と申しますように「敵=慢性胃炎」とはどういうものか、「己=生活習慣・精神」はどんな状態にあるのか、まずはこれをしっかり捉えなければいけないでしょう。そこで、「敵=慢性胃炎」について、別サイドから、どういうものなのかを探ってみることにしました。
  → 慢性胃炎:交感神経の高ぶりで胃への血流は2段構えで絞られます

(2018.1.18 追記その5)
 慢性胃炎の方は胸やけを訴えられることが多いのですが、その真因は胃酸の逆流ではないことを知りましたので、そのことについて解説しました。
 → 胃酸の逆流で逆流性食道炎が起きるなんて大間違い !?
 

(2018.3.13追記その6)
 胸やけを解消する意外な方法があることを知りましたので、記事にしました。
 → 太田胃散が胸やけに効くわけは意外なところにあり

 

(2018.6.21追記その7)
 慢性胃炎の方は、交感神経が高ぶっていることが多いです。福田稔著『実践「免役革命」爪もみ療法』の中で紹介されている“爪もみ療法”は、交感神経を沈め、副交感神経を高めますから、慢性胃炎の方におすすめしたい治療法です。下記をご覧ください。
 →  実践「免疫革命」“爪もみ療法”のすすめ。いろんな病気が改善しますよ。

 

 


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クイズ (ももか)
2015-03-11 00:49:13
第一三共胃腸薬?
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クイズの回答 (薬屋のおやじ)
2015-03-12 17:49:25
ももか様、大変遅れまして申し訳ありません。
第一三共胃腸薬は、一般的な胃薬に整腸剤としての乳酸菌をけっこうな量足し込んでいます。
しかし、これは、やりすぎです。
胃の不調を感じたら、症状にあわせて胃薬を選択すべきですし、腸は腸で、その不調の具合に適した整腸剤を選択し、症状の軽重で飲む量を増減すべきです。
加えて、第一三共胃腸薬は、消化薬まで配合しています。これも飲む量は増減すべきもの。
悪乗りしすぎです。


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回答ありがとうございます! (ももか)
2015-03-12 18:44:09
何でも入れればいいってもんじゃないですよね…
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Unknown (痩せ型)
2015-10-10 17:14:27
強力わかもとやエビオスも毎食後に飲むのもよくないですか?
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強力わかもとやエビオス (薬屋のおやじ)
2015-10-11 10:17:34
これらには制酸剤などの、いわゆる「医薬品」は含まれていません。
エビオスはビール酵母(食物繊維と考えていいでしょう)だけ、強力わかもとには他にビタミンや乳酸菌といったものが配合されているだけですから、栄養剤の類です。
安心してお飲みになってください。
こうしたことから、2品とも「医薬品」ではなく、「指定医薬部外品」という、小難しい分類名が付けられていますが、これは昔は、こんなものでも医薬品として認可されていた時代があったからです。
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Unknown (痩せ型)
2015-10-14 10:05:59
回答ありがとうございます!
胃腸が弱いので飲み続けてみます
返信する
飲み合わせ (そら)
2015-11-05 07:52:32
とてもよくわかりました!ありがとうございます。

新谷先生の本は何冊も読んでるのに
最近相続とかでストレスで胃が弱りました。

今朝も胃がもたれてたので
大正漢方胃腸薬と抗酸化サプリを
飲んでしばらくしたらむかむかして
吐いてしまいました。
これは飲み合わせが悪かったのでしょうね。
ご指導よろしくお願いします。

朝はいつも果物、昼夜は豆類や海藻類で
蛋白質やカルシウムを摂っています。
お肉は3年近く食べていません。
添加物の入ったものもなるべく避けています。
健康を考えて生活しています。
返信する
そら様へ (薬屋のおやじ)
2015-11-05 08:50:26
「今朝も胃がもたれてたので」ということは、昨晩の食事が消化不良でまだ胃に残っていたのでしょうかね。
「大正漢方胃腸薬と抗酸化サプリを飲んでしばらくしたらむかむかして吐いてしまいました。」ということは、胃腸薬やサプリが錠剤で胃壁を刺激し、拒否反応を示したのでしょう。
あなたの胃はほとほと弱っていて食べ物を受け付けない状態にあります。
しばらく食事やサプリを抜くしかありません。今日1日断食してみませんか。
昼も晩も、少々熱い白湯をちびちび飲み、梅干(1回に小さめのもの1個)を少しずつよく噛んで塩分補給(胃を元気にするにはある程度の塩分が必要)なさるといいでしょう。
朝の果物は胃を冷やしますから、胃弱の状態では胃が冷えて震え上がり、回復が遅れます。今後は、朝食は白湯に梅干に切り替えてください。
明日の昼は、ご飯を1口何十回も噛み、どろどろにして胃に入れてあげてください。それもごく小食で。
とにかく、しばらくの間、胃を休ませてあげることです。
返信する
ありがとうございます (そら)
2015-11-06 16:35:01
胃が弱ってたのですね。
蛋白質が足りないと思って半年ぶりに
前夜卵おじやを食べたのも原因かと
思います。
丁寧なご指導を頂きありがとうございます。
その通りしてみます。
これからもよろしくお願いいたします。
返信する
御岳百草丸 (ゆう)
2016-03-21 17:17:11
こんにちは、検索でヒットしてここに来ました。
私は胃の不調ありの低血糖、リーキーガットという腸の症候群持ちの者です。
低血糖の改善の為にタンパク質を多めにとる生活をしばらく続けているのですが、胃の不調や肝臓にも負担が掛かっているのが自分でもわかります。食べるのをやめたら低血糖はやってきますし、食べたら胃腸の膨満感や重さがやって来てしまい完全にお手上げ状態な状況です。一応消化の為に塩酸のサプリメント、ベタインHCLというものを使用してるのですが、それも胃の負担になってる気がします。。
胃の保護の為に御岳百草丸を飲んでいるのですが、これは続けて飲んではいけないということですが、何かその他に対処方法ってありませんでしょうか?
萎縮性胃炎になってたらどうしようと不安が頭によぎっています、、。
返信する

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