人生を俯瞰するようになると楽になる。

第23回ヤンシナ落選作 「小さな手」 第七回(ラスト)




第七回(ラスト)


〇駅ビル内にある書店
  店員が店先に新号のパパスキを平積みし
  ている。
  良美は、立ち止り、店員が雑誌を並べる
  姿を眺める。
  そして、店に入らずにその場を立ち去る。

〇スポーツジム内
  スタジオではインストラクターの良美が
  主婦たちと一緒にエアロビをしている。

〇三崎家・玄関(夜)
  良美が玄関を開けると家の中が騒がしい。
  喜びの声と笑い声が聞こえてくる。

〇同・居間
  居間では良経と祖父母が新号のパパスキ
  を前に興奮してはしゃいでいる。
良美「何してるの?」
義文「(興奮して)おお良美。これ見たか!
 一位だぞ一位!お前と良経が一位になった
 んだ!」
良美「(良美は座り、パパスキを手に取り読
 み始める)」
  記事には良美と良経の一位の写真が載っ
  ていて、断りの文章が掲載されている。

〇掲載文
 『この度、写真週刊誌等で騒がれた良美さ
 んのことについてですが、良経君から良美
 さんのことでお話を頂きました。良経君は
 両親を交通事故で亡くし、その妹である良
 美さんが良経君の母親代わりとなって、忙
 しい中、学校行事や授業参観に出席し、自
 慢のお母さんとなって自分を励ましてくれ
 ていると、良経君が話してくれました。パ
 パスキという雑誌は、パパに愛されるママ
 と子供の雑誌です。しかし、良経君にパパ
 はいません。ですが、良美さんという素敵
 なお母さんがいます。ママがいます。ここ
 にパパスキは、良美さんは良経君にとって
 大切なお母さんであるということを確認し
 たため、この度の騒動にぶれることなく、
 良美ママ、良経君親子に頂いた投票数をそ
 のままランキングに反映させることにいた
 しました。そしてまた、そんな良美ママと
 良経君を応援していきたいと思います。も
 し私の判断にご不満があるようでしたら、
 何なりとお申し付けください。責任を取る
 覚悟はできております。編集長、森山理紗
 代』

〇元に戻る・居間
良美「(記事を読み終える)」
義文「さっき、編集長さんからも電話があっ
 てな、編集部にも応援の電話がかかってき
 ているそうだ」
良経「(良美を前に少し緊張している)」
義文「良かったな良美。良経に感謝しろよ」
良美「(素直に受け止められず)どうせ、学
 校でいじめられるからでしょ(と言って机
 に雑誌を投げる。すると義文が間髪いれず
 に良美の頬を叩く)」
義文「(怒りをあらわに)バカヤロ!良経は、
 お前のことを思ってやったんだ!母親代わ
 りをしているお前がいじめられているのが
 辛くてやったんだよ!そんなこともわから
 ないのか!」
良美「(叩かれた頬に手をあてている)」
義文「お前は、母親として自覚が足りないん
 だ!」
良美「だって、私、子供なんて産んでないも
 ん!」
義文「この野郎!」
良美「なによ!」
美代子「(制するように)お父さん!良美も」
良経「(ただただ俯いている)」
  良美はそんな良経を見て、立ち上がり逃
  げるように自室へ行く。

〇同・良美の部屋
  良美は襖を閉め、そして、襖に寄りかか
  る。
良美「(苦悶の表情を浮かべ)無茶言わない
 でよ。自覚なんてあるわけないじゃない。
 良経は姉さんの子供なんだから!」

〇寝静まる三崎家(深夜)

〇同・良経の部屋
  寝息を立てて眠っている良経。
  毛布を蹴飛ばし、寝相が良くない。
  良美はそっと良経の部屋に入る。
  良経の寝顔を見る。
  布団から放り出された良経の小さな手に
  触れる。
良美「(良経の手をいじり)あなたのママじ
 ゃないのに、あなたは私に手を差し伸べて
 くれたの?過去の不運を嘆き、溺れること
 しか出来ない私に手を差し伸べてくれるの?
 (良経の手の平を広げて)こんな小さな手
 なのに、私を救ってくれるの?」
  良美は、良経の寝顔を見て頬を触る。
良美「私はそれに、どう答えればいいの?」
  良美は、良経の毛布を直す。

