風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

近くて遠い国

2010-09-22 00:50:00 | 時事放談
 今月7日、尖閣諸島近海の日本の領海内で、中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した事件で、日本は、国内法に則って粛々と漁船船長を公務執行妨害容疑で逮捕し、さらに勾留を10日間延長したところ、起訴を視野に入れていると見られることから、中国側は反発を強め、反日デモが繰り広げられる模様が、日本のメディアでも、連日、センセーショナルに報じられています。
 これに対し、中国通の知人は、2005年の反日暴動ですら一部の右翼の仕業であり、良識ある多くの市民は冷静だったので、今回も似たようなものだろうと気にしていませんでした。世間でも、識者を中心に、日中は経済的に緊密な補完関係にある以上、日中の対決がエスカレートすることはあり得ないし、せいぜい反日が反政府に転じることがないよう、中国政府としてはそれなりに強行姿勢を見せる必要がある程度だろうと楽観して来たところがありました。
 ところが、中国政府が打ち出した日本への嫌がらせとも言える対抗策を見ていると、駐中国日本大使をわざわざ休日の深夜に呼び出して抗議したのに始まり、東シナ海ガス田の共同開発をめぐる交渉の延期、日中間の閣僚級以上の交流停止、航空路線の増便をめぐる航空交渉の中止、日本への中国観光団の規模縮小など、反応は予想を遥かに上回る過剰なものです。中国が大国としての自画像に必ずしも自信がもてないことの裏返しではないかと私は思いますが、中国が「核心的利益」と呼び、自国の内海化を進める南シナ海に加えて、東シナ海をも、力を背景に、本気で勢力圏に置こうとする傲慢さが鼻につきます。
 こうした日中関係、とりわけ中国側の過敏な反応が、日本人の対中感情に与えるマイナスの影響は小さくありません。
 言論NPOが実施したアンケートがあります。日中双方の一般市民は余りにお互いのことを知らな過ぎるようで、一般の日本人の7割は中国のことをいまだに「社会主義、共産主義」と認識し、一般の中国人の4割近くは日本のことをいまだに「軍国主義」と認識しているというのですから、驚かされます。5年前の対日暴動から、日本人・中国人の対中・対日それぞれの感情は改善しているようですが、それでも、日本人の中で、中国に対して良くない印象を持っているのは11%、どちらかと言えば良くない印象をもっている61%と併せると、実に72%は余り良くない印象を持っており、他方、中国人の中で、日本に対して良くない印象を持っているのは19%、どちらかと言えば良くない印象をもっている37%と併せると、依然56%は余り良くない印象を持っているようです。また今後の両国関係が良くなっていくまたはどちらかと言うと良くなっていくと考える日本人は41%、中国人は60%と、余り高くありませんが、両国関係は重要またはどちらかと言うと重要と考える日本人は82%、中国人は93%にも達し、理屈ではそれなりにお互いを認識し合っていることが読み取れます。
 このアンケートで気づくのは、日本人の対中感情の方が、中国人の対日感情よりも格段に良くないことです。これは中国経済が日本経済を凌駕しつつある現状に対する感情的な反応を映していると言えなくもありませんが、基本的には、日本人の対中感情が、最近の中国による軍拡、餃子事件、領土問題、食料や資源確保などに見られる自己中心的な行動に左右され、なかなか改善しにくい状況にあるのに対して、中国人の対日感情の多くは歴史問題に起因し、交流の拡大に伴って改善し得る性格のものだからと考えられます。
 今回の尖閣諸島を巡る中国の過剰な反応は、朝貢外交と見紛うような低姿勢の小沢さんが党代表戦に敗れ、中国に対して厳しい前原外務大臣が就任したこととは無関係ではなく、アメリカの識者を中心に、日本の外交姿勢をテストしているとの見方があります。中国では、円を買って円高に追い込むべきとの過激な論評も見られるのは、ちょっと見苦しいほどであり、日本はこうした挑発に乗ることなく、圧力に屈することなく、毅然とした対応をして欲しいと思います(国際世論を味方につけて!)。
コメント (2)
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