水川青話 by Yuko Kato

時事ネタやエンタテインメントなどの話題を。タイトルは勝海舟の「氷川清話」のもじりです。

幕末の英傑はお父さんと仲良し

2010-06-20 19:49:36 | 日々是日常
伊豆・韮山の江川邸へ行ってきました。



メールを見直すと、2007年4月28日にみなもと太郎先生の「風雲児たち」を読み始めたようなので、実に3年越しの実現。東京から微妙に近いので、いつでも行けると、ついつい先延ばしにしていたが、行って良かった!!!!!!

みなもとさんが「よくもまあこの一族はこんなに長いことここに住み続けて来たもんだ」というような感想を書いていらっしゃるが(笑)、でも(天気がよければ)富士山は見えるし、気候は温暖だし、米も水もうまいし、緑はきれいだし、いいところです! 

おまけにすぐ近くに、頼朝が少年時代に追放されたとかいう蛭ヶ小島があるんだけど、こんなにのほほんとした土地だったなら、なんだか悲壮感がなんにもないんですけど!と思ったり。

36代江川太郎左衛門、英龍、号は坦庵。「風雲児たち」の中でもお気に入りのこの人。当代当主が42代目という、平安時代の昔から関東一帯を治めて来た家の末裔にして、ちょっと柳葉敏郎に似た自画像を残していて、幕末の教養人だから詩画に長け、幕府よりも先に国防を考え、国防のための製鉄のために反射炉を作り、戦中の保存食としてパンを作り、開明派の集まり「尚歯会」の一員で、国を守るために奔走して奔走して奔走しまくった挙句に(おそらく過労で)54歳で早死にしてしまった人。

この人が明治まで生き延びていたら日本は一体……と思わずにいられない人。

その人が、30代のころ、侠客の扮装をして領内を見回っていただけならまだしも、その変装姿を自ら絵にして残したのはもう、「どう、俺のこれさあ、ちょっとカッコいいっしょ」という若造の自慢としか思えなくて。もしかして坦庵さん、若い頃はブイブイいわせてませんでした?と突っ込みたくなるような様子で。

どう考えても、あの伊豆の土地でそんなに有能で、見栄えも悪くなく、しかも何だったら徳川家よりも家系の古い代官の息子で、ブイブイ言わせないはずがなく。今回、その人の家に行ってみたら、英龍さん31歳で亡くなったご母堂の遺言が展示されていて。

「お前の文武のわざについては少しも心配してません(中略)しっかりと心に刻んでおきなさい。人がことを成し遂げるかどうかは、物事によく耐えられるかどうかで決まります。私が亡き後、公務はもちろん、何事も自分の力を過信してはいけません(中略)このようなことを言うのは、あなたが自分の力を過信していると思っているから言うわけではありません」と、そう息子に病床から語りかけたという資料が。

ということはつまり、英龍さんこと坦庵さんは、やっぱり、ブイブイいわせ気味だったんじゃないかと思いますよ! でなければ死期の迫った母親が30になるかならざるかの息子に、「かならず『忍』の一字を忘れず」と言うでしょうか? 自分の変装姿を絵に描いたりする次期代官に向かって。

「ブイブイいわせてた坦庵さん」のイメージがこれで私に刻まれた。収穫でした。

展示物にはそのほか、坦庵さんが娘に書いた訓示があって。「プリプリと怒った様子を見せてはいけません」というくだりを、案内の人がわざわざ指摘。実際に「プリ々々」とカタカナで書いてあって、笑った。しかも当時から「プリプリ」というオノマトペを使ってた日本人の言語感覚の豊かさよ。

それから、江川邸に併設の資料館でたまたま、英龍さんの父上の英毅さんをテーマにした特別展示をしていて。そこに、絵の得意な息子(英龍さん)が描いた絵に、なにかとお父上が「賛」を寄せた扇絵の写しが、何枚か展示されてまして。展示されてるだけで数枚あるということは、他にもっとたくさんあったはずで。なんなら、英龍さんが絵を描いては「父上、また描いてみたのですが」、父上「おお、なかなかだな」と賛を描く――というやりとりが日常的にあったのではないかと。英龍さんが描いた絵に父上が賛を寄せている扇子やら屏風やら内輪やらが、おそらく伊豆のあちこちに配られていたのだろうなと想像するのは簡単。ふふふ、坦庵さんとお父上、仲良しね……と、これは「風雲児たち」をどれだけ読んでも思いつかない側面が、現地に行ってこそ初めて垣間みることができたのでした。これも収穫。

そしてもう一つ、ほとんど下調べをしていかなかった私たち(同行者が、そもそも私に「風雲児たち」を勧めた人だ)ですが、江川邸を出たら、「江川家墓所」への案内が。「徒歩5分」とあるのはあれは見積もりが控え目すぎるのですが、てくてく歩いて、「どこなんだ」「とりあえず上の方じゃ?」とずんずん登って行ったところにありましたさ! 「源英龍」のお墓!

お花も何もなんの用意もなかったですが、英龍さんのお墓に手を合わせることができて、すごく嬉しかったです。

ありがとうございました。




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