My Life After MIT Sloan

組織と個人のグローバル化から、イノベーション、起業家育成、技術経営まで。

世の中にはSとNの二種類の人がいる

2010-02-17 15:56:29 | 8. 文化論&心理学

SとMとか、そういう話じゃないです。残念ながら。
ちなみに私はエ・・・。いや、なんでもないです。
あと磁石とかじゃないよ。

このSとNというのは、MBTI(Myers-Briggs Type Indicator)というタイプわけで使われる分け方。
(後注参照)
一言で言うと、S(Sensational:直的)が事実から積み上げでモノを考える人のことで、
N(Intuitive:直的)が結論や仮説からモノを考える人。
で、Sの人とNの人は、モノを考えるときに重視するものが全然違う。

仕事をしていて、相手が現実や事実を軽視するのでいらっとすることはないだろうか?
細かいところを相手がいつも見落とすので、何で見落とすのか分からなかったり。
あるいは相手が仮説やアナロジーばかり言うので、何を言いたいのかさっぱり分からない、という経験はないだろうか?

逆に、相手が事実や数字ばかり並べて、「要は何が言いたいのか」が分からず、通じ合えなかったことはないだろうか?
細かいところばかりこだわって説明するけど、大局観がないのにいらっとしないだろうか?

こういうのは、SとNの性向の違いから来ている。

Sの人は、いわゆる現実主義者。
将来よりも、今現在をどうすべきかが重要。
ふわふわした理論よりも、事実とか数字とかファクトとかを重んじる。
物を考えるときも、事実などから積み上げでものを考えていく。
自分の五感で感じることを楽しむ(これが「直観」のゆえん)
具体性を重視する。知識やすでに持っているものを重視する。
口癖は「厳密には」「詳しく言うと」など。

Nの人は、いわゆる理想主義者。
現在よりも常に将来を見ている。
事実や数字の羅列より、それを説明する理論やそこから出て来る大局的な意味合いを重視する。
物を考えるときは、仮説思考で、上からトップダウンでモノを考える。
組織などでも自分の周りより、会社全体、世の中全体がどうなってるかが気になる。
空想を好む。アナロジーが好き。直感やひらめきを重視する。
「要は・・・」「結局・・」などのまとめワードが口癖。

このSかNか、というのは思考方法の好みの問題であって、能力のことではない。
世の中には、性向としてはN的でも、ちゃんとファクトから積み上げでも物を考える、S的な能力のある人は多い。
ただ、どっちが好きか、と言われたら、仮説思考で考えるのが圧倒的に好き、というのがNだ。
Sがいい、とか、Nがいい、というのもない。
能力としては両方あるのが理想。

世の中のほとんどの人は、SとNの両面性を持っていて、どちらかが強い、という感じ。
だけど、S性向が超強い人と、N性向が超強い人は、だいたいかみ合わない。
だから、相手の性向を理解したうえで、それにあわせてコミュニケーションスタイルを変えるのが大事。

例えば、このSとNの典型的な行き違いを説明する逸話があるので紹介。

S:今何時?
N:もう遅れるよ。
S:違う、いま何時かって聞いてるの?
N:だから早く行かないと遅れるってば!
S:ちゃんと聞いてよ。「今何時何分かって聞いてるの」
N:もう四時過ぎてるってば!早く出ないと。
S:4時何分?
N:5分だよ。
S:なんで最初から答えてくれないの?
N:最初から、もう遅れるって言ってるじゃないか!

Sの人が「今何時何分か」という事実をしりたいというのに対し、
Nの人は「遅れるかどうか」という意味合いの方が大切だと考えており、それだけ伝えれば十分だと考えてる。
別にNが時計を見る能力が無いわけではないし、Sが時間から「遅れる」という意味合いを引き出す能力がないわけじゃない。
このように、事実を重視して、そこから積み上げで考えたいSの人と、
「結局ナンなのか」から考えたいNの人は、うまくコミュニケーションできないことが多い。

ではどうすればよいか?
相手の性向を知り、それにあわせて会話をすればよいのだ。

例えば、相手が事実や数字をよく聞いて来る人であれば、まずは事実だけを抜かりなく答える。
その上で、自分はそこからどう意味合いを出したかを伝えるようにすればよい。
また、細かい事実を見落とさないように気をつけるのがよい。
Sの人は、だいたい細かい詳しい話が好きなので、そういうのを話すと喜んだりする。

