ダメでもともと!

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第19回テレビ朝日新人シナリオ大賞オリジナル配信ドラマ部門「初恋島」 第七回(全七回)

2019-03-18 07:45:20 | テレ朝落選作「初恋島」

「最終回」

 

〇島の波止場(朝)

  波止場から出ていく小型船舶。

  それを見送る老師。

  そこへ丈治、祐介、良樹が現れる。

丈治「どうでした? あの二人は。うまくやっていけそうですか?」

老師「いけるんじゃないか? 男の方の悩みはこれで解消されたわけだし」

丈治「彼女は?」

老師「彼女? 彼女は今朝、石山を作って自分の髪の毛を置いていったよ。何か思うところあったんじゃないのか」

丈治「そうですか……」

老師「さて、今度はいっぺんに三組の初恋夫婦がやってくるぞ」

良樹「大変ですね」

老師「初恋婚の悩みは尽きないということだ」

祐介「大掛かりになりますね」

老師「さぁ、念入りに打ち合わせをしよう」

老師、丈治、祐介、良樹は波止場を後にする。

 

〇海原・小型船舶の船上

ひとみ、ショートヘアになっている。

尚登、申し訳なさそうな目でひとみを見る。

尚登「……ひとみ」

  ひとみ、けだるそうな感じで、

ひとみ「んん?」

尚登「あの、髪切ったんだ」

ひとみ「なんとなく。なんとなく切りたくなったの」

尚登「……」

  ひとみ、尚登を見て、

ひとみ「尚登。私たち今まで以上にうまくやっていけるわ」

と落ち着き払って言う。

尚登「……そうだね」

ひとみ、終始落ち着き払って、全身で海風を浴びている。

  船舶は初恋島を離れていく。

 

〇都心を走る電車

  外は雨が降っている。

 

〇同・車内

  尚登、スーツ姿で座席に座っている。

  電車が止まる。

  老夫婦が車内に入ってきて、尚登の前の座席に座る。

  夫が、妻から傘を取って、自分の傘と妻の傘を一緒に持つ。

  尚登、老夫婦をじっと見ている。

尚登(心の声)「この二人。初恋相手なのかな。……夫婦って血のつながってるわけではない。愛とか信頼とかそういういうものでしか繋がれない……」

  寄り添って座っている老夫婦。

 

〇オフィスフロア内

  尚登、濡れたスーツを脱ぎ、自分のデスクにつく。

  美香、尚登のデスクにやってくる。

美香「お疲れ様です」

尚登「……」

美香「指のけが、治りました?」

尚登「治ったと思うよ」

  美香、尚登のけがをした左手薬指を握る。

  尚登、静かに美香を見る。

  美香、尚登に顔を近づけ、

美香「これ邪魔。外していい?」

  と甘くささやき、結婚指輪を外そうとする。

  尚登、美香の手を掴み、

尚登「ごめん。愛してるんだ」

  美香、尚登に微笑み、そして、自分の席に戻る。

  尚登、指輪をしっかりはめる。

 

〇マンションの外観(夜)

 

〇同・ダイニングキッチン

  尚登とひとみ、向かい合って食事をしている。

尚登(心の声)「初恋しか知らない妻が重いと思っていた。しかし、それは違う。たった一つの恋しか知らないとかそういう問題ではない。これはモラルの問題だ」

 

〇(回想)美香の映像

  美香のはだけたシャツの間から見える胸元。

  美香の小悪魔っぽく微笑む顔。

尚登(心の声)「僕は、自分の都合のいいよう、履き違えていただけだ」

 

〇(元に戻る)ダイニングキッチン

  尚登、黙々と食べているひとみを見て、

尚登(心の声)「僕はとんでもないことをしてしまった。彼女は変わってしまったかもしれない」

  ひとみ、黙々と食べる。

尚登「ひとみ」

  ひとみ、尚登を見る。

尚登「覚えてる? はじめてのデートで行ったあの水族館」

ひとみ「……覚えてるよ。それが何?」

尚登「行かないか?」

ひとみ「え!? どうしたの、急に?」

尚登「いや、嫌ならいいんだ」

  ひとみ、微笑み、

ひとみ「別に嫌じゃないけど」

尚登「なら次の休みに行こう」

  尚登、微笑む。

 

〇水族館内

  ひとみ、尚登の前を歩く。

  尚登、ひとみの後姿を見て、

尚登(心の声)「少し遠回りしたかもしれない。でも遠回りしたからこそはっきり分かった。彼女は初恋の人にして僕にとって理想の女性だ」

 

〇同・トンネル水槽内

  ひとみ、頭上を泳ぐ魚を見上げる。

  尚登、ひとみの横顔をそっと見る。

尚登(心の声)「もう迷うことは、ない」

  ひとみ、頭上を泳ぐ魚を見上げている。

 

              〈終わり〉

 

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