ダメでもともと!

面白いドラマを書いて、「一声」かけていただく。だめでもともと。

第23回ヤンシナ落選作 「寂しがりやのドール」 第七回

2011-08-09 07:55:35 | 第23回ヤンシナ「寂しがりやのドール」


第七回(ラスト)



〇雑居ビル・会員制BAR(夜)
  ドアには「CLOSE」の札がぶら下が
  っている。

〇同・店内
  高藤孝司(28)が勇次と美紀と香織とカ
  ウンターで話しをしている。
孝司「顧客リストは手に入らなかったけど、
 どうやら最新型のドールの写真はもってき
 たよ」
  ドールの写真を回し見る。 
勇次「(写真を渡され)これが最新型か。全
 くドール研究所のアンドロイドは完璧だな」
孝司「それに可愛い。男が骨抜きになるのも
 ムリないな(笑う)」
勇次「これなら俺もドールの一体ぐらい欲し
 くなるよ(笑う)」
香織「何言ってるの!(勇次から写真をもぎ
 取り、写真を見る)ほんと、悔しいけど可
 愛い(苦笑い)」
美紀「(香織から写真を渡されて)…私、こ
 のドールのこと知ってる」
一同「(美紀を見る)」
美紀「このドールが何処にいるか知ってるわ」
  写真にのり子が写っている。

〇マンションへの帰り道
  買い物袋をもって歩いているのり子。
  のり子は突然背後から声をかけられる。
孝司「すみません。ドール研究所のものです」
のり子「(振り返る)?」
  するとのり子の傍にワゴンが止まる。
  そしてのり子は孝司にワゴンの中に押し
  込まれる。
のり子「え、何!?」
孝司「早く目隠しをしろ!録画されるぞ!」
  のり子は目隠しをされる。
  ワゴンは走り去る。

〇マンションの部屋(夜)
  治が帰ってきて部屋の明かりをつける。
  治はのり子がいないので、のり子を探す。
治「のり子」
  時計の針は22時を差している。

〇紗世子の教授室(夜)
  携帯電話がなる。
紗世子「もしもし。黒川さん。どうしたの?」

〇マンションの部屋(夜)
治「(携帯で)のり子がいません。そっちに
 いませんか?」

〇紗世子の教授室(夜)
紗世子「いえ、来てないわよ」

〇マンションの部屋(夜)
治「のり子と連絡が取れないんです」

〇紗世子の教授室
  紗世子の表情が段々険しくなる。
紗世子「(携帯を遠ざけて)まさか…」

〇堤防(夜)
  ワゴンが止まっている。
  そのワゴンの前にのり子が目隠しをされ、
  両手を前で縛られ、女の子座りをしてい
  る。
勇次「どうする?壊すか?」
のり子「お願い、壊さないで。死んじゃう!」
  胸の前で縛られた手を握り哀願する。
美紀「何それ、祈ってるつもり。ロボットの
 くせに祈るわけ?」
のり子「私はドールじゃない!お願い、助け
 て!」
美紀「何言ってるの」
のり子「お願い、助けて!治さん!助けて」
美紀「(嫌悪)飼い主の名前まで呼ぶの。ほ
 んと気色悪い!」
のり子「お願い、やめて」
美紀「(憎悪)人間の女に取られるのもイヤ
 だけど、ドールに取られるなんて最悪だわ。
 屈辱以外何者でもない」
のり子「お願い、やめて」
勇次「(孝司を見て)どうする。壊すか?」
香織「私、器物損壊で一億払うなんてイヤよ。
 そんなの洒落にならないわ」
孝司「スポンサーは嫌がらせをするだけでい
 いといっている」
勇次「じゃ、壊さず、海に沈めるか」
のり子「そんなことしたら死んじゃう!お願
 いやめて!」
美紀「(嫌悪)何言ってるの?ドールのくせ
 に、ほんと気持ち悪い」
孝司「(のり子の頭を軽く叩いて)大丈夫だ
 よ。お前は人間じゃないんだ。沈めても死
 にはしないただの機械だ」
のり子「やめて!」
美紀「(憎悪)ほんと気持ち悪いほど良くで
 きてるわ」
    ×   ×   ×
のり子「やめて!」
  のり子は後ろ手に縛られ、おもりをつけ
  られている。
  孝司と勇次がのり子の体と足を持ってい
  る。
  美紀と香織はその様子を見ている。
のり子「死んじゃうからやめて!」
  孝司と勇次は、勢いをつけてのり子を暗
  闇の海の中に放り投げる。
  のり子は海の中に沈んでいく。
  のり子の目隠しが取れる。
  のり子の口から空気が出て行く。
のり子(N)「助けて!」
  のり子は溺れる。
  のり子は頭から海底に墜ちていく。
  水泡を吐きながら、海底に向かってゆっ
  くりと沈んでいく。
  静かに海底に横たわるのり子。
  時が止まったかように静寂がのり子を包
  む。
  のり子は薄目になり、意識が遠のいてい
  く。
  のり子の脳裏に治が映る。
のり子(N)「ああ、治さん。ほんと、愉し
 かったよ。幸せだったよ。(脳裏に治がの
 り子に向かって微笑む)もっともっと治さ
 んと一緒にいたかった…」
  一粒の水泡が海面に向かって、ゆらゆら
  とのぼっていく。
  目を閉じるのり子。
  海底に静かに横たわるのり子。

〇堤防(夜)
  降りしきる雨。
  パトカーの明かり。
  地上で横たわっているのり子。
  紗世子はのり子の亡骸を前に跪いて謝罪
  している。
紗世子「(泣きながら)ののちゃん!ごめん
 なさい!まさかこんなことになるなんて、
 ほんとにごめんなさい!ののちゃん!」
  治がそこにやってくる。
  治は横たわるのり子を見ている。
  紗世子は治に気がつき、立ち上がり、
紗世子「黒川さん!?実は」
  治に紗世子の声は聞こえない。
  治は横たわるのり子しか見えない。
  治は、のり子の傍に行き、両膝をついて
  のり子を見る。
  治の頬に伝わるものが涙か雨かわからな
  い。
治「のり子」
  物言わぬのり子。
治「ごめんよ。遅くなって。寂しかったろ?
 (のり子の頬に手を当て)こんなに冷たく
 なって、寒かっただろ?今暖めてあげるか
 ら」
  治は、のり子を抱き寄せ、のり子の頬に
  頬を併せて、のり子を強く抱きしめる。
  紗世子は立ちすくんだまま二人を見て、
  悲しさから首を振る。
  治は、のり子の頬に頬を併せたまま、い
  つまでも抱きしめている。

