風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

沖縄

2010-11-26 00:58:51 | 時事放談
 今週末は沖縄県知事選挙の投票日です。現職の仲井真氏と前宜野湾市長の伊波氏との事実上の一騎討ちと言われていますが、この一年、民主党の鳩山政権にさんざん振り回された結果、仲井真氏まで普天間基地の県外さらには国外移設を主張されて、争点がなくなり、いまひとつ盛り上がりに欠けると伝えられています。
 だからというわけではないのでしょうが、今日の報道ステーションで、沖縄に関する面白い特集をやっていました。
 沖縄の地政学的な戦略的重要性は、実は正確に説明出来る人は少ないのではないかと思います。鳩山さんもようやく理解したと言いつつ、本人の口から説明されることはありませんでした。
 かつて中国・人民解放軍内部の国防方針として、九州を起点に、沖縄、台湾、フィリピン、ボルネオ島にいたるラインを第一列島線と呼び、2010年までに中国の防衛ラインを第一列島線に敷き、その内側の南シナ海・東シナ海・日本海へのアメリカ海・空軍の侵入を阻止することを目指して来ました(今や中国は伊豆諸島~小笠原諸島~グアムと続く第二列島線へと勢力圏を拡大することを狙っています)。アメリカもかつて冷戦時代にアジアにおけるソ連封じ込め戦略の一環で、アメリカの防衛ラインをアリューシャン列島、日本列島、琉球、フィリピンを結ぶ線に設定するというアチソン声明を出しました。朝鮮半島はその外にあり、仮に北朝鮮が韓国に侵入してもアメリカは朝鮮半島防衛に出てくることはないと勘違いした金日成が朝鮮戦争を勃発したことでも有名な、声明です。沖縄はそのラインの中核に位置するのです。
 沖縄が、安全保障上、重要な位置を占めるということは、同時に、物流や観光の上でも要衝に位置するとも言えるわけで、報道ステーションでも、沖縄が物流拠点また観光地として飛躍する可能性があることを指摘したのでした。北は、ソウルから北京・上海・台湾・香港などの中華圏の主要都市だけでなく、成田・羽田・関空まで、また南は、マニラや遠くバンコクに至るまで、そのいずれの都市に対しても飛行機で4時間でリーチ出来るのは沖縄だけだと言うわけです。その証拠に、ANA Cargoはこの半年の間に、沖縄を貨物集積のハブとする仕組みを構築しました。所有する(9つの内の)8つの航空貨物機を深夜に各地から沖縄に集め、荷物を仕向け地毎に組み替えた上で、夜明け前までに沖縄を出発して各地に戻すわけです。今では国際貨物取扱量で沖縄は成田・関空に次いで日本第三位に躍り出たそうです。
 私が初めて沖縄を訪れたのはかれこれ20年以上も前のことで、観光バスに揺られながら、沖縄の三分の一を占めると言われた米軍基地が延々と続く光景に、沖縄が戦後置かれてきた現実を目の当たりにして愕然としたものでした。かつて湘南海岸に住んだことがあり、厚木基地から戦闘機が飛び立つ通り道に当たり、イラク戦争の頃には、絶え間ない騒音は半端ではありませんでした。沖縄の苦労を慮ったものです。しかし、沖縄経済の基地への依存度は、1972年の返還当時の15%から、今では5%まで下がっているそうです。観光客は年間570万人、まだまだポテンシャルを秘めていると言えます。番組では香港の旅行代理店の視察旅行の模様を追いかけ、沖縄の自然の美しさに今更ながら驚嘆するとともに、タイのプーケットは典型的なリゾート地であり、沖縄はショッピングには便利だけれども、沖縄界隈の離島は自然が一杯で素朴な風景が残り、観光資源として有望だと見直す声が挙がっていたのを報じていました。滞在型観光と組み合わせた医療ツーリズムとしても魅力的だと、解説の一色さんが話していましたが、その通りだと思います。
 モノの世界では、市場が成熟し技術で差がなくなると、デザインを含めたブランド力が勝負を決めます。この点で、日本の時計業界は、長年、スイス勢の後塵を拝し苦戦して来ましたが、自動車業界は技術志向ながら圧倒的な信頼性により不動のブランド力を築き上げてきました。観光においても、家電製品や化粧品をはじめとするホンモノの技術だけではなく、日本的な自然の豊かさや、日本的な街並みの美しさ、治安や国民の人柄の良さといった社会・文化的な質の高さが、観光産業における競争力の源泉たり得ると思います。基地だけではない沖縄の今後に心から期待したいと思います。
コメント
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