一方Sの人がNの上司やお客さんとコミュニケートしないとならないときは、
細かいことにこだわりすぎず、まずは結論から伝えるよう心がける。
明日の糧をどう得るかだけでなく、将来の戦略とかも少しは考える。
Nの人は、理論とか夢物語が好きなので、ある程度は混ぜる。

で、世の中のどれくらいの人がSが強く、どのくれいがNの強い人か、というと、アメリカの調査によると、
Nが25%で、Sが75%だと言われている。
Sの方が圧倒的に多いのだ。
よって、Nの人は特に自分のコミュニケーションスタイルには気をつけないといけない。

最後に、自分がどっちのタイプか、ということだけど、英語には無料でMBTIを診断できるサイトがたくさんあるが(MBTIで検索)、日本語だとこのサイトなんかで簡易的に調べられる。
ただ、こういうサイトだと単なる性格診断に終わってしまう。
本当に
自分の思考タイプに適したリーダーシップや仕事のやり方などをもっと知りたい人は、こういう本を読んでみるとよい。

Please Understand Me: Character and Temperament Types
B & D Books

これはウチの会社で、リーダーシップ研修の教科書として使ってる本。
写真をクリックするとアマゾンのページに行きます。英語です。

MBTIへの招待―C.G.ユングの「タイプ論」の応用と展開
ロジャー ペアマン,サラ アルブリットン
金子書房

日本語。作者は違うけど、これの原本もかなり有名な本。

ちなみに私はかなりのNで、S的な部分も少しある人。
MBTIのテストをやると、N85%、S15%くらい。(これは統計ではかなりN度が強い方)
仕事がコンサルタントなので、仮説だけでなく、事実の積み上げで説明することを訓練してるから出来るけど、日常生活では、ほとんど仮説思考で突っ走る(笑)
このブログ読んでても分かると思うけど、結論や仮説から入って、事実はそれを補強する材料に過ぎないと思ってる。
人と会ったときは余り人の髪型とか服装は見てないで、その人と何を話したか、と自分が空想したイメージしか覚えてない。
人に何か言われたときは、何故そう言うのか、意味合いを深読みするのが好き。
ファクトとか一問一答だけ並べて、「要は何なのか」を言わない人を見るとイラっとする。
けれど、まめ知識や余談が好きなところとかはS的。

以上、SとNの違いで、コミュニケーションがかみ合わないことがあるよ、
でも違いを理解して相手に合わせるとうまくいくよ、という話でした。

(追記)所詮、MBTIは性格診断に毛が生えた程度のものなので、参考程度に利用しましょう。
実際には、SとかNとかは、複数の異なる指標をまとめて言ってるのでムリがあるところも多いです。
(例えば仮説思考と理論が好きなのと空想家はどれもちょっと違うが、同じNでまとめてる)

(追記2)ところで、筆者がNだから、自然とNの方がカッコよく書かれてるかもしれませんが、実際には
「事実も見ないで勝手に解釈」「思い込みが激しい」などの問題も多々あります。
Sのほうが、一般的には仕事も出来る人が多いです。特に若いうちは。
Nの人なんて、そんなにはいないし(25%ですもの)、沢山いたら困るんです(社会が回らなくなります)
Sが強すぎても生きるうえで問題ないどころか、金儲けがうまかったりしますが、Nが強すぎると社会不適合になります。
いずれにせよ、ただの性格診断です(笑)

(注) MBTIMyers-Briggs Type Indicator)とは
E(Extravert:外向的)かI(Introvert:内向的)
S(Sensational:直感的)かN(Intuitive:直観的)
T(Thinking:論理的)かF(Feeling:感情的)
J(Judgmental:断定的)かP(Perceiving:決めない)

の4つの軸により、人間を16種類に分けるという、まあ性格診断に毛が生えたようなものだが、
一緒に働いたり、暮らしたりする上で起こるいざこざや、リーダーシップのスタイルなどを旨く説明できるため、
米国ではMBAとかリーダー養成講座などで頻繁に使われる。

