風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

なおみ節 健在

2019-01-26 23:44:58 | スポーツ・芸能好き
 大坂なおみ選手が、あれよあれよという間に全豪オープンでも優勝してしまったことには驚いた。昨年の全米オープンに続くもので、何と言う軽やかさだろう。グランドスラム連覇は、2014年の全米から翌年のウィンブルドンまで4連勝するという圧倒的な強さを誇った当時のセリーナ・ウィリアムズ以来というが、初優勝からの連覇となると2001年全豪・全仏を制したジェニファー・カプリアティ以来6人目、18年振りの快挙だという。これで明後日に発表される世界ランキングでは日本選手初と言わず、男・女シングルスを通じてアジア勢初の世界ランク1位となることが確定したらしい。21歳にしては幼くも見える日頃の愛くるしさとは何ともギャップのある、ニュー・ヒロインの誕生である。
 今回も「なおみ節」は健在だった。
 大会前の記者会見で、「私は精神的に3歳児のようなところがある。人間的に成熟することが最大の目標」と語ったことに対し、ある臨床心理士は、3才のメンタルとはなんともうまい譬えだと褒めた。3才のメンタルといえば、自己主張が強くなる時期だが、まだまだ自分自身を抑制することが十分にできない時期でもあり、全米オープン優勝では、勝利の要因を「我慢」と答えていたのは、メンタルがまだ3才だったとしたら、感情を抑制するのがまだまだ難しい場面もあったのだろう、その時の感覚としては、感情をコントロールするというより、我慢するというイメージだったのだろうと、納得の解説をしている。
 ところが準々決勝後のインタビューでは、大会を通じて精神的に成長しているかと問われて、「1歳くらい成長したかな。4歳ね。おめでとう、私」と、なんとも素っ頓狂な受け答えをした。先ほどの臨床心理士は、4才のメンタルについて、自発性が出てきて、色々なことを探求し始める時期であり、相手の心の動きを読めるようになったり、様々な課題を乗り越えられるようになったりすることで自分への信頼感も生まれてくるので、以前より動揺が少なくなる時期でもあるという。確かに、ラケットを投げつけたり、感情の起伏が激しい様子が見られたりしたが、その後は、感情に飲み込まれそうになる手前でコントロール出来ているようだ。全豪オープン開幕前にメンタルについて話した時に、彼女が使った言葉は「我慢」ではなく「均衡」だったあたりも、符号していそうだ。
 同じく準々決勝後のインタビューで、「Is this live(生放送)?」と確認して、カメラ目線になると、笑顔を浮かべながら「おじいちゃん、お誕生日おめでとう」と日本語で祝福したそうだ。準決勝後に、日本の祖父母からメッセージが届いているか聞かれると、「日本、今何時?」と逆に質問し、インタビュアーが「夕方ですね。午後4時くらい」と教えると、「はあー、なんかおはようじゃない? おはようございます、おじいちゃん、おばあちゃん」と話したという。この呆け具合いは大物だ。
 「飾らない人柄、はにかんだ笑顔。そしてユーモアあふれるスピーチは、豪州のファンもとりこにした」とある記者が書いていたが、それを象徴するように、表彰式後、ボールキッズたちとの記念撮影時や、優勝カップを前にした記念撮影でも、コート上に正座し、はにかみながら笑顔を見せていたというから、今までにない、どう見ても“らしくない”自然体のヒロインには、彼女ばりに英語で表現するならCrazy for you・・・という感じかな。
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ブレグジットの混乱

