雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

ちょっと一息 ・ 千年の時を超えて

2014-05-06 11:00:34 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
      枕草子  ちょっと一息 


千年の時を超えて

ここ十段ほどは「何々は」の中でも、ごく簡単な内容の章段が続いています。
枕草子の特徴や謎の要因として、全体としての内容の調和のようなものが図られていないこと、それぞれの章段の長さがあまりにも違い過ぎること、その内容も全く千差万別であることなどが挙げられます。
それらについては、古来多くの研究者が様々な意見を述べられていて、一応の理由は結論付けされているようにも思われますが、私は、別の観点から疑問を抱いています。

清少納言は、この膨大な作品を、誰のために書き上げたのかということなのです。
跋文(バツブン・あとがき)などによれば、誰にも見せるつもりのないものが流出してしまったように書かれていますが、必ずしもそんなことはないと思われます。
書いている用紙は、中宮からいただいたものですから、少なくとも一部のものは中宮に見せているはずです。
また、当時は出版などという技術はないわけですから、不特定多数の人を意識して文章を書き上げるという発想もないと思われます。ごく限られた人々、それも内裏を中心とした当時の上流階級の人々に読まれることを意識していたか、後の世のそのクラスの人に読まれることを意識していたのではないかと思われるのです。

しかし、ここ十段ほどにあるような、例えば「歌は・・」とか「指貫は・・」といった内容は、果たして当時の上流階級あるいは知識階級といわれる人々の興味を引くものなのでしょうか。
清少納言ほどの方がそういうことに気がつかないはずがありません。
そうだとすれば、少なくとも、こういった内容の章段は、後世の私たちに平安王朝の風習や、何よりも、中宮定子という素晴らしい女性がいたことを伝えようとしたのではないかと思われてならないのです。

清少納言が文案を思い描く時、千年後の私たちを意識していたと考えるのは、あまりにも突飛過ぎるでしょうか。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 前の記事へ | トップ | 崎は唐崎 »

コメントを投稿

『枕草子』 清少納言さまからの贈り物」カテゴリの最新記事