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16 Comments

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うーむ (石川)
2010-02-17 17:00:09
アメリカ人の社会学説は、コミュニティ限定の話が多くて、コミュニティが見えていないで話すと、何を言いたいのかわからなくなると思うぞ。

ようするに、人間というのはコミュニティに属していて、その中のポジションって重要なんだよね。で、きっとMBAやコンサルタントのコミュニティでは、仕事をすすめる上で役に立つのでしょう。

で、日本人であっても、日本に住んでいるのと、海外に住んでいるのならば、コミュニティが違う。ところが、ごっちゃにする人が多い。日本の中でも、コミュニティは、アメリカのように明確ではないけど、ちゃんとある。

なので、私がおもに所属している、所属したいコミュニティでは、SとNの理論は、全部無効です。

勝間さんが強いのは、コミュニティを形成しているところ。そこが、珍しいし、貴重な存在。

だからといって、私は、そこのコミュニティには属していない。
偶然 (古都)
2010-02-18 00:40:06
さっき大学でcareer developmentの授業があったんですが、MBTIやりました!!!!

それなのに題名ではじめ磁石の話かと笑

S・NとT・Fの区別がうまくついていなかったのですが、LiacさんのS・Nの説明でT・Fとの違いも少しわかった気がします。ちょっとreductionismですが、こうやって性格の説明がつくのって面白いですね。


>石川さん
今までの石川さんとLiacさんの議論を知らないので理解できないだけかもしれないのですが、日本にあるコミュニティではSとNの理論は通用しないということですか?わたしの場合ですが、わたしはSで両親がNなのでケンカになることが多いです笑。だから日本でもいろいろなレベルでこの説明に納得できる場面もたくさんあると思うのですが、どうですか?
Unknown (kentosho)
2010-02-18 04:05:58
おっしゃるとおり,性格をSとNの2タイプに分けるのだとするならば,両方を鍛えなければいけないです.木と森と両方を見ないと真実は見えてこないです.しかし,この理論自体随分とN指向な理論ですよね^^;.自分は間違いなくNな人間ですが,自分の中Sの部分が,人の性格ってそんな単純じゃないよーと叫んでいます.
世の中に100%Nの人とかはいないので・・・ (Lilac)
2010-02-18 05:13:42
>石川さま
アメリカ人でもこのMBTIを使うことに反対する人は大勢いるので、アメリカだから日本だから、というものでもないかな、と思ってます。
例えばウチの会社ではこのMBTIをリーダーシップの研修で使ってますが、バカにしてるアメリカ人の同僚もたくさんいます。
MBTIはユングの理論を使って、人間の様々な性質のうちたったの4つの軸だけを取り出してタイプ分けしてるだけですからね。
(数学的に言えば、固有地の大きい4つの軸を取り出している、という感じです。直交してるかは知りません)
それ以外の軸の方が大事だ、という局面も世の中にはたくさんあるので、全てに当てはまるものではないと思ってます。

しかしこの話は知っていると仕事や家庭などでのコミュニケーションは結構やりやすくなると思いますよ。
知ってて損する話じゃない、というところでしょうか。

>古都さま
ええ、S/Nは一番難しい概念で、確かにT/FのTの部分と区別つきにくいところがありますよね。
私はかつてMBTIオタクでしたから、結構詳しいんです(へへ)
T/Fもよく誤解されますが、Fが必ずしも感情的・人情的、というわけでなく、判断をするときに、相手の気持ちを重視するかどうか、とかいうことなんですよね。
これも、能力とは別で、Tだからと言って相手のキモチが理解できないとか、Fだからと言って論理的な判断が出来ない、とかではなく、どちらを好むかという問題ですね。

>Kentoshoさま
上にも書きましたが、おっしゃるようにSとNにはいろんな側面が混ざっているうえ、いくつもの要素の共通点を取り出してるだけなので、これだけで判断するのは困難ですね。
しかし知ってると役に立つでしょう、と言う程度です

ええ、こういうタイプわけとかが好きなのはNの人の特徴ですし、更に私がNなので、かなりN的な文章になってることでしょう。
差し出がましいんですが。 (名無し)
2010-02-18 08:58:04
SとN、どっちも「直感的」になってます。
S(Sensational)は「現実的」または「感覚的」では?
これ、直感と直観でいいんです (Lilac)
2010-02-18 09:04:59
>名無しさん
ご指摘有難うです、でもこれタイポじゃなくて、本当にそう訳されるらしいです。
「感覚的」と訳してもよいかと思います。

確かにこのブログ、結構タイポ多いんで(まさにN)そう思われるのは納得ですが(笑)
いわゆる直感は直観のことなので (通りすがりのS)
2010-02-18 11:15:23
文中の直観と直感の使い分けがぜんぜんできてませんね.

