風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

原発と放射線を巡る問題(2)

2011-07-30 02:28:02 | 時事放談
 日本では、放射線や原発問題を巡って、イデオロギー化した発言が多いと、以前、ブログで述べました。結果として、言いっ放しや決めつけなど、議論として噛み合わない一方的な主張や感情的な主張になってしまって、始末が悪い(と私が一人憤慨しているだけかも知れませんが)。こうして建設的な議論はもとより、ある一定の評価が定まるのもまだ先の話のようですが、アメリカでは、一足先に米国の教訓とするための報告書が出ているのを、岡崎久彦さんが紹介されていました。
 米国の有力シンクタンクであるヘリテージ財団が、東日本大震災への日本の対応ぶりをレビューしたもので、「政府が福島原発の状況につき、満足できる情報を提供できなかったので、国民の恐れと不安感を高め、世界のメディアの憶測や誤報を招いた」とし、「日本政府の対応の中で、最も問題だったのは、低レベル放射能にどの程度リスクが有るかを、有効に伝えることができなかったことであった」と指摘しています。これについては、「混乱が生じる理由の一つには、低レベル放射能についてはいまだ多くの科学的論争があることである」と、慎重に留保しつつも、「低レベル放射能の危険は一般に考えられているものより遥かに少ないかもしれない」「現在の基準が危険を過大視していることを示唆する科学的証拠もある」と述べているそうです。
 後者については、2008年の米ミズーリ大学名誉教授のトーマス・D・ラッキー博士の論文で触れたホルミシス効果が有名だそうで、広島、長崎の被爆者8万6543人の健康状態の追跡調査の結果、被爆者の両親から生まれた子供に遺伝子上の奇形児は1人も見つかっていないとか、低レベル放射線を浴びた母親から生まれた子供たちの方が、一般平均と比較した場合、死産、先天性異常、新生児死亡などの比率が低いことから、結論として、低線量放射線は日本の原爆生存者の健康に生涯にわたり寄与したことを示しているというものです。ホルミシス効果とは、生物に対して有害なものが微量である場合は、逆に良い効果を表すという生理的刺激効果のこと、つまり、毒を薄めると薬となるということで、ラッキー博士の報告によれば、がんについては、(一般に言われている1ミリではなく)20ミリシーベルトが最適の数値ということになり、東京大学の稲恭宏博士は、塩をどんぶり一杯食べれば人間は倒れるが、少量の塩がなくては生きていけないと言い、その論文で60~100ミリシーベルトが人間の健康にとっても最適の数値だと言っているそうです。
 俄かに信じがたい説ですが、初期の地球が、オゾン層で覆われる以前は太陽の核融合による熱とともに膨大な放射線を浴び、その中で生命の進化を宿してきたことを考えれば、考えられなくもありません。それだけ放射線の問題については科学的事実の積み重ねがまだ少ないということでしょうか。福島第一原発の問題が起こって、アメリカやフランスが真っ先に専門家を派遣して日本を支援するかに見えたのは、よく言われるようにGEやアレバなどの放射線問題対応企業の売り込みのほかに、原発問題のデータを取ることがそもそもの目的だったのかも知れません。
コメント
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