雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

御曹司の行く末

2017-01-20 08:17:42 | 麗しの枕草子物語
          麗しの枕草子物語 

               御曹司の行く末

その御曹司は、早くに母親が亡くなり、父親一人となってしまわれました。
父親は、残された子をずいぶん可愛がりはしますが、気を使う後添えがお出来になられた後は、自分の家にも入れさせず、装束などのお世話は、乳母や亡くなられた奥方の身内の方などに頼んでさせています。

御曹司は、西・東の対とか客殿なども立派に備えられていて、屏風や障子の絵も見事なものが設えられている御屋敷に、別居されています。
殿上人として出仕されておられますが、その振る舞いやお働きは、「申し分がない」と人々に噂され、天皇もお気に入りで、御遊びのお相手に思し召しなのですが、それでも、いつも何か物足りなく、不満で、世間が面白くないように感じられ、うっぷんを晴らすかのような振る舞いが、女性との浮名となっていたりします。

さる上達部の御屋敷で、この上ないというほど大切にされている妹君が一人あり、その女性にだけは、心の内を見せることが出来、唯一の慰め相手であるらしいのです。
かの御曹司の行く末が、気に掛ってなりません。


(第二百九十五段・男は女親亡くなりて、より)
コメント
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