大分単身赴任日誌

前期高齢者の考えたことを、単身赴任状況だからこそ言えるものとして言ってみます。

「筆界認定に関する検討会」についてー⑤

2020-10-07 14:01:27 | 日記
前回、「筆界認定へ向けてのフローチャート」の最初に「当該筆界についての現地復元性のある資料があるか?ないか?」を置き、「ある」場合にはそのまま「筆界認定」へ、「ない」場合に検討を続ける必要がある、ということを書きました。
フローチャート的に言うと、次に「筆界確認情報があるか?ないか?」が来ます。「筆界確認情報」というものの位置づけはあくまでもこの「2番目」の位置である、ということを確認しておく必要があります。また、この「筆界確認情報」というものは、単に「両土地所有者が合意した」ということだけをもって成立するものなのではなく、あくまでも公図等他の資料との整合性をも確認したうえでの「確認情報」でなければならない、ということも確認しておく必要があります。その確認の上で、これもまた同じように「ある」場合にはそのまま「筆界認定」へ、「ない」場合に検討を続ける必要がある、ということになります。
ここまでが、単一技での「一本」になるもので、これ以外に様々な形での「合わせ技一本」がありえます。
筆界特定制度においては、この「合わせ技」のありかたを次のように規定しています。
「登記記録、地図又は地図に準ずる図面及び登記簿の附属書類の内容、対象土地及び関係土地の地形、地目、面積及び形状並びに工作物、囲障又は境界標の有無その他の状況及びこれらの設置の経緯その他の事情を総合的に考慮して」
というものです。
筆界特定手続の場合は、基本的に紛争性のある場合が想定されているので、このように列挙された多くの要素のすべてを検討して、複数の要素の多様な組み合わせによって「筆界の現地における位置」を特定することになっています。そのために筆界特定に至るまでに「6か月」ほどの期間やいくつかの「手続保障」を必要とする、やや重い手続になっているわけです。
それに対して、通常の表示に関する登記にかかる「筆界認定」については、そこまで複雑なものがあるわけではないものとして考えてもいいでしょう。その整理の仕方について考えてみたいと思います。
上記の不登法143条1項で列挙されているものは、私なりに整理すると、次のようになります。
第一は、当該筆界の性格を判断するための項目です。「登記記録」が示す筆界創設の経緯、「原始筆界」「創設筆界」の別、所有権の変遷等は、言わば「背景情報」として具体的な資料を読み解くありようを示します。
第二は、「地図」「地積測量図」等の図書資料です。これについては、先に述べたように過去において「筆界を定めた」内容が直接的に表示されています。その表示形式がピンポイントで現地に復元しうるものについては今回の時点においてもそのまま「筆界認定」すればいいわけですが、そこまでの現地復元性のないもの、たとえば図解法の14条1項地図、三斜法の地積測量図、更正図由来の公図については、「合わせ技」の一要素としての意味を持つことになります。
第三は、境界標、工作物等の現地地物としての現地資料です。

次の例で考えてみます。



8番の土地を分筆しようとして筆界認定が必要、という想定です。
14条1項地図地域ですが、図解法の復元性の低い地図だとします。
境界標のある場合
K3、K4に境界標があるとします。この場合、その境界標の位置が地図の示す位置と許容誤差範囲内で合致するのであれば、K3-K4を筆界として認定しうるものと考えられます。したがって、この場合「筆界確認情報」は必ずしも必要なく筆界認定をしうる、ということになります。
囲障・工作物のある場合
K5の位置は、ブロック塀の角であり、この位置も地図の示す位置と許容誤差範囲内で合致するのだとすれば、これもまた(K4-K5を)筆界として認定しうる、ということになるでしょう。また、K2-K3は道路との境界であり、道路側溝の敷設があるとすれば、K2の東西方向の位置についてはともかくK2-K3の線としての位置(南北方向の位置)が地図と許容誤差範囲内で一致するのであれば、それとして認定することができるでしょう。
そうすると、8番の土地についての筆界認定としてはK5-K4-K3(-K2)については筆界認定をなしうる、ということになります。残りは、K2-K1(-K5)ということになります。
以上は、「原始筆界」「創設筆界」の違いに関わらずに言えることです。
さらに、このK1、K2には、何の現地地物も存在しないとすると、どのようなことになるのでしょうか?
「原始筆界」「創設筆界」の別が、ここで出てくるのだと思います。
「原始筆界」(古い時代の国調由来の14条1項地図)の場合であれば、ただちにK1、K2の位置を特定するのは困難だということにせざるを得ないのでしょう。K6~K8の境界標の存在や、それにもとづく面積算定とその比較等によってK1、K2の位置を絞り込むことはできる場合があるとしても、やはり一般的にはそれをもってK1、K2の位置をピンポイントで特定する、というのは難しいと言うべきでしょう。
これに対して、たとえばこれが古い時代のものであれ区画整理による「創設筆界」なのであれば、事情は違ってきます。
8番の土地の地積というのは、区画整理の換地処分の際に確定されているものなので、K5-K4-K3(-K2)を前提としたうえで、その面積を確保しうる位置をもってK1、K2の位置を特定することができます(他の検証ももちろん必要ですが)。

以上、非常に単純化したものですが、「筆界確認情報を待つまでもなく筆界認定できる」場合というものを具体的に考える必要がある、というものとして書きました。14条1項地図区域以外(公図地域)でも、三斜の地積測量図の備付のある場合、比較的正確性の高い更正図の備付のある場合で筆界認定できる条件の揃う場合というのも考えることができます。そのような検討を具体的に行い、一定の指針を出していく、ということが、今、求められているのだろうと思います。

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