観念に従う=直観=iNtuitive
感覚に従う=直感=Sensational

この分類だと,一般的に「直感」といわれていることは「直観」に属するので,混乱するのですね.

ワタシはNです。 (hidezumi)
2010-02-18 11:58:14
ENTPです。ユングとの関連で補足です。(誰にも頼まれていないけど…)

ユング派では、内向・外向を区別し、タイプ論という枠組みで、直観・感覚、思考・感情までは使うのですが、PとJにあたるものがありません。いくつもある性格指標を統合したわけでもなく「うまくは説明できないが、だいたい4つくらい」みたいなことを言っています。4タイプを2つづつに分けるみたいなことも出てきません。だから直行するかどうかはわかりません。

16タイプに分けて理解するのは「人には個性があるので、それぞれに合った対応をしよう」というところまではよいのですが、その後、ヒトが成長する上でそれだけでは具合の悪いことが出てきます。

例えば、この文章では「職業的に訓練されたNなので、Sもわかる」と言っていますが、ヒトは4つの機能のうちで得意なものから選んで使うので、結果的に最後の機能が、なんとなく使えずに残ってしまいます。これを「劣等機能」といいます。

例えば、いつもはFを使って生きているヒトが、時々妙なへりくつ(誰も納得しないのに…)を言い出したら、劣等機能を使っている可能性が高くなります。劣等機能を「躾けられない馬のようなものだ」という学者もいます。「劣等なのだ」と認めて、より円満な成長を目指そうというのが、中年期以降の成長に重要なのだと説明されます。

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ということで、ここから口調が変わります。

ところで、このNとSの比率、どうもかなり昔の統計らしいんですよねえ。wikipediaにも、ENTPは全体のx%みたいな数字が出てきますけど。日本人SとJだらけじゃんって「直感的に」感じるんですけど、国別の統計が見つからない…。だれか知りませんかね。
初めまして。 (ken-t)
2010-02-18 16:20:09
初めまして、テキサスの大学に在学中のken-tです。学部4年生です

以前履修していたリーダーシップの授業の一環で私もMBTIのテストを受け、career reportという診断評のような物まで頂きました。当時は、診断された結果と自分が思い描いていた結果にどうも合点がいかず、暫く放置していたのですがこのトピックを拝見し再度見直してみました。

診断結果はESTJだったのですが、今の自分とMBTIのテストを受けた当時の自分を遡って考えてみると、確かにESTJの性質が出ていました!!
これには正直驚きました。時間がたち過去を振り返ってみることで、自分の性質に気付いた気がします。診断結果を見直す機会を頂き、ありがとうございます。

また、MBTIの他にも授業の一環でEmotional Competence Inventory(ECI), Fundamental Interpersonal Relations Orientation(FIRO-B)やMultifactor Leadership Questionnaire(MLQ)などのテストも受けました。特にMLQは360度評価を用いたテストだったので、自分が考えている自分と、他の人から見た自分を客観的に捉えることができ、とても興味深かったです。

余談ですが、毎日ブログ覗かせて頂いています。日本で就職する予定ですが、アメリカのビジネススクールで勉強したく、また戻って来たいと思っています。授業はもちろん、論文やTAのお仕事、課外活動と大変お忙しいとは思いますが、今後も面白い・興味深いブログ楽しみにしています。それでは。
がくっ。。。 (かっしー)
2010-02-19 02:13:31
MBTI認定ユーザーかつESTJです。間違った表現が多いうえに「ただの性格診断です」って、あんまりです(苦笑)。

MBTIによるタイプは、簡易診断サイト(MBTIではなくて単なる『もどき』)や本を読むだけでは理解できません。興味を持たれた方にはぜひユーザーからのフィードバックを最低2時間(できればグループで演習つきで)受けていただきたいです。

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