風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

九月の風

2023-09-30 18:43:11 | スポーツ・芸能好き

 9月末なのに猛暑日を記録するほどの地域がある一方、東京界隈は虫の音が優しく響いて(と、雑音に感じないのが日本人らしさ)、すっかり秋の気配。

 夏の歌と言えば、サザンオールスターズ(の「真夏の果実」)やTUBE(の「あー夏休み」)、更に遡れば井上陽水(の「少年時代」)が浮かぶワンパターンの旧世代だが、夏の盛りを過ぎて秋風が心地よいこの時分、華やいだ夏の暑さを懐かしむ九月には忘れられない曲がある。

 竹内まりあの「September」(1979年)や、Earth, Wind & Fireにも同じタイトルのダンス・ミュージックがあるが(1978年、もっともクリスマスに9月を懐かしむという趣向らしい)、私にとってはラテン・ジャズ、ラテン・フュージョンのピアニスト・松岡直也の「九月の風」(1982年)が忘れられない。同名のベスト・アルバムは、オリコンチャート第2位、半年間30位以内にチャートインするなど、インストゥルメンタル・ミュージック界では珍しいヒット作となった(Wikipedia)。

 松岡直也と言っても、もはや知る人は少ないだろう。中森明菜の楽曲の中ではちょっとユニークな「ミ・アモーレ〔Meu amor é・・・〕」の作・編曲を手掛けたことがあるし、わたせせいぞう作『ハートカクテル』(日テレ)の音楽を担当したこともあり、珍しいところではプロレスラー・藤波辰巳(現・辰爾)の入場テーマ曲「Rock Me Dragon」を作曲したこともある。学生時代、長距離ドライブでBGMに松岡直也を流したら、クラシック好きの友人から「軽いな」の一言。当時、ジャズに傾いていた私は仕方なくWeather Reportに代えると、その友人曰く「これはまだマシやな」。そりゃクラシックの重厚さと比べれば軽いのかも知れないが、音楽の良し悪しは別であろう。松岡直也さんはラテンに傾倒されていたとは言え、底抜けに明るいだけではない、日本人の心に響く叙情がある。

 サザンオールスターズにも同名タイトルの曲(1993年)があるが、サザンには歌詞に「九月の風」が登場する、隠れた!?名曲がある。「I’ll Never Fall in Love Again」(1983年)で、当時の私の傷心を癒してくれた(笑)という意味で思い出深い。九月はとげとげしい暑さが和らいで曖昧な秋へと移ろい、宴が終わった侘しさが心に沁みて浮かれ気分が名残り惜しくもあり、落ち着いた季節へと向かう静けさが心を優しく逆撫でする。

コメント
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