雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

五節の舞姫

2019-12-12 08:34:53 | 麗しの枕草子物語

     麗しの枕草子物語  
          五節の舞姫
 

中宮様が、五節の舞姫をお出しになるということで、付き添う女房は十二人ということになりました。
普通は八人くらいですし、女御や御息所の女房を付き添わせることはよろしくないと聞いておりましたが、中宮様は自らのお付きの女房十人に、女院と淑景舎からそれぞれ一人お出しになることになりました。

その当日、舞姫や女房ばかりでなく、下仕えや童女にいたるまで、山藍で摺り染めた唐衣や汗衫をお着せになりました。
この趣向は、中宮様のお側の女房さえも知らされておらず、もちろん外部の人たちには秘密にしておりました。
それぞれが美しく装束をつけ終わり、あたりが暗くなってきました頃に、かの青摺りの御衣を持ってこさせて、全員に与えられました。
紅い紐を美しくあしらい、光沢のある白い衣、模様はすべて手描きされています。ひときわすばらしい唐衣などを身に付けた後、その上に全員がそろって青摺りの御衣を羽織ったのですから、それはそれはすばらしいものでございました。中でも、童女の姿は、地味なはずの青摺りが、かえって清純なあでやかさを引き立てています。

舞姫は、のちに馬の中将と呼ばれる御方にて、この時十二歳。それはそれは美しいお方でございます。そのあとに続くお付きの女房は、何と十二人。さらに、下仕えの者たち、童女までが青摺りの衣を身につけたさまは、居並ぶ上達部、殿上人たちことごとくが驚きと称賛の声を上げられたものでした。
中宮様の、いつにもました御腐心は、見事花開いたと申せましょう。


(第八十五段 宮の、五節出でさせたまふに、より)


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