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第19回テレビ朝日新人シナリオ大賞テレビドラマ部門「あの頃の僕を探してくれ」 第二回(全七回)

2019-03-05 08:09:25 | テレ朝落選作「あの頃の僕を探してくれ」

「第二回」

 

〇高層ビルの外観(夜)

 

〇同・喫茶店

  高層ビル内にある店舗。

  落ち着いた感じの喫茶店。

  亜希、一人座っている。

  そこへ、学がやってくる。

学「待った?」

亜希「いえ」

学「ごはん、まだだよね」

亜希「ええ」

学「じゃ、これから夕食食べながら、ゆっくり話そうか」

学、テーブルに置いてあるオーダー表を持ってレジに向かう。

 

〇同・割烹料理店内の個室

学と亜希の二人きり。

学「個室の方がゆっくり話が出来る。それに大塚さんが聞きたいことは、僕と大塚さんだけの内緒にして欲しいから」

亜希「……」

    ×    ×    ×

  学と亜希、料理を食べている。

  亜希、どこか上の空。

  学、箸を止め、

学「やっぱり気になる。お給料のこと?」

亜希、顔をあげて、学を見て、

亜希「ええ」

学「僕も気になってたんだ。大塚さんに雑用全般やらせて。ほんとは嫌なんじゃないかって」

亜希「そんなことない。みんな良くしてくれるし、わからないことあれば丁寧に教えてくれる。それに私、中学のとき、水泳部のマネージャーだったから雑用は私にあってる。だから今の仕事で十分満足」

学「なら、いいんだけど」

亜希「へんに気遣わないで。お給料も給与明細に書かれた額で十分やっていけるから。住まいは実家でタダ同然みたいなもんだから」

亜希、微笑む。

学「あれは、僕が勝手にそうさせてもらってるんだ」

亜希「なんで?」

学「(困惑気味に)なんでと言われると、何とも答えにくいんだけど、一つは、昔のよしみということもある。それに生活もいろいろ大変なんじゃないかっていう思いもある。けど、何より自分がそうしたいんだ。それじゃダメかな?」

亜希、どこか合点がいかない表情。

亜希「でも、他の人と同じように働いて、私だけ特別扱いされるのはちょっと。しかも新米だし」

学「だから、このことは内緒にして欲しいんだ。僕と大塚さん、二人だけの秘密。構わないでしょ」

  亜希、学の真意がわからない顔をする。

  学、手を合わせて懇願し、

学「お願い、俺の好きなようにさせて。せめてそうすることで俺は満足感が得られるんだ。俺も安心して働ける。お願い」

亜希、わけがわからない顔をしている。

亜希「……いいの?」

学「いいんだ。それでいいんだ」

亜希「なんか、他のみんなには悪いけど……。でも、私もちょっと助かるかな。私って案外げんきん」

亜希、微笑む。

学「げんきんでいいよ。何かあったら、大塚さんには俺を頼って欲しい」

亜希「いや、もう頼ってるから。ほんと助かってる」

学「……」

亜希、学から目を逸らし下を向く。

学、亜希の姿を見る。

学「ね、これからも、こうやって、たまに二人で食事しよう」

亜希、顔をあげる

学「まずい?」

亜希「そんなことないけど。深見君の方こそ、仕事、忙しくない」

学「夕食ぐらいゆっくり食べさせてよ。それにこうして大塚さんと一緒にいるとどこか和むんだよね。仕事のことも忘れて、何かあの頃の童心に返れるような気がして。だからいいでしょ?」

  亜希、一瞬躊躇して、

亜希「童心って……。ほんと、私でいいの?」

学「大塚さんがいいんだ」

亜希、クスッと笑い、

亜希「こんな子持ちのおばさんと」

学「同い年だよ」

亜希、微笑む。

学「じゃぁ、いいんだね」

亜希、微笑みながら小さく頷く。

学「ありがとう。ほんと、嬉しいよ」

亜希「でも、やっぱり人って、変わるものね。だって、あの頃の深見君は、こんな積極的な人じゃなかったような気がする」

学「あの頃と比べたら、俺は変わったと思う」

亜希「それは、社長になったから?」

学「いや、もっと昔かな」

亜希「もっと昔?」

学「人には何か変わらなくちゃいけないきっかけみたいなものがある」

亜希「どんなきっかけ?」

学、亜希をチラリと見る。

亜希、学を見ている。

学「それは言えないな」

亜希「何それ。どうして言えないの?」

学「(照れながら)恥ずかしいよ」

亜希「そう聞くと余計聞きたいな」

学「いくら大塚さんでも言えないな」

亜希「へぇ、なんなのか知りたい」

  亜希、料理に箸をつける。

  学、亜希を見て、

学(心の声)「俺を積極的にしたのは君なんだ。君のことが好きになって、そして、好きだと言えなかったあの苦い思いが俺を変えたんだ」

 

 

               つづく

 

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