大分単身赴任日誌

前期高齢者の考えたことを、単身赴任状況だからこそ言えるものとして言ってみます。

読んだ本-「テロリストは日本の『何』を見ているのかー無限テロリズムと日本人」(伊勢崎賢治著:幻冬舎新書)

2016-12-07 18:38:02 | 日記
南スーダンのPKOへの自衛隊派遣部隊に「駆けつけ警護」の任務付与がなされましたが、そのニュースを見るにつけ、軍事的な紛争に対して日本(人)がどのように対処するべきなのか、という問題についての認識・理解が私を含む日本人には足りないように思えます。本書は、そのようなことについて、勉強になる本です。

著者の本は以前にも取り上げたことがありますが、あらためて著者の紹介をしておくと、著者は「国連PKO幹部として東ティモール暫定行政府の県知事を務め・・アフガニスタンでは日本政府代表として武装解除を指揮」した経験のある人です。現在は東京外大の教授をしているそうですが、軍事紛争の現場の経験を持つ数少ない日本人の一人であり、その経験にもとづく指摘には、蒙を啓かれることが多くあります。

著者は、まずはごく一般的なことについて、次のように言いす。
「人間社会には、それがどんなところでも日常生活があります。それが戦時状態であってもです。そして日常生活には必ず『沙汰』が必要なのです。」
「国家による『沙汰』もしくは『法の支配』の”空白”でインサージェンシー(一般に「テロリスト」と呼ばれる武装した反体制分子のことだそうです)が台頭、跋扈するのです。」


それに対して、どう対処するべきか、ということについて、著者は次のように言います。
「国家に忠誠心のある適正な規模の国軍と警察をつくり『法の支配』を広める。これが国民の安全を守り、日常生活の『沙汰』を下す。唯一国家がそれを行うことで国民は安心し、国家に帰依する。」

別の言い方では、「ゲリラに勝つにはどうすればいいか?民衆をこちら側にひきつければ魚(テロリスト)ほ干上がる。このロジックしかありません。成功しようとしまいと。これしかないのです。」とも言われています。

あたりまえのことですが、「民生の安定」がないので紛争が激化しているのに対して、紛争を根本的に収束させるためには「民生の安定」を実現するしかない、ということになります。軍事的な手段で「悪い奴ら」を根絶やしにしてしまおう、ということがうまくいかないことがアフガニスタンやイラクで、そしてシリアで明らかになっているうえで、このごく当たり前のところに立ち返るべきなのでしょう。
そして、その中における「役割分担」ということを考えるべきで、みんながアメリカと同じことをしようとするのではなく、これまでの歴史が形成してきた立場を生かして、最も有効で有意義な貢献をするように努めるべき、ということになるのだと思います。

本書の主題として言われている「テロリスト」に対する問題や、「日米地位協定」をめぐる問題について勉強になったのですが、それ以外のことを言うと、私は、著者の「成功しようとしまいと。これしかない」という言い方(考え方)に感銘を受けました。もちろん、何か物事がうまくいかなかったときに反省をすることは必要なのですが、さまざまなことへの反省をしつつ、最も根本的なところでは揺るぎないものを貫く、ということが必要です。それを強く言い切れるかどうか、実際に貫いて行けるかどうか、ということが(特に尖鋭な紛争に対するときには)必要なのだと感じさせられました。

・・・そういうところからも、今回の「駆けつけ警護の任務付与」というのは、どうなのかな?と思わされもしますが・・・。



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