雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

庭眠る

2016-01-29 08:00:30 | 短詩集
          『 庭眠る 』

     静かなり 大寒の庭
      樹も花も 眠りの最中
       霜に打たれ ゼラニウムの赤 ひときわ映えて


       しずかなり だいかんのにわ
        きもはなも ねむりのさなか
         しもにうたれ ゼラニウムのあか ひときわはえて
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ニワトリと卵

2016-01-20 08:00:52 | 短文集
          『 ニワトリと卵 』

「ところで、ニワトリと卵の話、あれ、どちらが先だったのかな?」
突然、突飛なことを言い出す。いつもの彼である。
気が置けない仲間内の、酒の席である。

「『ニワトリが先か、卵が先か」っていう、あれか?」
と、さっそく反応する奴がいる。
「そうそう、どちらが先かって話、あれ、はっきりした結論出ているんだったかな?」
「ああ、その話は、とっくに決着しているんじゃなかったかな、科学的にね」
「で、どういう結論なんだ?」
「もちろん『卵が先』ってことだよ。もう大分以前に、科学的な証明がなされたんじゃないかな?」
「科学的な証明って、どういったことをしたというんだ?」
「いや、何か実験をしたということではなく、理論的な証明じゃないかな? 進化論などがベースになったのじゃないかな?」

「いや、俺は別の記事を見たことがあるぞ。それほど前のことではなく、まだ四、五年前のことだったと思うよ。イギリスかどこかの、ちゃんとした科学雑誌に発表されたというもので、『ニワトリが先だ』というものだった。もっとも、反論記事もあったらしいが、な」
と、これは別の男である。
「科学的な証明とか何とか云っても、どんなことを根拠にしているのかなあ?」
「遺伝子とか、アミノ酸とか、タンパク質などといったものに基づいてるらしけれど、俺にはよく分からないが、専門家だと科学的な推論が成立するみたいだよ」
「でも、反論もあるんだろ?」
「これも何かで見たことで、頼りない話なんだが、研究者の専門によって結論が違ってくる可能性があるらしい」
「研究者って? 『ニワトリと卵』に関する専門の研究者がいるのか?」
「いや、そんな人はいないだろう。例えば、生物学者と数学者や物理学者とでは考え方は違うみたいだ。宗教学者となれば、また違うかもしれないしね」

「確か、万物すべてを統べる『造物主』といった存在を信じる宗教学者のような人は、『当然ニワトリが先だ』とするらしいことを、これも何かで見た記憶がある」
「でも、仏教となると、「時間の流れは永久無限に輪廻する」といった考え方があるそうで、それによれば、そもそも物の始まりなどないわけで、『ニワトリが先か卵が先か』という命題じたいが無意味ということらしい」
「うーん・・・。要は、様々な立派な意見はあるとしても、本当のところはよく分からないってことかな?」
「まあ、最初のニワトリを誕生させた卵も、その卵を産んだかもしれないニワトリに極めてよく似た別の鳥も、誰も見た人はいないわけだし、いわんや解剖とか何らかの検査が出来たわけではないんだから、まあ、言った者の勝ち、ってところかな?」

「まあ、そういうわけではないんだろうが、『結論が出ている』と断言出来ることでもないような気がするなあ・・・。まあ、これはこれとして、何で急にこんなことが気になりだしたんだ?」
「うん、実は、な。テレビでね、ほら、あの有名なタレント同士の夫妻が離婚話でもめているだろう? 以前はおしどり夫婦と言われていたのに、どういうことからこうなってしまったのか、その最初は何だったのか、その原因を作った発端は男だったのか、女だったのか、って考えた時、突然『ニワトリが先か卵が先か』って話が思い浮かんだんだ」
「なるほどねえ・・・。なかなかご立派な探求心だねぇ」
「ほんとだよ。まことに哲学的な思考だと感心するよ。でも、他人さんのこともいいが、自分の細君との隙間風の原因を探ることの方が大事なんじゃないか? 原因を生み出したのはどちらが先かって? お互いにね」

こうなると、ニワトリも卵もどこかへ行ってしまって、また、酒の量が増えてしまいそうだ。

     ☆   ☆   ☆


 
 