〇三崎家の外観(朝)

〇同・居間
  良経の表情は暗く、柔道着をカバンに入
  れている。
義文「良経。今日試合に勝ったら考えても良
 い」
良経「ええ、勝ったら…」
義文「せめて一勝ぐらいしないと。負けっ放
 しではダメだ。天国にいるパパもママも喜
 ばないぞ」
良経「…」
義文「一勝したら、やめるなり続けるなり良
 経の好きにしていいぞ」
良経「(困った顔をする)」
  そこへ、良美が起きてやってくる。
  良経は、良美と目が合うと目そらす。
良経「(逃げるように)行ってきます」
義文「おじいちゃんたちも後から行くからな」
〇同・台所
  良美は美代子のところに行って、テーブ
  ルに置いてある漬け物をつまみ食いして、
良美「今日、なんかあるの?」
美代子「体育館で柔道の試合があるのよ。あ
 なたも見に来る」
良美「(漬け物を食べる)」

〇総合体育館・武道場
  小学生の柔道大会が開かれている。
  子供たちの気合いの入った声が聞こえる。
  良経は、道場の隅で自分の番を待ってい
  る。
  祖父母も応援にきている。
  良美は武道場に入ってくる。
  試合が終わり、良経が畳にあがる。
  相手は女子で良経より背も高い。
  一礼してかけ声をあげて組み始める。
  かけ声は女子の方が大きい。
  組み手争いも女子は本格的で、掴むと良
  経を揺さぶる。
  良経はへっぴり腰になっている。
  女子はかけ声をかけながら弾き手をグイ
  グイ振り回すと、良経は膝から倒れてし
  まう。
義文「全然ダメだな。かけ声からして負けて
 る。(大きな声で)良経、がんばれ!」
  祖父母と離れたところで良美がジッと見
  ている。
  良経はのそのそと立ち上がる。
  しかし、組むとぺっぴり腰になって女子
  に振り回され、場外に吹き飛ばされる。
  もう泣きそうである。
義文「ああ、ダメだな。やっぱ良経には運動
 は向いてないな」
美代子「仕方ありませんよ。文美の子ですも
 の。ちょっと可哀想よ」
義文「そうだな」
  良経は、のろのろと立ち上がろうとする。
  良美が前に出て、
良美「(叫ぶ)良経!もっとシャンとしろ!
 ダラダラするな!」
良経「(良美の方を見る)」
良美「もっと気合い入れろ気合い!気持ちで
 負けるな!」
良経「(唖然と良美を見る)」
良美「私の子なら、(一旦躊躇するも)私の
 子なら勝て、良経!勝て!」
良経「(それを聞いて、良経は唇を噛みしめ、
 真一文字にする。顔に覇気が漲ってくる)」
良美「行け!」
良経「(相手に向かって気合いの入ったかけ
 声を出す)やぁ!」
良美「(満足げな顔をする)」
  良美の後ろ姿。
  どっと歓声が響く。

               END



以上です。

これが、2010年9月作品、
原稿用紙62枚かな。

どうでしたか?
通勤、通学、行列待ち、待ち合わせの暇つぶしになりましたか?
楽しんでいただけたらいいんですけど・・・

これを書いたときは、みや文明の中では素朴な感じだが、一番いいのでは?と思った

しかし、次の作品、2010年12月作品、

「異世界奇譚」

を書いたとき、
「あ、これが一番かな?」
と思った。
好みはあると思いますが・・・

明日から七回に分けてのせます

ということで「小さな手」は、三日天下で終わった

でも、自分の中ではベスト3には入るんじゃないかな・・・

「小さな手」を、モデルでタレントの西山茉希さんにヒロインを演じて欲しかったなぁ


でも、ヤンシナ、一次落ちですから

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