雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

「うちわ」と「うちわもどき」 ・ 小さな小さな物語 ( 678 )

2015-03-16 11:15:31 | 小さな小さな物語 第十二部
政権周辺が何かと慌ただしいようです。
世界的にみれば、新たなといえるようなテロの危機があり、エボラ出血熱という、何とも不気味な病気の拡大が、直接間接に全世界に影響を与えようとしています。ウイルスという、動物とも植物とも分別しがたく、それどころか生命体なのかどうかも完全に判別出来ないような存在体が、人間にとって、侮りがたい存在であることが明らかになりつつあるような状況が到来しているような危惧が感じられます。
そのような世界の状況の中で、比較的安定していると考えられていたわが国の政権が動揺しているようなのです。ただ、その根本ともいえる国会の論争などを見ていますと、世界の危機とはあまりにも次元が違うことにうんざりしてしまいます。

事の発端というわけではないのですが、口火を切ったのは、内閣改造後の新大臣に対する様々な疑惑のようなものの追求といえます。
その中でも、秀逸ともいえるのは、「うちわ」論争ともいいたいような笑ってしまいたいようなやり取りでした。渦中の新大臣は、自分が配布した政策アピールらしい物を書いた「うちわらしいもの」を追及されると、しどろもどろに、「うちわのように見えるが、うちわではない」といった趣旨の答弁を通しました。「南京玉すだれ」を連想するような迷答弁ですが、あれが「うちわ」に見えないのであれば、法の番人の大将であるべき法務大臣どころか、最低限の常識さえ持っているのかどうかと疑問を持ってしまいます。
さらに、国会でこの問題を厳しく追及した女性議員は、この情けない大臣の答弁に得意満面の様子に見えましたが、追及している議員も、同様ともいえそうな「うちわもどき」を配布しているのです。こちらのものには「柄」にあたるものがなく、選挙管理委員会とかの了解を取っていたらしいのですが、これを貰った人の相当高い割合の人が「うちわ」として使用したと考えられます。「うちわ」はだめで「うちわもどき」はOK、あるいは、無防備に配布した人は馬鹿で、悪知恵を働かせて防備した者は正義だとでも言っているようで、追及している者と追及されている者の双方に失望を感じてしまいました。
「いやいや、下手な演芸より楽しませてもらったよ」という声もあるらしいですが、あの国会答弁に要した時間を費用換算すればいくらになるのか、国会は公表すべきだと思うのですが。

また、二人の大臣が辞任した後の後任大臣の一人には、「SMバー」などという、衝撃的な見出しのスキャンダルが表面化してしまいました。
しかし、これも、週刊誌が書く分には、それなりの意味もあるのでしょうが、それを受けて国会の公式の場で騒ぎ立てるのも、「うちわ」と「うちわもどき」の泥仕合に似た感じを受けてしまいました。
秘書が情報活動の流れで利用したと説明されていましたが、国会活動における必要経費にその程度のレベルのものが含まれていることは、別に驚くほどのことでもないと思うのです。
それよりも、私たち一般国民が、「SMバー」という言葉に過剰反応してしまい、一回2万円弱であってもSMバーはけしからんが、一回20万円のクラブや料亭なら許されるというロジックに引っ張り込もうとする計略かもしれない気がするのです。
この際、国会活動費における交際費の上限を、一回当たりの費用をこの「SMバー」の費用以上は認めないと、各政党間で決めてほしいものです。
きっと、この支出を追及している者も含め、多くの議員は反対するのでしょうね。

今回の内閣改造後の大臣辞任劇などの騒動の中で、最も深刻なのは、改造の一番の目玉とも思われる大臣の辞任ではないでしょうか。
大臣を辞めることくらいは、まあ、どうということはありません。有能と伝えられる人物ですからまた再起されるでしょうし、国民にしても、二人や三人大臣が交代したところで、少々無駄な経費が掛かったという程度で済むはずです。
ただ、この議員の伝えられているトラブルは、少々重大な問題を含んでいるようです。大げさに言えば、わが国の選挙制度の大きな問題点を浮かび上がらせる可能性があると思われるのです。
長い伝統と選挙基盤に支えられた地域から誕生する議員は、長期的な成長と重厚な思想を育んでくれる可能性を秘めています。その代償としてというわけではないのでしょうが、国会議員を頂点として、知事や市長や地方議員、さらには町内会の役員までも含めたピラミッドが構築され、そこには利権や金銭が複雑に絡み合うことになりがちです。
一方で、清廉潔白をスローガンにしたり、時の政権の失政を追及して躍り出で来る議員は、ドロドロとした利権とは距離をとっていますが、支持者は移ろいやすく、重厚な人材が育ちにくい傾向を持っているように思われます。
政治には金がかかり、選挙民は常に何かを求めています。金や利権と無縁な政治など現実的には不可能なのかもしれません。
しかし、だからこそ、そこには一定のルールを決めて守っていくことが知恵ということなのでしょう。
この議員の真相報告に大いに期待しています。

( 2014.10.29 )

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