〇テロップ「四年後」

〇マンションの外観
  冬の日差しの中、マンションの前で縄跳
  びをして遊ぶ子供たち。
  その中に黒川のの(4)の姿もある。
  治がマンションの玄関から出てきて、の
  のを探す。
治「のの」
のの「(治の方を見て)パパ」
治「行くよ」

〇墓地
  紗世子は部下と一緒に花束を持って、墓
  参りに来る。
部下「先生の思い通り、ドールにも納税の義
 務が出来ましたね」
紗世子「納税は国民の義務の一つ。それをド
 ールにも課せることで、少しずつドールの
 ことを理解してもらい、ドールの地位を高
 めていくしかないわ」
部下「そしていつか、ドールにも基本的人権
 が得られるように、ですか」
紗世子「(微笑み)そうね」
  紗世子と部下は目的の墓石のある区画に
  来る。
  そこには、治とののがいる。
  治が墓石に花を添え、桜でんぶを供える。
  そして、線香を焚いて、
治「のの、さ、目をつむって手を合わせて」
のの「(言われたままにする)」
治「(治も目をつむり、手を合わせて祈る)」
  治が顔を上げると、ののがお供えの桜で
  んぶをつまみ食いをしている。
治「こら、のの。ダメだよそれは。それはマ
 マのだよ」
のの「でも、ののもこれ好き」
治「ののが食べたら、ママの分がなくなっち
 ゃうよ(といってののを抱き寄せる)」
のの「だって」
治「(ののを見て、ののを強く抱きしめる)」
のの「パパ?」  
治「(ののを離して)じゃ、大将にいって、
 のの特製ちらし寿司、作ってもらうか」
のの「うん。ピンクのたっぷりはいったのが
 いい(笑顔)」
治「そうだね。たっぷり入れてもらおう」
  治は立ちあがり、墓石にキスをする。
治「また来るからね。ほら、ののもママにキ
 スしないさい(といってののを抱いて墓石
 の前に突き出す)」
のの「(墓石にキスして)また来るからね(と
 治のマネをする)」  
治「よし。じゃ、行こう」
  治はののの手を握り歩く。
  ののはスキップしている。
  治とののは、立ち止まっている紗世子の
  横を通る。
  紗世子は、頭を下げているも治はののを
  相手にしているので気がつかない。
  そして、治とののは立ち去る。
  立ち止まったまま頭を下げている紗世子。
  紗世子の顔は垂れた髪で見えない。
部下「(去っていった治の方を見て)彼女は、
 幸せだったのかな」
  紗世子の頬に一筋の涙が流れる。


              〈FIN〉




以上です

これが2011年1月作品です。
かなり単純で素朴だけど、みや文明の中では、公開されてる中では一番かな

設定が近未来的というか、スピルバーグの「AI」の前夜あたりに、こんな事件があってもおかしくないのでは?
と今、とってつけてみた
ブレードランナーとか
ターミネーターとか

スピルバーグ、ジェームズキャメロンになりそこねたかな


以上が、シナリオライターでプロを目指したみや文明のファイナル作品かな


ファイナルは「アイキイの化学式」(2011年4月作品)だけど、あれは、この三作に比べるとレベルが
過去より落ちちゃいけないんだけど

でも、アイキイは、あれで好きだけどね、明るいし

三作とも自信作というか自分の作品の中では全てベスト3だった自信作でした

作品が落ちているのは一言でいえばつまらんからだろう

それが落選の答えだと思う。

ナレが多いとか、そういうのってどうにでもなるし、そんなのは演出家の能力次第だと思うから。

マズイ飯はマズイというか、俺の味覚がバカになっているのかな

でも、俺は作品には満足している

それに今の俺は確実にこれ以上のものは書く、これ以上のエンターティメントを書くよ

でも、もっと自由に発想したいし、もっと広げたりのでちょっと50ページでおさめるというのはあかん

それに過去の受賞作を見ても、エンターティメント性の強い作品は受からんよ。
といっても、俺の作品がエンターティメント性があるかどうか、それも疑問というか、読んでくれる人がいないから分からないんだけどね

でも、必ず面白いのは作る
それを証明するために、小説に行く

昨夜も深夜二時まで小説を弄った。
かなり佳境に来ている。


この「寂しがりやのドール」を書いたのが2011年1月、
ヤンシナの〆は二月、まで時間がある
けど、やっぱずっと書いてきて、しかも、会社員で深夜二時、三時まで起きているのは辛くて、この作品でとりあえず打ち止めにしたんだ


二十年以上も考えているんだから、書けない、ネタがない、なんていうことはなくなる
色々な難所、スランプを克服することを学んできたのだから←やってきたのは超実践
面白いドラマを書くということを独学してきたのだから。

けど、落選というスランプだけは学べなかった、届かなかった


小説でプロになるのも難しい!
応募はシナリオと同じ千、二千の応募はある。
しかも、海堂尊さんのように医者とか、ようは高学歴、エリートが多い
俺のような割り算も割れない、小説も三十代後半になってやっと読めるようになるも、ここ数年、一作も読んでない。
そんな俺が太刀打ちできるか。
常識から考えればムリだろう。
けど、やる

なぜなら、相手が強いから

必ず傑作、書きますよ
ただ人に読まれないのが残念ですが・・・
でも、書く。

まぁ、読んでくれる人を探さないといけんかな


でも、やはり、悔しいな
この悔しさ、必ず娯楽ドラマをもってはらしてみせる
せめて、受賞作が面白い、参った、といえるものなら納得できるんだけどね
なんか地味なんだよなぁ~

と、負け惜しみを書いてみた

作品、読んだ人、が、いたら、
なんか感想くださいな

三作、いや「アイキイの化学式」を入れて四作、いや、テレ朝「恋愛抑止力」を入れて五作でもいいし、良かった順でももらえると嬉しいかな

もし、コメントもらえるなら、ネットネームは入れてね←ネットのカオナシ、辻斬りはなんか正々堂々してないよ

あとは、8月20日(土)に女性に限りますが←今からシナリオやってみようという方もOK、女性だけでも俺と対極なのに、やろうかなと考えている人なんて、まさに対極、なんか面白いネタが収穫できそうな気がする

