雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

天空に舞う   第十六回

2010-09-12 10:27:52 | 天空に舞う

   第二章  それぞれの旅立ち  ( 10 )


早知子が東京へ行きたいと言って来た時から、啓介には予感があった。
自分の欲望を抑えきれないような予感であり、一泊の予定である以上早知子も拒まないだろうという気持ちもあった。ただ、まだ二年以上ある学生生活をどのように過ごせばよいのかが、決断を鈍らせていた。


啓介に僅かな逡巡はあったが、早知子をベッドの中央に移すと、その胸に手を当てた。確かな感触を確認し少し力を加えた。
布越しに早知子の体温が感じられ、啓介の心臓は高鳴った。つい半月前、直接触れた時の感触がはっきりと思いだされた。
早知子は目を閉じ、片手で啓介のシャツを掴んでいた。


上半身を起こした啓介は、両手でボタンをはずし左右に開いた。ブラウスの下はブラジャーだけで、その白さが痛々しげに見えた。
愛おしさと痛々しさが入り混じったような感覚が啓介を襲い、二人の将来のことも頭に浮かんだ。


しかし、それは一瞬のことで、右手はブラジャーを押し上げるようにして、早知子の膨らみを直に掴んだ。
早知子は、啓介の手と共に自分の胸を抱くようにして、はにかむように微笑んだ。そして、戸惑いながら模索する啓介の手と、それを押さえていた早知子の手が助け合うようにして、ブラジャーが外された。


啓介の目に豊かな二つの膨らみが輝いて見えたが、早知子は素早く両手で覆った。
啓介は早知子の手を剥がそうとしたがその手の力は強く、数度試みても剥がすことができなかった。


啓介は諦め、手を早知子の頬に当て、唇にくちづけした。
唇が離れると、早知子は啓介の顔をじっと見つめ、「ごめんなさい」とかすれた声で謝り、両手を離した。
二つの膨らみが露わになり、微かに震えていた。


啓介は大切なものを扱うように両手で包み込んだ。柔らかな感触が啓介の全身を駆け巡り、理性と欲望がせめぎ合っていた。
その葛藤は、男としての欲望と純粋に独占したいという願望とが重なりあったものに、早知子の本当の気持ちに対する配慮も加わっていた。


しかし、啓介の気持ちの葛藤はごく僅かな時間で、次の行動に移っていた。手が早知子のスカートに移り、さらにその奥に進もうとした時、早知子の呼ぶ声が聞こえた。
やはり、かすれたような声だった。そして、その声が啓介の理性を呼び戻した。
啓介は手を引き、息を整えるようにして、早知子の顔を覗き込んだ。


「キスして・・・」
早知子が、泣き出しそうな声で言った。


「ごめん。辛かったんだ・・・」
「そうじゃないの。キスしてほしいの・・・」


啓介は早知子の上半身に被さるようにして、唇を合わせた。早知子の胸の膨らみが、自分の薄いシャツを通して感じられ、鼓動が伝わってきた。
唇を離し少し体を浮かせ、ふたたび乳房の片方に手を当てた。早知子が辛がっていないか確かめながら、少し力を加えた。


「すごく不安なの・・・。だから、わたしを啓介さんのものにして…」
「無理しなくてもいいよ。無理しなくても、早っちゃんは、ぼくのものだよ」


「お願い。いますぐ、啓介さんのものにして…。そして、ずっと一緒に居たいの」
「ずっと一緒だよ、ぼくたちは。いまは離れているけれど、しばらくの辛抱だよ。早っちゃんは、ぼくとずっと一緒だよ」


「嬉しいわ・・・。ほんとうに、ずっと一緒よね」
「そうだよ、できるだけ早く一緒に暮らすんだ。そして、死ぬまで、ずっと一緒だよ」


早知子は、「ありがとう」と言いながら体を動かし起きようとした。自力だけでは動ききれず、啓介に助けられるようにして半身を起こすと、スカートを脱いだ。背中の下に残っている衣服を横に除け、さらに最後のものも脱ごうとした。


「早っちゃん、無理しなくていいんだ」
啓介は早知子の剥き出しの上半身を抱きしめて言った。


「お願い、啓介さん。どうしても、啓介さんのものになりたいの・・・、手伝って・・・」
下着に手をかけたまま訴える早知子の表情は真剣なもので、悲壮感さえ感じられた。


「ほんとうに、いいの?」
何度も頷く早知子をそっと倒し、早知子の手をはずし自分の手で脱がせにかかった。


ふたたび二人が体を合わせた時には、共に一糸まとわぬ姿になっていた。
互いに手探り状態で確かめあい、躊躇いがちに受け入れようとする早知子は、うわごとのように呟いた。


「嬉しい・・・。一緒よね。ずっと一緒よね。死んだあとでも・・・」
啓介は、早知子の言葉を聞きながら、さらに進んだ。


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