風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

菅さんマニフェスト

2010-06-18 23:26:54 | 時事放談
 今朝の日経一面に踊ったのは、「首相、消費税10%に言及」の文字でした。国の信用危機に発展したギリシャとユーロの動揺など外部環境の変化があったものの、同じ民主党の鳩山政権の時には、次の衆院選までの4年間は消費税率5%を据え置くと言い続けて来た頑迷さと比べると、財政再建に舵を切った菅政権は、民主党を大きく転向させたことになります。
 ことは消費税だけではありません。ガソリンなどの暫定税率の廃止断念、後期高齢者医療制度の存続、こども手当ての満額支給断念、高速道路無料化の実施時期を明示しないなど、非現実的と見られて来た政策目標がことごとく修正されたと言う点で、国民としてはやれやれと思うのですが、自民党や第三極と呼ばれる保守系の弱小政党にとって、対立軸が消滅しかねないという意味で、たまったものではありません。政策的にここまで自民党に近づいてしまうと、クリーンさの点、少なくとも反自民の国民感情が払拭出来ていない現状では、参院選における民主党の優位は明らかであり、朝刊一面は、そんな自民党への衝撃の大きさを言外に匂わせます。
 菅さんは、したたかだったと言うべきでしょう。労組などの特定集団の支持を脱して、広く無党派層に軸足を移すかのような政策を打ち出したこと、とりわけ国民に不人気と久しく考えられてきた消費税率引き上げについて、自民党が10%を言い出した途端、堂々と「自民党を参考にして10%」と便乗したタイミングの絶妙さは、憎いばかりです。問題は、どこまで菅さんが本気なのか、相変わらず選挙対策の便法ではないのか、というところでしょう。
 例えば「第三の道」は、元来、イギリスにおいて規制緩和と民営化を柱とする新自由主義政策を進めたサッチャー政権以来の保守党に対抗するため、左派のブレア労働党政権が掲げた政策ビジョンで、菅さんの場合、公共事業中心の「第一の道」(イギリスの場合は「揺りかごから墓場まで」と言われたかつての福祉国家路線)でもなければ、小泉政権のように行き過ぎた市場原理万能の新自由主義に基づく供給サイド寄りの「第二の道」でもない、そのどちらにも与しないという意味で「第三の道」と呼んでいるようですが、環境・介護・福祉サービスなどの分野で新たな需要を生み出し、経済成長の原動力にしようとするアイデアは、そもそも日本で競争力がない分野に、お世辞にも万能とはとても言えない(菅ならぬ)官がからんで来る限り、第二の公共事業に堕しかねない危険を孕みます。三つ子の魂百までと言いますが、菅さんの政界との係わりは、今から36年前、市川房枝さんを参議院選挙に担ぎ出し、選挙事務長を務め、当選させたところにあります。
 来年度の国債発行額は、今年度の44.3兆円が既成事実化し、これを上回らないこととしていますが、小泉政権の時には30兆円が歯止めだったはずです。更に今回のマニフェストには、財源の明示も工程表もありません。あるのは理念だけ。菅さんの正体はもう少し慎重に見極める必要があるように思います。
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