とりあえず、作品公開は終わりました

夏に帰省する電車の中で、車の中で、待ち合わせに、ちょっとした時間つぶしに、

読んでいただけたら幸いです

訪問者も読んでいる、いないに関わらず170人を維持できたというのは良かったかな

きっといなくなるんじゃないか、と思ったから

その中で10人から30人ぐらい読んでくれていると嬉しいな

コメントももらえると嬉しいな

テレ朝の受賞作を読んだ方、どんなドラマか教えてくれると嬉しいな

もろもろ、よろしくお願いします


さて、今夜はボディコンバット

いい汗かきます
大入りだといいなぁ





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第23回ヤンシナ落選作 「寂しがりやのドール」 第六回

2011-08-08 07:37:37 | 第23回ヤンシナ「寂しがりやのドール」


第六回



〇レストランの個室
  紗世子と治が座っている。
  紗世子は時計ばかり気にしている。
治「来ませんね。僕に会わせたい人って、誰
 です?」
紗世子「(慌てて)ちょっと待って」
  紗世子は席を立つ。

〇同・化粧室
  紗世子は慌てて、携帯で電話をかける。

〇マンションの部屋
  おめかしをしたのり子がバックを握った
  まま床に女の子座りをして項垂れている。
  携帯電話が鳴る。
  のり子は携帯に出る。
のり子「もしもし」
紗世子の声「ののちゃん。今どこにいるの」
のり子「家です」
紗世子の声「何でよ!ここに来るって約束し
 たじゃない」
のり子「やっぱりいけません」
紗世子の声「どうして」
のり子「やっぱり怖くて、治さんに拒絶され
 るのではないかと思うと、どうしてもいけ
 ません」
紗世子の声「まだそんなこと言ってるの。大
 丈夫だから早く来なさい」
のり子「いや、行きません」
紗世子の声「(怒るように)ののちゃん」
のり子「このままでいいのなら、私、このま
 ま、ドールのままでいいです」
紗世子の声「赤ちゃんはどうするの?十月十
 日もすれば生まれるのよ」
のり子「そのとき、私一人で育てます」
紗世子の声「ののちゃん」
のり子「でも、今は、こうして治さんの傍に
 いられるなら、このままでいたいんです」
のり子(N)「もう少し。ばれてしまうまで、
 もう少し、長く傍にいたい」
紗世子の声「ののちゃん」
のり子「行けなくてすみません」
紗世子の声「わかったわ。でも、ののちゃん
 ん、何か一言、黒川さんに言いなさいよ。
 今が一番言うチャンスなんだから」
のり子「…」
紗世子の声「何度もいうけど、黒川さんは必
 ずののちゃんを受け入れるわ。ドールだろ
 うと人間だろうときっと関係ないと思う。
 だから勇気を出して一言いってみて。きっ
 ともっと幸せになれるから」
のり子「…」

〇マンションから見える夜の街の明かり

〇マンションの部屋(夜)
  真っ暗な部屋。
  帰ってくる治が明かりをつける。
  女の子座りをして、考え事をしていたの
  り子は、部屋の明かりで、はじめて治に
  気がつく。
治「(のり子を見て)どうした?」
のり子「あ、おかえりなさい」
治「(ネクタイを外しながら)なんか疲れち
 ゃったよ。これだからどうも人は好きにな
 れない」
  のり子の脳裏に紗世子の言葉が過ぎる。
紗世子の言葉「何か一言、黒川さんに言いな
 さいよ。今が一番言うチャンスなんだから」
  治は、ボーとしているのり子を見て、
治「ん、どうした?」
のり子「(治を見上げる)」
治「(のり子を見て)」
のり子「…寂しかった」
治「(微笑み、中腰になってのり子を抱く)
 ごめんよ。寂しくさせて」
のり子「(治に抱き寄せられる)」
  暫く抱き合う二人。
治「そうだ。踊らないか?」
のり子「(戸惑う)え?」
治「踊ろう」
のり子「踊るって何を?」
治「何でも良いよ、楽しければ」
のり子「私、オクラホマミキサーしか踊れな
 い」
治「(笑って)フォークダンスか。何か社交
 ダンス的なものはプログラムされてないの
 ?」
のり子「(困惑顔で)ない」
治「なら僕が教えてあげるよ」
のり子「え?」
治「なんでもいいんだよ。楽しければ」
  治は、のり子の手を取り、即興のダンス
  でのり子を抱きかかえたり、優しく振り
  回したりして笑う。
  のり子も笑う。
のり子・治(語り)「(治の語り)端から見
 たらままごとかも知れない。でも、(二人
 でハモる語り)私たちは愛しあっていた。
 たとえ真実を話さなくても、心の奥底で繋
 がっている。(治の語り)しかし、永久の
 別れが訪れることに、(二人のハモる語り)
 私たちは知る由もなかった」


