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第19回テレビ朝日新人シナリオ大賞テレビドラマ部門「あの頃の僕を探してくれ」 第五回(全七回)

2019-03-09 07:38:14 | テレ朝落選作「あの頃の僕を探してくれ」

「第五回」

 

〇喫茶店内(昼)

女性Aの声「社長。社長に会いたいという方から電話です。なんでも亜希さんのご家族の方とか」

  学、喫茶店に入っていき、席に向かう。

  浩司、一人、テーブル席に座り珈琲を飲んでいる。

  浩司、学を見るなり手で合図する。

学「中島さんですか? 初めまして、深見学です」

  浩司、愛想よく、

浩司「いやいや。さ、どうぞ、どうぞ」

  学、腰かける。

浩司「うちの女房が大変お世話になってるみたいで。一体どんな人なのか、ぜひ、お会いしたいと思いまして」

  浩司、鋭い目で学を見てにやける。

学「……」

浩司「はぁ、その若さで社長ですか! 凄いですね。……でも、あまり馴れ馴れしく人の女房に手を出すのはいかがなものか? 別居してても俺の女だから」

  浩司、にやける。

学「……」

浩司「でも、話次第では、やぶさかではない」

学「……」

浩司「いろいろ俺のことも調べがついてるんでしょ?」

学「……」

浩司「俺もネットで多少はあんたのこと、調べたんだ」

  浩司、ニヤつく。

学「……」

浩司「どうだ。今後のことについて二人で話さないか?」

学「……」

浩司「五百万で亜希と別れる。そして、もう五百万上乗せで娘の親権も亜希にやる。それともあんたにやるといった方がいいのかな。合わせて一千万。悪い話じゃないだろ。それで亜希はあんたのものになるんだから。後はあんたが好きなようにすればいい。抱きたきゃいくらでも抱けばいい」

  浩司、にやつく。

学「……」

浩司「先日、あんたと女房と美咲が一緒にいるの、見たよ。仲のいい家族に見えたよ。実に微笑ましいい」

  浩司、微笑む。

学「いや、あれは」

  浩司、学の言葉を遮るように右手を上げて、

浩司「いや、いいんだ。ともてよかった。今日は亜希と美咲の今後のことについてあんたと相談したかっただけだ。まぁ、もろもろ前向きに考えといてくれないか?」

  浩司、ニヤつく。

学「……」

 

〇オフィスビルの外観

  浩司、一人、ビルを見上げて、

浩司「離婚していなかったことが金をもたらすのか。人間、何が金になるかわからんな」

  浩司、ほくそ笑む。

 

〇ファミレス店内(夜)

  亜希、神妙な面持ち。

 

〇(回想)オフィスフロア

  女性Aと亜希が立ち話をしている。

女性A「社長なら、さきほど亜希さんのご家族の方に会いに行きましたよ」

 

〇(元に戻る)ファミレス店内

  亜希と浩司がいるテーブルの横を二人組の女子高生が通る。

  一人の女子高生が、ふと振り返って亜希を見る。

  浩司、イカゲソをつまみにビールを飲んでいる。

浩司「……だから、離婚がうまく進むように話しただけだよ。俺と別れたいんだろ?」

亜希「深見君は関係ないでしょ!」

浩司「そんなことはない。そんなこといっちゃ、彼に失礼だよ」

  浩司、にやける。

亜希「あなたが判を押してくれればそれでいいのよ!」

浩司「いや、そんな簡単なことじゃない。俺とお前の間には色々と話し合わなければいけないことが多々ある。こうやって何度、会っていても結局堂々巡りだ」

亜希「私とあなたの間に問題なんて何もないわ!」

浩司「ほら。それじゃ何一つ、話なんて進みはしない。しかし、今、それを一気に解決してくれそうな奴が現れたんだ。俺はただそいつに俺たちの仲介役になってもらいたいだけだ」

亜希「仲介って何よ! どうせよからぬこと、考えてるんでしょ!」

  浩司、苦笑を浮かべ、

浩司「そんなことはないぞ。お前にとっても有意義なことだぞ」

亜希「何が有意義よ!」

 

〇同・ファミレスの外(夜)

  美咲、自転車でファミレスにやってくる。

スマホの女子高生の声

女子高生の声「美咲のママ、男の人とファミレスにいたよ」

  美咲、自転車を止める。

美咲(心の声)「社長さんがママに会いに来ているのかな」

  美咲、微笑みながらファミレスの中に入ってくる。

 

〇同・ファミレス店内

  美咲、店内に入り、亜希を探す。

  すると亜希が浩司といるところを目撃して動きが止まる。

  美咲、二人の雰囲気が険悪なことを悟り、隠れるように空いてる席に座る。

美咲の表情が曇る。

 

〇オフィスビルの外観

 

〇同・オフィスフロア

  亜希、学を見る。

  学、デスクに座っている。

  亜希、オフィスフロアを出る。

 

〇同・オフィスフロア

  学のスマホに電話がかかってくる。

学「はい、もしもし、深見です」

亜希の声「深見君。今大丈夫?」

学「大丈夫ですよ」

亜希の声「私の夫が深見君に会いに来たと思うんだけど、あの人の言うことに耳を貸さないで!」

学「……」

亜希の声「ほんといいの! これ以上、深見君に迷惑かけられないから! ほんとお願い! あの人の言うこと、無視して! お願い!」

 

〇同・オフィスの通路

  亜希、人の来ない通路の奥にいる。

そして、スマホの電話を切る。

 

〇同・オフィスフロア

  学、立ち上がって亜希を探すようにフロアを見渡す。

  しばらくすると亜希がフロアに入ってくる。

  亜希、学と目が合うも目を逸らす。

  学、亜希のもとへ行こうとすると菊池綾子(33)が傍に来る。

綾子「社長。ちょっといいですか?」

学「……」

  離れた席から江藤晃(33)が学と綾子を見ている。

 

〇同・応接室

綾子「ほんとに私を新会社の社長にするつもりですか?」

学「そうだよ。菊池さんに社長になってもらうために引き抜いたんだから」

綾子「しかし、それを面白くないと思っている方もいると思います」

学「江藤さんのこと?」

綾子「はい」

学「あの人はダメだ」

 

〇(回想)オフィスフロア

学の声「あの人は自分の好き嫌いで物事の良し悪しを決める。だから、自分に媚びうる人しか集まらない。そんな人が社長になったら社員の士気は下がり、労働意欲を損なうだけだ。いくら会社立ち上げ当初からいるからといってあの人を社長にするつもりはないよ」

  江藤が雨で濡れたコートを着てフロアに現れる。

  それを見た男性社員二人が江藤の傍に行き、低姿勢で濡れたコートとカバンを受け取っている。

 

〇(元に戻る)応接室

  学、江藤と目が合う。

  江藤、目を逸らす。

綾子「……」

学「菊池さんは、そのまま誰とでも分け隔てなく社員と接し、今まで通りいい仕事をしてくれればそれでいい。それに新会社立ち上げはまだ先だし、そのときが来たら僕も全力でサポートする。だからあの人のことは気にしないで」

綾子「わかりました」

 

               つづく

 

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