My Life After MIT Sloan

組織と個人のグローバル化から、イノベーション、起業家育成、技術経営まで。

MBA交渉術の授業の行方 (15.067 Negotiation and Decision...)

2009-05-07 14:22:51 | MBA: MBA授業

4月から始まった、交渉術(Negotiation)の授業が結構面白い。
春学期の後期だけなので2ヶ月だが、週に二回の授業で毎回交渉の実践演習があるので、かなり密度は濃い。

MBAならどこでも交渉の授業はあるし、MIT Sloanにも交渉の授業は3種類くらいある。
そのなかでも、私のとっている授業は、複雑な意思決定を伴う交渉を色々やるのが売り。

実際、3人以上もステークホルダーがいて、20項目以上も議論しないとならないような複雑な交渉で、
どう話を始めて、どこでどう落とせばスムーズに交渉が進み、更に自分が勝てるか、
という感覚がだんだん分かるようになってきた。

例えば、今週の月曜は、実際に1960年代にあった日・米・中の3カ国間交渉をモデルにしたケース。
当時、アメリカ・中国間が直行便を飛ばそうとして交渉をはじめ、日本を通過しないと飛ばせないので日本を巻き込んで行われたものだそうだ。
上海・北京以外に自国の空港を増やしたくないが、日・米には航空便を飛ばしたい中国。
自国の航空会社の数が飽和しているので、他国の航空会社を入れたくないが、自分は日・中に便を飛ばしたいアメリカ。
羽田がいっぱいなので、通過するだけの便なんか入れたくないが、アメリカと中国に便数を増やせるならメリットがある日本。

三者交渉なだけではなく、決める項目も20項目以上ある。
各国間の航空便の数。開く空港の数。
日本からアメリカに飛ばす航空会社を増やせるか。
中国の空港の修復に誰が金を出すか。
中国の空港のコンピュータシステムは日米のどちらが売るか。
宣伝はどの国で打つか。
ハイジャック防止法に調印するか。

初めてこの授業を取った先月のはじめ頃は、中古車の売買の交渉とか、決める項目が値段だけ、みたいな簡単な交渉をやっていた。
それがこのひと月で、10個も交渉の演習をやって、だんだん慣れてきたらしい。
こんな複雑な交渉を、英語で出来るようになるなんて思っていなかったので、やっぱりやればやるだけ力がつくものなのかもしれない。

複雑な交渉のスキルが分かってきた、というのも良いが、
何よりこの授業を取ってよかったのは、自分の強み・弱みが分かったこと、
交渉力は語学の問題ではないこと、
そして、世の中にはすごい!ひとがいる、ということが分かってきたことじゃないか。

強み・弱みで言うと、どうやら私は、論理的にサクサク進む交渉は圧倒的な強さを誇るらしい。
特に一対一の交渉に強い。
相手がネイティブであろうが、先に条件を提示して来ようが、
色々なところから論理的に突いて、相手の型を崩し、自分の型に組み直してしまうのが勝因らしい。

交渉術では常套手段であるアンカリング
(自分が先に条件を提示することで、相手を自分の思考の幅に入れてしまう手段)
は授業でもやったので、誰もが先に条件を提示したがる。
なので、私は相手に先に型を作らせてあげて、安心させた後に、
それを論理的に崩しにかかり、自分の型に組み替えてしまう、という方法を取る。

なんか自分の麻雀の打ち方に似てるなー、とちょっと思った。
私あんまりリーチしないもんね。

一方、相手が論理では通じず、だだをこねたり、交渉が長引くようなケースだと、
面倒になって、早く終わらせようとして、大幅に譲歩してしまい、負けてしまうらしい。
そういえば、麻雀でも西入とかすると弱いのであった。

あと、相手が感情的になって怒ってきたり、泣きそうになってきたりすると、
びっくりしてしまうというか、情にほだされて、譲歩してしまい、騙されて負けたことが2回くらいあった。

自分の強み・弱みが分かるって大切だと思った。
交渉を取り巻く環境をどう制御するかが、勝敗に大きく影響するということだし、
相手が苦手なタイプか判断して、十分注意して臨むことが出来る。

しかしそんなことよりも、世の中にはすごい交渉の仕方をする人がいる、という発見がやっぱり大きい。
例えば、このクラスにいる、あるラテン系の女の子
その子と交渉した人たちから、以前から
「彼女は本当に、すごい押しが強くて、とにかく大変だ」とうわさに聞いていたのだが、
何と押しが強いだけではなかった。