      第七回(ラスト)へつづく。


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第23回ヤンシナ落選作 「寂しがりやのドール」 第五回

2011-08-07 07:15:42 | 第23回ヤンシナ「寂しがりやのドール」


第五回



〇秋の日差しの中、マンションの前で遊び回
る子供たち。

〇マンションの部屋
  のり子は紗世子に珈琲を出す。
紗世子「(のり子の顔をマジマジと見る)」
のり子「(紗世子の視線を気にして)なんで
 すか?」
紗世子「ののちゃん。いい顔してる。とって
 も幸せそう」
のり子「そうですか」
紗世子「そうよ。幸せでしょ」
のり子「(はにかみながら)ええ、まぁ」
紗世子「良かった。なんかうまくいってるみ
 たいね」
のり子「(自然と幸せそうな笑みが零れる)」
紗世子「でも、こっちは、うまいことばかり
 じゃないけど」
のり子「どうかしたんですか?」
紗世子「このところ、ドールに対して脅迫め
 いた手紙やメールが多く届くの。研究者を
 殺すとかドールを破壊するとか、ね」
のり子「…」
紗世子「こないだは、研究所に不法侵入して
 きた人がいたわ。何の被害もなかったけど、
 彼らの狙いはわかっている」
のり子「…」
紗世子「彼らはドールの顧客リストを狙って
 いるのよ」
のり子「どうしてです?」
紗世子「ドールを破壊するためよ。人と区別
 がつかないんだから、顧客リストからドー
 ルの居場所を調べるしかないでしょ」
のり子「そんなことまでして、ドールを破壊
 する必要があるんですか?破壊すれば器物
 損壊で一億以上払わされるとニュースで見
 ました」
紗世子「そういう人たちはドールの必要性と
 いうのを考えてない人がやっているのよ。
 ドールの活躍の場は主に介護センターよ。
 介護というのは肉体的にも精神的にも辛い
 もの。過酷な仕事の割に待遇は良くない。
 離職していく人も多い。人手不足のわりに
 外国人の受け入れには慎重だわ。国家試験
 にも受からなければいけないしね。でも、
 そんなことをしていたらどんどん介護の場
 から人がいなくなってしまう。そしたら一
 体誰が介護を必要としている人を介護すれ
 ばいいの?日本はどんどん高齢化が進んで
 いるというのに」
のり子「…」
紗世子「ドールの存在はますます重要だわ。
 ドールがいなければ、人は自分の足で立つ
 ことも出来なければ、身の回りの世話をし
 てくれる人もいないのよ。介護問題は日本
 の難題よ。その難題を解決してくれるのが
 ドールよ。なのにドールを壊そうとする人
 の跡が絶えない。不幸なことよ」
のり子「…」
紗世子「でも、確かにドールに仕事や恋人を
 奪われたという人もいる。ドール愛好家と
 いう人たちもいるから。でもそれはほんの
 一握り。ほとんどは社会への不満のはけ口
 がドールに向けられているのよ」
のり子「…」
紗世子「ドールは完璧だし、それになまじ人
 間の形そのものだから人に劣等感を与えか
 ねない。そういう人がドールに危害をくわ
 えようとするのよ」
のり子「…」
紗世子「でも、最近は企業からお金をもらっ
 て破壊活動をしている活動家もいるという
 噂もあるけど。いずれにしてもドールの周
 りは敵だらけよ」
のり子「でも、何かわかるような気がします」
紗世子「何が?」
のり子「ドールの気持ちが。人と違うといじ
 められるから」
紗世子「(笑って)ののちゃんはドールでは
 ないのよ」
のり子「…」
紗世子「(真顔になり)でも、一応気をつけ
 て」
のり子「…」
紗世子「私の考え過ぎかも知れないけど、今
 はドールとして黒川さんの傍にいるんだか
 ら、それがちょっと心配なの」
のり子「…」
紗世子「今日は、それが言いたくて来たの(真
 顔でのり子を見る)」
のり子「はい」
紗世子「それより何、ののちゃんの話しって
 いうのは?」
のり子「(言いづらそうに)あの…」
紗世子「何?」
のり子「(言いづらそうに)その…」
紗世子「(笑い)何よ」
のり子「(紗世子に聞こえるか聞こえないか
 の小声で)妊娠しました」
紗世子「(聞き直す)え?」
のり子「赤ちゃんが出来ました」
紗世子「(驚き、口を大きく開いて、一呼吸
 おいてから)おめでとう(といってのり子
 の手を握る)」
のり子「あ、ありがとうございます」
紗世子「そのこと、黒川さんは知ってるの?」
のり子「(首を振り)知りません!だって私、
 ドールですもの」
紗世子「そうか。そうだよね(吹き出す)。
 今はドールだもんね」
のり子「…」
紗世子「そうか。妊娠したか。ああ、でも良
 かった。これで私の心配事がなくなる」
のり子「…」
紗世子「このこと、黒川さんに言うのよ。黒
 川さんにいって、結婚しちゃえばいいのよ」
のり子「え、そんなのムリです。私、言えま
 せん」
紗世子「なんで?」
のり子「だって、私、治さんを騙していたこ
 とになる」
紗世子「でも愛し合っているんでしょ。それ
 が赤ちゃんという形になったじゃない」
のり子「でも、それは治さんは知らないこと
 だし、治さんにとって私はドールだから」
紗世子「何言ってるの?妊娠させておいて、
 今更それはないでしょ」
のり子「でも」
紗世子「大丈夫よ。事実を告白しても彼なら
 間違いなくののちゃんを受け入れるわ。だ
 から言いなさい。今がそのときよ」
のり子「私、言えません」
紗世子「なんで」
のり子「なんか、怖いし、そんな言う勇気、
 私にはありません」
紗世子「(唸り)じゃあ、こうしましょう。
 私が告白の場を作るわ。黒川さんに会わせ
 たい人がいると言って。そこにののちゃん
 が来ればいい。そして、来て、妊娠したこ
 と、自分がドールじゃなく人間だというこ
 とを告げればいい。それなら言えるでしょ。
 私も付いているから」
のり子「でも怖い」
紗世子「大丈夫よ。私に任せて」
のり子「でも、先生もわかっていると思うけ
 ど、私、妊娠しても、私の体では子供は産
 めません」
紗世子「それも大丈夫。ちゃんとこの日のた
 めに代理母になってくれる人、用意してあ
 るから。受精卵だけ渡してくれれば、後は
 こっちでちゃんとやるから。でも良かった」
のり子「…」
紗世子「後はののちゃんの勇気だけよ。勇気
 を出して告白するだけ。いや、その場に来
 てくれればいい。そしたら後は私が上手く
 やるから、ちゃんと仲を取り持つから」
のり子「(自信なげに首を傾げる)」
紗世子「大丈夫よ。彼は絶対受け入れるって。
 決して拒みやしないから心配しないで。(笑
 顔で)ああ、でも、これで私の心配事はな
 くなるし、ののちゃんには人としての幸せ
 が手にはいるし、なんかいっぺんに肩の荷
 がおりたわ(背伸びする)」
のり子「…」


        第六回につづく。


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第23回ヤンシナ落選作 「寂しがりやのドール」 第四回

2011-08-06 07:19:51 | 第23回ヤンシナ「寂しがりやのドール」


第四回



〇カラオケボックス
  美波香織(27)が歌っている。
  美紀は不機嫌な顔をして座っている。
  香織は歌い終わり、美紀の隣に座る。
香織「美紀も歌いなよ。思いっきり歌って、
 あんな男のことなんて忘れちゃえ!」
美紀「(仏頂面をしている)」
香織「ドールしか愛せないような男、男じゃ
 ないわ!(美紀の肩を抱き)ドールなんて、
 所詮、ていのいいダッチワイフよ」
美紀「じゃ、彼はダッチワイフを選んだって
 わけ?」
香織「そうじゃないけど」
美紀「ダッチワイフを抱いて寝てるなんて最
 悪だわ(嫌悪の表情をする)」
香織「そうよ!そんな気色悪い男のことなん
 て忘れちゃえ!」
美紀「(テーブルに置いてあるマイクを持っ
 て叫ぶ)治のバッカヤロー」
香織「(美紀のマイクに顔を寄せて)お前な
 んか男失格なんだよ!」
美紀「(マイクに叫ぶ)ドールでもなんでも
 抱いて寝てろ!」