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有間皇子

2016-01-17 08:00:53 | 短詩集
          『 有間皇子 』

     古の 哀しき皇子よ
      時流れ 御魂は如何に
       松ヶ枝は 汐風受けて ただ啼くばかり


       いにしえの かなしきみこよ
        ときながれ みたまはいかに
         まつがえは しおかぜうけて ただなくばかり
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未確認物体

2016-01-08 08:00:18 | 短文集
          『 未確認物体 』

「やっぱり、UFOって、あると思うな」
と、突然一人が言い出した。
いつもの、好き勝手を言い合っている集まりである。

「先日、テレビでやっているのを見ていたが、UFOを見た人って、結構いるんだよね。それも、かなり著名な人物だったり、科学者やパイロットなども少なくなく、単なる見間違いだなんてことで、この問題を切り捨ててしまうのは間違っていると思うなァ」
「ああ、その番組なら俺も見たよ。でも、ゲストや専門家などは、大方が否定していたよ」
「そんなことはない。写真などでも、紛らわしものもあるが、ぜったいUFOだという声も強かったよ」
「一部の人だろ?」
「そりゃあ仕方がないよ。UFOなんて、誰もが見ているわけではなく、ごく限られた人しか遭遇していないんだから、否定する人が多くなるのは当然だよ。何事につけ、自分の目で見ないことには、なかなか信用できないものだからなァ」

「何だか、見てきたようなことを言うなあ」
「ああ、俺は見たことあるよ、UFO」
「テレビでだろう?」
「違う、違う。ちゃんとこの目で見たんだ」
「夢の話じゃないんだろうな」
「夢なもんか。俺だけじゃなく、その時には友達も二人いたので、三人ともしっかりと見たんだ」
「宇宙人とでも話したというんじゃないだろうな」

「いや、それはない・・・。大分前のことだけれど、夜の十時頃だったかな、友達の田舎に遊びに行っていた時、涼みがてら外を歩いたんだが、突然、頭上の辺りから東の空に光る物体が飛んで行ったんだ」
「流れ星じゃないのか?」
「いやいや、そんな小さなものではない。強く光っていて、全体の姿はよく見えなかったが、感じとしては、満月がすごいスピードで飛んで行ったようだった。皆で後を追いかけたが、山の端の辺りで消えてしまった。その時は、飛行機か何かが墜落したのではないかと思ったが、燃え上がる様子はなく、『不思議だなあ、不思議だなあ』で終わってしまったんだ」
「で、それがUFOだって言うのか?」
「まあ、正しくはよく分からないが、『未確認物体』であることは確かだと思う。それに、その目撃は、俺たちだけではなく、翌日だか翌々日だかの新聞にも載っていて、多くの目撃情報があったらしい。それでも、結局は何だったのか分からず、専門家だとかいう人の意見として、『大型の流れ星だったのではないか』『サーチライトか何かを見間違えたのではないか』『飛行機か人工衛星ではなかったのか』などといったコメントを掲載していたよ。冗談じゃないよ。見ていないから仕方がないとしても、よくも恥ずかしげもなくあんなコメントを載せたものだと思うよ」

「まあ、まあ・・・。俺に怒っても仕方がないよ。ただ、お前の話を聞いただけで、『UFOって確かにある』と思えっていうのも無理だと思うよ」
「まあ、ぞうだろうけど・・・」
「しかし、『未確認物体』という物は、きっとあるんだろうねぇ」
と、これは別の男。
「いわゆるUFOと言われるものに限らず、『未確認物体』ってあると思う。科学が万能であるわけがないし、わずかな経験をもとに専門家面している人もいるが、宇宙のことまでとなれば、分からないことの方が多いと思うよ」

「その通りだよ。彼が見たのも、間違いなく『未確認物体』だよ。それに、よく分からない物を『未確認物体』とするならば、周りにもいくらでもいるよ。手近な所では、うちのカミさんなんか、その代表だろうなあ・・・」
この発言で、話題はどんどん横にそれていく。
まあ、どちらにしても、他愛もない話ではある。

     ☆   ☆   ☆
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ささやかな願い

2016-01-05 08:00:27 | 短詩集
          『 ささやかな願い 』

     あらたまの 年穏やかに
      ささやかな 願いを祈る
       金星と 下弦の月が 寄り添う夜明け


       あらたまの としおだやかに
        ささやかな ねがいをいのる
         きんせいと かげんのつきが よりそうよあけ 
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