2019-01-26 00:31:53 | 時事放談
 英国ではEU離脱を巡る混乱が続いている(メイ政権だから、メイ走=迷走中!?)。英国の下院は10日ほど前、首相のEU離脱協定案を、賛成202票/反対432票という圧倒的な差で否決した。私はもともとブレグジットについては楽観していたのだが(英国を懲らしめたいEUの気持ちは分かるが、ドイツなどのEU諸国だってハード・ブレグジットだと困るだろうに)、このまま「合意なき離脱」に突入するリスクが高まって来たように思えて、決して他人事とは言い切れない状況だけに、心配になってしまう。
 今さら言っても仕方ないのだが、そもそもこんな大事なことを国民投票に諮ったこと自体が問題だったと、嘆かわしくなる。キャメロン元首相の罪は重い。何故、今またそう思うのかと言うと、英国の調査会社ユーガブが今月8~9日に実施した調査によると、この期に及んで「合意なき離脱」の意味を「明確に理解している」との回答は30%しかなく、「概ね理解している」44%、「聞いたことはあるが意味は分からない」16%、「聞いたこともない」1%、「分からない」9%という結果が明らかになったからだ。ここで「概ね理解している」44%は、一体、どこまで「明確に理解している」のだろうか。英国人気質に詳しい訳ではないが、こうした設問での回答という性格上、「明確に理解している」のではない「概ね理解している」とは甚だ怪しく思えてしまう(苦笑)。「ハード・ブレグジット」や「ソフト・ブレグジット」などの用語を「明確に理解している」との回答となると、それぞれ24%、18%と一段と低くなる。本当に英国は大丈夫だろうか・・・
 いくら歴史が進歩してきたとは言え、EUという枠組み、すなわち国家主権の一部を放棄する統治のありようは、現段階において本当に良いのか?という議論は大いにあり得ると思うが、だからと言って正確に理解していたわけではないであろう英国・国民がなんとなく(場合によってはフェイク・ニュースに騙されて)選んだ安易な方向に突き進んでよいものかは疑問がある(だからと言って、こんな状況ではもう一度国民投票に諮るという選択肢にも疑問がある)。国民投票で民意を問う、とは如何にも民主主義的で聞こえがよいが、そもそも直接民主制なるものは古代ギリシャの都市国家のような小規模で単純な場合にこそ成り立つものだ。高度化し複雑化した現代社会にあって、国民の一人ひとりが政治的な事象を正確に理解していると期待するのは幻想でしかない。甚だ誤解を招く言い方になるが、代議制民主主義という仕組みによってプロの政治家やプロの官僚に任せた方がよい局面が多いのは事実だろう(政治家や官僚のレベルがどうかは、ここでは問わないことにする)。
 第二次世界大戦のときのエピソードだと記憶するが、言わばエスニック・ジョークの類いなので、話半分・・・最も強い軍隊は、アメリカ人の司令官と、ドイツ人の下士官と、日本人の兵卒で構成される、とは、実によく出来ていて感心する(苦笑)。こう言っちゃあなんだが、身の危険を晒して国という抽象的な実体を守る軍人という職業につく人のレベルは、世界標準では決して高くない。そんな世界で、日本の自衛隊のレベルの高さは際立っていると言われる。
 ことほど左様に、日本のように国民の純度が高く、教育が行き届き、しかもその教育は、よく言われるように、エリートを育てるのは苦手かも知れないが平均点を高める、要は落ちこぼれをなくす類いのものであればこそ、分厚い中間層が「おもてなし」をはじめとする日本の高品質を支えていると言える(最近は以前ほどではないにせよ)。しかし、そんな日本でも、世論調査を見る限り、モリ・カケ問題といい、安保法制問題といい、およそ国民一人ひとりが事象を正確に理解しているとは思えず、朝日新聞や毎日新聞や東京新聞のような、日本的な意味での所謂リベラルなメディアの影響を受けて、ムードに流されていそうな気配を濃厚に感じるのは私だけではないだろう。
 まこと政治は一筋縄では行かない。私がひねくれているだけなのだが、日本的な意味での所謂リベラルがナイーブに信頼するようには民主主義なるものを信頼出来ない。ブレグジットの「メイ走」を見ていると、余計にそう思う。今さらなのは百も承知で、(民主主義は最悪なシステムだが、歴史上の他のどの政体よりもマシだと言った)チャーチルが生きていたら、さて、どんな言葉を尽くして嘆いただろうかと、思わざるを得ない。
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