〇雑居ビル(夜)
  美紀は香織に連れられてやって来る。
香織「ここよ」
  香織と美紀は階段を下りていく。

〇同・会員制BAR(夜)
  男たちは酒を飲み、ドールへの愚痴を言
  っている。
男A「何が第二の人類だ!あいつらは日本人
 を滅亡させる気か!」
男B「このままドールの存在を許したら、ま
 すます少子化に拍車をかけるだけだ」
男C「俺はドールに仕事を奪われたんだ!」
男D「(笑い)それはお前に創造性がないか
 らだろ」
男C「なんだと!」
男A「やめろよ!人間同士いがみ合ってどう
 する?そんなことをしたらますますドール
 にもってかれるぞ!」
男B「兎に角、ドールの存在を無視するわけ
 にはいかない。我々は断固、戦わなくては
 いけない。あんな化け物と共存できるか!」
男A「これは人間の生存に関わる問題だ!」
  その会話を離れた席で聞いている美紀と
  香織。
香織「(美紀に耳打ちする)ドールの存在を
 認めない人たちが、こうして夜な夜な集ま
 って、不満を言っているのよ」
美紀「…」
  香織の傍に、バーカウンターから出てき
  た藤間勇次(30)が座り、香織の腰に手
  を回す。
勇次「(美紀を見て)彼女は?」
香織「美紀ちゃん。ドールに育てられた男と
 付き合って、ふられちゃったの」
美紀「…」
勇次「そんな男のことなんか早く忘れちゃい
 なよ。ちゃんと人間を愛せる男、紹介する
 よ(笑う)」
  不満を言っている席の男たちが叫ぶ。
男B「何が第二の人類だ!神にでもなったつ
 もりでいるのか!」
男C「そうだ!あの悪の中枢、ドール研究所
 がいけないんだ!」
男A「奴等の作ったドールを片っ端から破壊
 するんだ!」
男D「我々は決してドールの存在を許さない
 !」
男C「奴等を破壊しろ!」
  隣にいる美紀と香織と勇次。
  勇次は苦笑いをする。。
美紀「…」

〇マンションの玄関前
  のり子が治と一緒にゴミ出しをする。
  治は、のり子を抱き寄せお出かけのキス
  をする。
治「(微笑み)行ってくるよ」
のり子「行ってらっしゃい」
  そして、治はのり子に手を振る。
  のり子も手を振り、治を見送る。
  美紀は停車している車の中からその姿を
  見ている。
  のり子は、突然、吐き気を催す。
  そして、口を押さえながら部屋に戻る。
  美紀の顔に憎悪が見える。


     第五回へつづく。


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第23回ヤンシナ落選作 「寂しがりやのドール」 第三回

2011-08-05 07:39:43 | 第23回ヤンシナ「寂しがりやのドール」


第三回



〇ドール研究所の外観

〇紗世子の教授室
  治と紗世子はソファに腰掛けている。
治「それにしても、彼女、良くできてますね。
 ほんと人間みたいだ」
紗世子「あなたのお母さんもそうだったでし
 ょ。そう変わりはないはずよ」
治「でも、僕が母離れをしてから、もう十年
 経つ」
紗世子「十年か。もうそんなに経つのね」
治「あのときは、子供のころからずっとドー
 ルと接してきたから何の違和感もなかった
 けど、十年ぶりだと随分違う」
紗世子「十年も経てば技術も進歩するわ。あ
 なたのお母さんだったドールは第六世代の
 しかも初期。でも、今一緒にいるドールは
 最新型よ。第七世代のドールよ。もう来る
 ところまで来たって感じ。のり子はその第
 七世代の試作機なんだから」
治「(知らないふりで)そうなんですか」
紗世子「そうよ。第七世代のコンセプトは、
 初心に立ち返って、より人間らしくをモッ
 トーにしているんだから」
治「別にそんな人間らしくなくても、僕は平
 気ですけど」
紗世子「あら、何か不満?」
治「イヤ、別に。ただ雰囲気がとっても人間
 っぽいなぁと思って」
紗世子「あ、そういう繊細なところに気づい
 てくれる。さすがお医者さんね」
治「…」
紗世子「あの子は、ちょっと人見知りで大人
 しく、あえてダメな子にセッティングして
 あるの(微笑む)。気に入らなかった?」
治「いえ」
紗世子「(念を押すように)でも、可愛いで
 しょ、彼女」
治「ええ、まぁ」
紗世子「いっぱい可愛がってあげて」
治(N)「先生は、あくまでも惚ける気なん
 だ。僕はそんな優秀な医者じゃないけど、
 それでも医者です」
治「可愛がって良いんですか?」
紗世子「(笑顔で)勿論」

〇マンションから見える夜の街の明かり

〇マンションの部屋(夜)
  のり子が紗世子に電話をしている。
  のり子は両手で受話器を持って、
のり子「やっぱり何かばれてる感じがします」
紗世子の声「なんでそう思うの?彼、なんか
 言ってきた?」
のり子「いえ、特には」
紗世子の声「大丈夫。何も心配しないで。そ
 れに今日、彼、来たわよ」
のり子「え」
紗世子の声「良くできてるって言ってたわよ」
のり子「…」
紗世子の声「だから、言っておいたわ。ちょ
 っと大人しく控えめな子にセッティングし
 てあるって(笑う)」
のり子「(苦笑い)」

〇紗世子の教授室(夜)
  のり子と電話をしている。
紗世子「だから、心配しないで。ののちゃん
 の考え過ぎよ。あんまり考えすぎると、そ
 れこそばれちゃうわよ(笑う)。いい、そ
 のまま自然体でいればいいのよ」
  受話器から、のり子の部屋のチャイムが
  聞こえる。
紗世子「じゃあね。普通にしていなさいよ」
  携帯電話を切る。
紗世子「(一息ついて呟く)人が怖い女の子
 と、人が苦手な男の子か。なんかヘンな組
 み合わせだわ(微笑む)。でも、あの二人、
 丁度良いのかな知れない」

〇マンションの部屋(夜)
  受話器を置いて、玄関ドアを開けるのり
  子。
治「ただいま」
のり子「おかえりなさい」
治「(のり子をジッと見る)」
のり子「(のり子は何処かすまし顔をして平
 静を装っている)」
治(N)「君が何も言わないのなら、僕は」
  突然、治はのり子の頬を両手で抑える。
  のり子は、反射的に治の手を握る。
治「(のり子を見つめている)」
のり子「…」
  のり子は、嫌々でもするように顔を左右
  に振る。
治「(諭すように)ドールなら逃げるな」
のり子「(治の手を掴んだまま止まり、困惑
 した眼差しで治を見る)」
治「(のり子の唇に、優しくキスをする)」
のり子「(目が半開きのまま受け入れる)」
  二人は暫く、唇と唇を重ねたまま、微動
  だにしない。
  治が離れてのり子を見る。
治「好きだよ」
のり子「…」
治「(再び、のり子にキスをする)」
のり子「(自然に目をつむる)」

