中川輝光の眼

アトリエから見えてくる情景
paraparaart.com ArtDirector

『19世紀の挿絵画家たちの魅力』を伝える展示を企画しました

2015-06-18 | 文化を考える

数日前、「美術出版社がCCC(TSUTAYA)の支援を受けるそうだよ」と友人から聞いた。私たち美術関係の仕事をしてきた者の多くが、この出版社の恩恵を受けています。それだけに、驚き安堵したのですが、出版社や書店の苦悩は大きい、このような状況が続いています。

『美しい本』が私たちの生活を潤し、それが豊かさの象徴でもあった時代、視覚や触覚(手触り)を愉しませてくれた『大切なモノ』が失われていくのを実感します。

趣味で始めた古書店『月映書房』ですが、「一石を投じてみようかな」と思い立ち、『19世紀の挿絵画家たちの魅力』を伝える展示を企画しました。フランスやイギリスの出版業界変革の時代を知って欲しい。『美しい本』を造りたい、そういった情熱が伝わってくる時代を知らせたい。有能な挿絵画家たちの活躍の場が、この時代にはありました。ギュスターヴ・ドレは、自身の工房を持っていましたし、グランヴィルは絵を中軸にした本を自ら企画し(物語に挿絵を描くのではなくその逆)出版しています。優れた挿絵画家が次々と現れたのもこの時代でした。本の装幀だけを専門にする職人も多く、『美し...い本』があふれていた時代と言っていいのかも知れません。

私の投じた小さな石(意志)が、どれほどの波紋を描くか・・・たいしたこといかも知れませんが・・・。ウイリアム・ブレイクの銅版画やギュスターヴ・ドレの木口木版を詳細に見るとわかるのですが、挿絵画家の立ち位置(理念の拠り所)の明確さに驚き、その観察眼や優れた描写力などに敬意を覚えるのです。これら自立していた作家たちの仕事を見て欲しい、そう思うのです。



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