私が始めて彼女と交渉したのは先週の月曜。
2対2の交渉で、私はアメリカ人の工学部の男性とペア、
彼女は別のアメリカ人のMBA2年生で、押しの強いことで有名な女の子とペアだった。
そのときは、すごかった。

どんなに論理的に考えられる譲歩案をこちらが提示しても、
「そんなんじゃマイナスになってしまう。」
「それではもう私たちは倒産するしかない。」
「あなたたちはそれで得をするのかもしれないけど、私たちに死ねと言っているようなものだ」
と口々に言われ続けて2時間半が経ち、泣かれそうになったりして、
流石に消耗してきたので大幅に譲歩して終わった。

すると、私たちのチームは何とクラスで最下位、しかもマイナス3シグマというありえない負け方をした。
(当然相手方は、クラストップで、プラス3シグマだったわけだが)

このクラスの成績は、クラスの平均と比較して標準偏差で割った値(つまり○シグマ)を全部足したものを使う。
つまり勝ち続けていればA+が取れるし、負け続けていればB-になってしまう、きびち~世界だ。

幸い、全12回の交渉のうち、成績の悪い2回は取り除かれる、というルールがあるので、
私たちのマイナス3シグマは成績には反映されないのだが、
普通スコアは±1シグマに収まるらしいのが注目ポイント。

要は私たち、普通の3倍負けてるってことだからね。
押しが強いというより、相手をここまで追い込んでおきながら、それでも「私たちに死ねと言うのか」という度胸がすごい。
世の中にはこんな交渉が出来る人たちがいるのかと感動した。

そして、今日。
また彼女が相手にいるチームと戦って、何と3時間半かかった。
今日の彼女の戦術もまたすごかった。

私も前回の交渉で彼女のやり方については学んでいたので、
彼女が「この値は何があっても受け入れられない」と言えば、
私も「私たちもこの値は受け入れられない」と鸚鵡返しのように返していた。
彼女が当然我々に受け入れられない数字を出してこれ以上は譲れない、と言ってくれば、
私たちも同じように返す、という目には目を戦術である。

そうこう2時間もやっているうち、最後に、だんだん数字が詰められてきて、何とかファイナルアンサーにたどり着いたか、と思ったところ。
突然、彼女が思いついたように感情的に怒り出した。

「この数字では私は損しか出ない。これで行くなら私はWalk away(交渉決裂)する。」
もう詰まりそうなところに来ているのに、この時点でひっくり返すのはかなり意外感がある。

「じゃあWalk awayしよう。」
と私も言った。
こうなると、ハッタリの出し合いみたいな世界。

するとハーバードから来ている私のチームメートの女の子が慌てだして、何とか譲歩案を出そうと頑張り始めた。
その子も若いのかと思うが、慌てると人の話を全く聞かなくなる。
こうなると、彼女の術中にはまったのと一緒だ。

今日のケースはかなり複雑で、同じチームの中でも利害関係がある、というものだったので、
その利害関係を忘れてチームが一丸となって、提案をするのが勝つための戦略なのだが、
それがだんだんと壊されてしまう。

そこから1時間も粘っただろうか。
多少そのラテン系の彼女に有利な方向で展開されつつあったところ。
私のもう一人のチームメートの男性が、何と彼女と同じ事をやったのである。

「君たちがここで決めるなら、僕はWalk awayする」

もうその頃には私は点数はどうでも良くなっており、早く終わらせたかったので、
正直ヤメテクレヨー、という感じではあったが、彼の作戦は少なくとも彼には成功だった。

同じチームでも利害相反する私にはあまりよい結果ではなかったが、
少なくとも、ラテン系のその子から多少の点数を奪うことに成功したらしい。

今日は私は早く帰ってお勉強がしたい気分だったのに、
結果として交渉に3時間半もかかってしまい、すっかり消耗してしまって、お勉強どころではなかった。

この3時間半で何を学んだだろう、と思い返すと、非論理的な相手には同じくらい非論理的に返すことで、少なくとも同じレベルまでは取り返せる、ということか。
これって、交渉のスキルなんだろうか、と疲れた頭で考えたが、世の中にいろんな人がいるということを学ぶのが勉強なのかもしれない、と思い直すことにした。

まあ、そういうのも色々含めて、興味深いクラスです。

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