〇同・寝室
  ベッドの中で、のり子は丸くなって頭を
  治の胸にあてている。
のり子(語り)「これでよかったのかも知れ
 ない。ドールしか愛せない彼なら私のこと
 を優しく愛してくれる。あいのこと言われ
 た私のことを愛おしく思ってくれる」
  治はのり子の頭を撫で、
治「僕は幼い頃に母を亡くしてね、いつも一
 人だった。そんな僕にドール研究所で研究
 員をしていた父が、僕にドールの母親を与
 えてくれた。僕は物心つくまで、その人が
 アンドロイドだなんてちっとも思わなかっ
 たよ(微笑む)。それほど良くできていた。
 母は人間のように怒ることもなければ不機
 嫌になることもない。決して淡泊というわ
 けでもない。その寛大な包容力でいつも僕
 を優しく見守っていてくれた。僕はそれに
 慣れすぎてしまった。そのせいか、どうも
 人間の気分というものに不快感を感じるよ
 うになった。ついてけないんだ(苦笑い)。
 人間のくせに人への順応が弱いのかな。ど
 うも人が苦手だ。こんなこと、ドールの君
 にいっても良くわからないことかな(微笑
 む)」
  のり子は、自然と治にしがみついて、治
  の胸に顔を埋める。 
  治はのり子を優しく抱き、おでこにキス
  をする。
のり子(N)「この人はほんとに私をドール
 と思って愛してくれているのだろうか?そ
 れとも、こんな話しをするというのは、私
 がドールでないことを知っていて話してい
 るのだろうか?でも、今はどっちでもいい。
 どっちも私だから。いつまでもこうしてい
 たい」
  のり子は治にしがみつく。
  治はのり子を包むように、そして強く抱
  く。
のり子・治(語り)「(治の語り)知ってい
 るのに、(のり子の語り)知らぬふり…」


        第四回につづく。



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第23回ヤンシナ落選作 「寂しがりやのドール」 第二回

2011-08-04 07:44:19 | 第23回ヤンシナ「寂しがりやのドール」


第二回



〇街
  険しい表情をしている麻生美紀(27)

〇黒川クリニックの外観

〇同・診察室
  白衣の治。
治「麻生さん。お入りください」
  美紀が入ってくる。
  美紀は治を見ている。
  治はカルテを見ていて美紀を見ない。
治「(平静に)どうしました」
美紀「彼氏に一方的に別れを言われました。
 私は別れたくないのに」
治「(平静に)そうですか。でも、心配する
 ことはありません。別に麻生さんに欠点が
 あるわけではありませんよ。きっと彼に欠
 点があったのでしょう」
美紀「そんな他人行儀の言い方やめて!治、
 どうして別れなくちゃいけないの?」
治「(相変わらずカルテを見ていて美紀を見
 ない)」
美紀「治。もう一度やり直しましょ。私に悪
 いところがあれば直すから」
治「その必要はありません。あなたにはなん
 の非はない。非があるとすれば僕の方だ。
 (はじめて美紀を見る)僕は、どうも、や
 っぱり人が苦手なみたいだ。それに、特に
 積極的な人ほどダメなんだ。こうやって病
 院にまで来るような人とはちょっとムリだ」
美紀「(怒り気味に)それって、私がストー
 カーみたいにしつこいってこと?」
治「そうじゃないよ。ほんと君にはなんの非
 もないんだ」
美紀「じゃ、どんな人ならいいの?どんな人
 なら治は好きになれるわけ?」
治「もし僕が人を好きになるとすれば、その
 人は静かに僕を見守ってくれる人、穏やか
 な人、そういう人が僕にはあっていると思
 う」

〇回想・部屋の窓辺
  母は窓辺でロッキングチェアーにゆられ
  ながら編み物をしている。
  そして、傍らで本を読んでいる治(10)
  を見ている。
治(語り)「窓辺で、陽光の日差しの中で、
 暖かい眼差しで、ただ僕を優しく見守って
 くれる人。そんな人が僕にはあっている」

〇元に戻る・診察室
治「僕が好きになる人は、そんな人かも知れ
 ない」
美紀「それはあなたの母親、物言わぬドール
 だってこと?」
治「(苦笑いして)そうかもしれない。その
 影響を受けていないとはいえない。それに
 僕は、きっと人アレルギーなのかもしれな
 い。人と付き合っていくうちに、段々その
 ことに気づいたんだ(苦笑い)。だから美
 紀さんには何一つ欠点はない。美紀さんが
 悪いわけじゃない。悪いのは僕だ」
美紀「(治を睨んで、立ち上がって診察室を
 出て行く)」
  ドアが強く閉まる。
治「(ため息をつく)」

〇同・黒川クリニックの外
  黒川クリニックを振り返って、
美紀「(憎悪の眼差しで)何が人アレルギー
 よ!私は犬猫と違うわ!人治す前に、早く
 自分治せっていうの!」
  美紀の顔に悔しさが表れる。

〇初夏の日差しの中、マンションの前で遊び
回る子供たち。

〇マンションの部屋
  のり子が紗世子の前に珈琲を出す。
紗世子「どうお?その後は」
のり子「はじめは、ドールのように接するな
 んてムリだと思ってました。必ずばれると。
 でも、不思議となんの疑いも持たれること
 なく、一緒に暮らせてます(微笑む)」
紗世子「(自信満々に)そうでしょ、そうで
 しょ。絶対ばれないから、心配しないでい
 いのよ。私たちのドールは完璧よ。人混み
 に紛れても決してばれやしない。人とドー
 ルの区別なんてつかないんだから。ドール
 はいわば第二の人類。人間そのもの、いや
 それ以上といってもいいわ。だから大丈夫。
 それに黒川さん、優しいでしょ。何もヘン
 なこと、してこないでしょ」
のり子「ええ。でも、私はこのままここにい
 るだけでいいのでしょうか?」
紗世子「いいのよ、それで。それを彼は求め
 ているんだから。でも、だいぶ打ち解けて
 るようね」
のり子「まぁ」
紗世子「そう、よかった。これでののちゃん
 の人への恐怖心もなくなってくれれば大成
 功よ(微笑む)」

〇マンションから見える夕陽

〇マンションの部屋(夕方)
  治が帰ってくる。
  のり子は、ソファに寄りかかり、夕陽を
  浴びながら眠りこけている。
  そんなのり子を治はジッと見る。
  治は、のり子の前に跪いてジッと見る。
治「それにしても、見れば見るほど良くでき
 てる。ほんと人間そっくりだ」
  のり子の寝息が聞こえる。
治「寝息までたててる。ドールもとうとうこ
 こまで来たということか」
  のり子の投げ出された手。
  治は自然とのり子の手を握る。
  そして、何気なくのり子の手首に親指を
  押し当てる。
  暫くすると治の顔が険しくなる。
  脈打つ音が聞こえる。
  のり子の手首から手を離して立ち上がる。
治「(驚きの声で呟く)これは一体、どうい
 うことだ!?彼女はドールではないのか!?」
のり子「(寝返りを打つ)」
治「(呟く)でもなぜ?なぜなんだ」

