雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

「平和」を叫ぶのは簡単だが ・ 小さな小さな物語 ( 1152 )

2019-05-30 14:12:31 | 小さな小さな物語 第二十部
天皇として最後の誕生日の会見に、大変な感銘を受けました。 
その内容について云々することは、あまりにも畏れ多いことではありますが、多くのテーマについて懇切丁寧に述べておられ、しかも、時には声を詰まらせられて、感情を抑えきれないようなお姿には、テレビを通してのことですが、見させていただいている私などでも、次々と光景が浮かんできて、大きな感激を受けました。

中でも、『 平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに、心から安堵しています。』というお言葉には、強い衝撃を受けました。
平成という時代が検証されるのは、もっと先になってからであるべきだとは思うのですが、自然災害が多く発生しており、社会を揺るがすような犯罪も幾つかありました。近隣諸国との軋轢も、私などが承知しているよりはるかに深刻な場面も数多くあったのではないでしょうか。自衛隊の海外派遣などを巡っても、戦乱に巻き込まれる危険と、国際社会の一員として責任を果たすこととの、厳しいせめぎ合いがあったはずです。
そうした中で、わが国は、平成という30年にわたる期間を、戦争のない時代として凌ぎ切ったのです。
天皇のお言葉に、限りない重さを感じるのです。

「平和」について語る人は大勢います。声高に叫ぶ人も少なくありません。
しかし、「平成が戦争のない時代」であれと、真剣に願い、祈り、行動した人は、わが国にどれほどの人がいるのでしょうか。
もちろん、戦争を願う人など、わが国では極めて少数派だと信じたいのですが、主義主張や、経済的あるいは精神的な利益のために行動することが、私たちの人生観の中核を成すようになってしまっているのではないでしょうか。
つまり、わが国が戦争状態に入ることなど思考の中に含まれておらず、時々平和について叫ぶ程度で平和は保てるものと考えているのではないでしょうか。

第二次世界大戦において壊滅的な敗北を喫したわが国。その時、今上天皇は「敗戦国の皇太子」であったわけです。それがどういうお立ち場であるかを私たちの誰もがうかがい知ることは不可能でしょうが、「平和を懸命に祈る」天皇を私たち国民は戴くことが出来ていたことを、率直に感謝すべきだと思うのです。
そして、その祈りに対して私たちは何ができるのか。残念ながら私には見えないのですが、「平和平和と叫ぶだけでは保てるものではない」ことだけは確かなような気がしています。

( 2018.12.25 )

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