雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

歴史散策  古代からのメッセージ ( 8 )

2015-04-21 19:17:47 | 歴史散策
          古代からのメッセージ ( 8 )

兄弟の神々の迫害

さて、赤裸の兎にいたずらをした兄弟の神々は、我こそはとばかりに八上比売(ヤカミヒメ)を求めようとしましたが、
「私は、あなた方の申し出は受けません。私は、大国主神に嫁ぎます」
と、答えたのです。

兄弟の神々は怒って、大国主神を殺そうと思い相談し合った。
そして、伯耆国の手間の山の麓に着いた時に、兄弟の神々たちは大国主神に言った。
「赤い猪がこの山にいる。そこで、我々が一緒になって山の上から追い下るので、お前が待ち受けていて捕えよ。もし捕えることが出来なければ、必ずお前を殺すぞ」
と命じて、兄弟の神々たちは、猪に似た大きな石を火で焼いて、真っ赤にして転がし落とした。
そして、その後を兄弟の神々が追いかけて下ってきたので、大国主神はその真っ赤な石を捕まえたところ、たちまちその石に焼き付けられて死んでしまった。

それを知った大国主神の御母の命は泣き悲しんで天上に参り、神産巣日之命(カムムスヒノミコト)に申し上げたところ、すぐにキサカイヒメとウムカイヒメとを遣わして作り生かすようにさせた。
天上より降った二人は、キサカイヒメが石に張り付いた大国主神の身体をこそげ集め、ウムカイヒメが待っていて受け取り、母親の乳を塗ったところ、立派な青年になって歩き出したのである。

この様子を見ていた兄弟の神々は、再び大国主神をだまして山に連れて入り、大きな樹を切り倒して、割れ目にくさびを差しこんで、その割れ目に大国主神を入らせると、くさびをいきなり抜き取って、打ち殺してしまった。
すると、また母親の命が泣きながら探し回って、見つけるとすぐにその木を割いて取り出して生き返らせた。そして、
「お前は、ここにいたらしまいには兄弟の神々に滅ぼされてしまうだろう」
と言って、すぐに木国(キノクニ)の大屋毘古神(オオヤビコノカミ)のもとに人目を避けて行かせた。

しかし、兄弟の神々は大国主神を探し求めて追いつき、弓に矢をつがえて大国主神を引き渡すように求められると、大屋毘古神は大国主神を木の叉からくぐり抜けさせて逃し、「須佐之男命がいらっしゃる根之堅州国(ネノカタスクニ)に向かいなさい。きっと、その大神が取り計らってくれるでしょう」と言って向かわせた。

     ☆   ☆   ☆

根之堅州国

大国主神が須佐之男命のもとに参り着いたところ、その娘である須勢理毘売(スセリビメ)が出てきて、大国主神を見ると、目配せして、結婚した。
須勢理毘売は家に帰って、その父に申し上げた。
「たいへん立派な神がきました」と。
そこで、大神が出てきて大国主神を見て、
「これは芦原色許男命(アシハラシコオノミコト)という者だ」
と仰せられ、すぐに呼び入れて蛇の室に寝させた。
すると、妻となった須勢理毘売は、蛇の領巾(ヒレ・女性が肩にかける薄い布。ここでは、蛇に効力がある領巾という意味か)を夫に授けて、
「蛇が喰おうとしたら、この領巾を三度振って打ち払いなさい」
と教えた。
それで、教えられた通りにしたところ、蛇は自然に静まった。こうして、大国主神は無事に寝ることが出来て室を出た。

また、別の日の夜には、ムカデと蜂の室に入れられた。
するとまた、須勢理毘売が先日と同じようにムカデと蜂の領巾を授けて、同じように教えた。そのお蔭で、大国主神はその室からも無事に出ることが出来た。

また、須佐之男命は鳴鏑(カブラ・鏑矢)を大きな野の中に射こんで、その矢を大国主神に取らせた。
それで、大国主神がその野に入ると、直ちに火で周囲を焼いた。
大国主神が逃げ道が分からないでいたところ、鼠が出てきて、「内はほらほら、外はすぶすぶ」と言った。
それを聞いて、そこを踏んだところ、穴があいて落ち込んでしまい、その中にこもっている間に火はその上を燃えて通り過ぎていった。
そして、その鼠が例の鳴鏑をくわえて持ってきて差し出した。その矢の羽は、その鼠の子らが食べてしまった。

     ☆   ☆   ☆





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