〇マンションから見える夜の街の明かり

〇マンションの部屋(夜)
  のり子と治は向かい合ってテーブルに座
  って食事をしている。
治「君はここに来てから、ほとんど桜でんぶ
 しか食べてないけど、それだけでいいの?」
のり子「私はこれだけでいいです」
治「ドールはそんな甘いものが好きなの?そ
 れとも偏食なの?そうプログラムされてる
 いるから?」
のり子「…」
治「(ふと我に返って、笑いだし)ドールの
 君に質問してもしょうがないか」
のり子「…」
治「でも、君は好きなものを買って、食べて
 いいんだからね」
のり子「私はこれが好きなんです」
治「(優しい眼差しでのり子を見る)」
のり子「(治の視線に気がつき、箸を咥えた
 まま治を見る)」
  沈黙が過ぎる。
治「もし、僕に何か言いたいことがあるなら、
 遠慮なく言ってくれ。僕は君のしたいよう
 にするよ」
のり子「…別に何も」
治「そうか(笑みが零れる)」
のり子「(知らぬふりをしたままご飯を食べ
 る)」
治(N)「君がドールのふりをするというな
 ら、僕も知らないふりをしよう」
のり子・治(語り)「(治の語り)今思えば、
 それは奇妙な関係だった。ドールのふりを
 し続ける彼女と、(のり子の語り)知らな
 いふりをする彼」


         第三回につづく。





八月になって小説が弄れてない。
もう後半に入ってるのに・・・
予定表をたてて、最低でも夏休み中に第一稿は書き上げたい。
そして、来年の六月まで修正、直しをやりたい

まずは第一稿だ!


  
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第23回ヤンシナ落選作 「寂しがりやのドール」 第一回

2011-08-03 07:41:27 | 第23回ヤンシナ「寂しがりやのドール」
ヤンシナ、落選作「寂しがりやのドール」を全七回に分けて公開します。
一応、これが三作目の応募作にして、自分の中ではベスト1だと思っています。

自分の代表作をいってもいいかも知れないとはじめて思えた作品でもあるかな

それと「異世界奇譚」も代表作といってもいいかも知れない

2011年1月作品、ヤンシナ、落選作、「寂しがりやのドール」

イメージヒロインは、新井恵理那さん

どうぞ


第一回



〇記者会見のニュース
  伊藤学(36)と弁護士(40)が座ってい
  る。
  学は春めいたカッコをしている。
  席の前には、学と若く美しい女性の絵里
  のツーショット写真が置いてある。
学「(苦悶の表情で怒りを露わにし)あいつ
 らは人殺しだ!絵里は殺されたんだ!その
 証拠にこれを見ろ!」
  学はアルバムを広げて見せる。
  アルバムには学と絵里の結婚の写真やキ
  ッチンで料理をしている絵里の写真など
  がある。
学「(アルバムの写真を見せながら)僕たち
 は結婚式まで挙げたんだ!(写真を見せな
 がら)これもこれもこれも、みんなそうだ!
 幸せに結婚生活を営んでいたんだ!それが
 何だ!?器物だと?器物損壊だと?ふざける
 な!絵里は器物じゃない!器物損壊じゃな
 い!絵里は壊されたんじゃない!殺された
 んだ!」
  破壊された絵里の写真が写る。
  頭は半分壊され、機械が飛び出していて、
  手や胴体からも機械が見える。

〇のり子の部屋(ワンルーム)
  野崎のり子(24)はテレビで記者会見の
  ニュースを見ている。
のり子「この人はドールを人間のように想っ
 ている、愛している…。けど私は自分を、
 自分のことをそうは思っていない…」

〇過去・彼氏の部屋
  のり子(21)は女の子座りで、彼(27)
  は、のり子の胸ぐらを掴み上げ、張り手
  を頭上に挙げている。
のり子「(怯えながら手を顔の前にもってい
 き)やめて!ぶたないで!お願い!壊れる
 から、壊れるからやめて!」
彼「(聞き直す)壊れる!?壊れるだと」
のり子「…」
彼「お前、壊れるのか?怪我するじゃなくて
 壊れると思っているのか?」
のり子「…」
彼「(苦笑いして)まるでドールみたいだな」
のり子「…」
彼「お前、ほんとに人間か?」

〇元に戻る・のり子の部屋
  のり子は記者会見のニュースを見ている。
のり子(語り)「私はドールと同じように自
 分を見ている。普通の人間じゃないけど、
 私はドールのようなアンドロイドでもない。
 けど、私の成長が、思春期が、私をごくご
 く普通の人間のように見れない状況にした
 のかもしれない…」
  次のニュースで交通事故現場が映る。

〇過去・事故現場~治療室~小学校~医療施
設~中学校
  大破した車に大破した子供用の自転車と
  血痕がある。
のり子(語り)「私は小学二年生のとき、人
 身事故に遭い、死線を彷徨い、奇跡的に助
 かりました。しかし、体の大部分を損傷し、
 知能は成長しても骨格や臓器が成長すると
 いうことが出来ず、私の体は医学とドール
 の技術がなければ成長することの出来ない
 体になってしまったのです。医学とドール
 の融合、それが私なのです。ですから、私
 は幼い頃から、改造人間とか、人間とドー
 ルのあいのこと呼ばれ、よくいじめられま
 した。でも、それより一番イヤだったのが
 自分の体を成長させるときです。私は体を
 成長させるために施設に入院します。骨格
 の規格変更のためです。それは、いうなれ
 ば昨日までSサイズだった体をMサイズに
 変えるようなもの。いくら段階をふまえる
 といっても変化はあきらか、誰が見ても違
 和感を感じずにはいられない。たった一夜
 にして体の大きさが変わるわけですから…」

〇過去・中学校の教室
男子生徒A「また脱皮してきたのか?」
男子生徒B「打ち出の小槌でももっているの
 か、俺も欲しいよ(笑い)」
のり子「(悲しげな表情をし、口を真一文字
 にして俯く)」

〇元に戻る・のり子の部屋
  ニュースを見ている。
のり子(語り)「そう言われるのが一番辛か
 った。なまじ心だけは人間のままだから余
 計に辛い。いっそ何もかもがドールだった
 ら傷つくこともないのに」
  携帯電話が鳴る。

〇ドール研究所の外観

〇紗世子の教授室
  のり子はソファに腰掛けている。
  澄野紗世子(45)は両手に珈琲を持って、
紗世子「別れてもう三年経つんでしょ。いつ
 までも昔のことなんか引きずっていたらダ
 メよ(と諭す)」
のり子「それでも人が怖いです。人とドール
 のあいのこじゃなくて、いっそドールだっ
 たらいいのに、と思うことがあります」
紗世子「ののちゃん。そういう卑下た言い方、 ←野崎のり子で、ののちゃんというあだ名。
 やめなさい。あなたは人間なのよ。あなた
 にはちゃんと人間としての幸せを手に入れ
 て欲しいわ」
のり子「(苦笑い)ムリです、先生」
紗世子「(ため息をついて)もう体の成長は
 とっくに終わってるのよ。後は心の問題。
 人に怯えるその心を治すようにしないと」
のり子「分かってます。でも、どうしても私
 は、人に優しく愛されたことがないし、い
 っそドールのように愛された方が幸せにな
 れるんじゃないかと、思ってしまうんです」
紗世子「困ったわね」
のり子「すみません」
紗世子「別に謝ることはないわ。ののちゃん
 のことをずっと見てきたから、ののちゃん
 の気持ちはわかる。でも、そういう思いも
 払拭していかないと。いつまでも引きずっ
 ているのは良くない」
のり子「(頭を垂れる)」
紗世子「だから今日、ののちゃんを呼んだの」
のり子「(紗世子を見る)」
紗世子「あなたに紹介したい人がいるの。そ
 の人は、普段は精神科医をしているんだけ
 ど、どうも人と付き合うのが苦手で、人の
 ことがうまく愛せない人なの。だから今、
 私にドールの依頼をしにきている人なんだ
 けど、どうお?その人と付き合ってみない?
 とっても穏やかで優しい人よ。暴力なんか
 絶対ふるわないわ。逆にそういう目に合っ
 ている人を診ているんだから」
のり子「(不安げに)でも、その人は先生に
 ドールの依頼をしに来た人ですよね」
紗世子「そうよ」
のり子「じゃ、私にドールのふりをしろと?」
紗世子「別にふりなんかしなくてもいいわ。
 そのままの、ののちゃんでいいの」
のり子「(不安げに)でも」
紗世子「あ、ののちゃん、ドールのこと疑っ
 てるな。ドールはののちゃんが考えている
 ようなものではないわ。おもちゃじゃない
 のよ(不敵に微笑む)。ドールは正確無比
 の人工知能を搭載しているの。動きだって、
 まさに人間そのもの。ドールがののちゃん
 のふりをすることは出来ても、ののちゃん
 がドールのふりをすることは出来ないわ(微
 笑む)」
のり子「(少し落ち込み)私はドールにもな
 れないのですか?」
紗世子「(微笑み)そう落ち込まないで。別
 にののちゃんだけじゃないわ。誰もドール
 のマネは出来ない。私たちは完璧な人間を
 作っているようなもの。完璧な人間、この
 世にいて?いないでしょ。今はプログラム
 の補助を必要としているけど、いずれドー
 ルが人の手を必要としないようになったら、
 人間なんて誰も敵わない。ドールはいずれ
 人の上を行く。人はドールに追いつけなく
 なるわ(自信に満ちた表情)」
のり子「(紗世子の自信に圧倒される)」
紗世子「だから、ののちゃんは普通にしてい
 ればいいの」
のり子「(自信なさげに小声で)ばれない?」
紗世子「(吹き出して)絶対ばれないわよ。
 その点は保証する。だから心配しないで」
のり子「…」
紗世子「ののちゃんは、その、人に怯える心
 の問題を彼と一緒に暮らすことで治してい
 って欲しいの。彼、ほんと紳士だからのの
 ちゃんにイヤな思いはさせないと思う」
のり子「…」
紗世子「(ふと気がつき)あ、でも、ドール
 しか愛せないという意味では、彼もまた心
 に問題を抱えている人なのかも知れない」
のり子「…」
紗世子「彼、精神科医でしょ。そのせいなの
 か人と付き合っても、段々、人を患者のよ
 うに見てしまうらしいの。だから、気が休
 まらないんだって」
のり子「私もある意味、患者です」
紗世子「(微笑み)じゃあ、ちゃんと治さな
 いといけないわね。どお、付き合ってみな
 い?決してののちゃんにイヤな思いをさせ
 るようなことはないと思うわ。彼の家で一
 緒に住んでいるだけでいいのよ。ちょっと
 大胆かもしれないけど、彼、何もしないわ
 よ。傍にいるだけでいいんだから。それ以
 上のことは彼は求めたりしないわ」
のり子「(考え込む)」
紗世子「このまま引きこもっていても仕方な
 いでしょ。リハビリのつもりで、どお?」

〇別室(夜)
  黒川治(31)がソファに座っている。
  紗世子が入ってくる。
  治は立ち上がり紗世子に会釈をする。
紗世子「(微笑み)お約束通り、ドールを用
 意しましたよ」
治「すみません」
紗世子「(ドアに向かって)入ってきて」
  のり子がドアを開けて入ってくる。
治「(のり子を見る)」
のり子「(人見知りから治の目が見れない)」
紗世子「どうお?」
治「(感心して)ここのドールは、ほんと完
 成度が高いですね」
紗世子「(紗世子はのり子の傍に行き)そり
 ゃそうよ。元々、ドールは介護福祉目的の
 ために作られてるんですから。黒川さんの
 ように彼女としてドールをお渡しするのも、
 ドールの技術向上のため、研究の一環とし
 て、特例なんだからね。そこのとこわかっ
 てよ(と念を押す)」
治「感謝してます」
紗世子「この子の名前は、のり子」
治「こんばんは、のり子さん(微笑む)」
のり子「(ゆっくりと頷く)」
治「(微笑み)なんか今までのドールと違う
 感じがするなぁ。シャイなのかな」
紗世子「それは褒め言葉と受け取っていいわ
 け(笑う)。プログラムの方は完璧だから、
 優しく可愛がってあげてね(紗世子はのり
 子の背中を押して治の前に出す)」
のり子「(警戒するように治を見る)」
治「(優しく微笑んでいる)」
  見つめ合うのり子と治。
のり子・治(語り)「(治が語る)今思えば、
 それは運命の出会いだった。人が怖くてド
 ールのように愛されたい女と、(のり子が
 語る)人が苦手でドールしか愛せない男。
 (二人でハモる語り)しかし、そのときは、
 この出会いが悲劇になるとは、私たちは思
 ってもいなかった」


      第二回につづく。


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