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つれづれなるままに・・・雑感を

「晏子」

2005-11-03 20:27:05 | 書籍


「管仲」「子産」「楽毅」に引き続き、今度は「晏子」。
宮城谷昌光の描く歴史小説の世界にどっぷりハマッています。
彼の作品は一通り読んでいて、この作品も3年くらい前に一度読んだことがあります。

国のために力を尽くした晏弱・晏嬰父子の活躍を描いたもの。
ファンの人がたくさんいるんですね。例えばこちらの
(HP)
これだけきちんとまとめられているものを読んだら 実際に本を手にしなくても
内容が分かった気になってしまいそうです。
斉の宰相を務めた晏嬰がいつも君主に対し諫言を呈し、庶民や士族に愛され、
気軽に「晏子-」と声を掛けられる人でした。
何度も生命の危機に直面するものの「あの男には人望がある。あの男にかまわずにいれば、民の人望はこちらのものになる」「あの臣を殺せば、われらに従う者がいなくなる」と言われ、また司馬遷が『史記』の冒頭で「この人のためなら、馬丁になって仕えたい」と書いたほどの名宰相です。
印象に残った箇所をいくつか挙げたいと思います。

「富というのは、布帛に一定の幅があるようなものです」富にはけじめが必要であると、
貴族全盛の時代に貴門に生まれながら、かれほどきびしく自分を律していった者は
ほかにみない。 鄭の大臣である子産は、知識の汎さにおいて、他の追随をゆるさない、
まさに人文の巨人であるが、鄭国の政権を掌握したあとに多少の傲慢さをみせた。
孔子が子産を尊敬するというのも孔子のなかには知識欲のほかに参政欲もあり、いわ
ば為政において知識を活用したいという願いの目で過去をみれば、子産が輝いてみえた
ということであろう。晏嬰が儒家と対立する墨家を興した墨子にも尊敬されたことは、晏嬰
の人気が貴族階級にとどまらず民衆にもおよんでいたことをあらわしており、晏嬰の名を
民衆が語りついでいったともいえる。子産が人臣から尊敬されたであろうが、愛されたとは
いえない。その点、晏嬰はたぐいまれな仁徳をそなえていたというしかないであろう。


非常に興味深かったのは、孔子が晩年の景公に仕えようとした時に晏嬰が
「儒者は傲慢で、しかも独善である」と彼の官途を妨げたこと。
孔子はずっと恨んだようですが、晏嬰の意見はもっともだと思います。
孔子のような男はつねに自分は正しいとして、他人と折り合おうとしない。さらに儒教の考えは、死者の服喪を重要視し、葬礼に財産をつぎこませようとする。儒者はもともと葬儀にかかわる集団からでてきたら、自分たちはそれでよいであろうが人民にまでそれをおしつけると、風俗をこわしてしまう。斉は礼の国ではなく、利の国である。儒教では、庭を歩くときには小走りするようにし、堂にのぼる階段は一歩あげて他の足をそろえてから、また一歩あげる。また堂上では小走りするような歩きかたをしてはならない。墨子は「先質にして後文なるは、これ聖人と務めなり。」といった。質というものを先にして、文を後にするのが、聖人とよばれる人の務めである。これは文質彬々(ひんぴん)といった孔子の教えと対立する。文は飾りということで、質は実体といいかえることができる。孔子は、文と質が均衡のとれている生活を理想としたのだが、それはあくまで理想であり、現実のゆがみに直面し、それを匡そうとした晏嬰や墨子などの実践者は、理想の高みにとどまっているわけにはいかない。 

 家中の食事の内容に差をつけることをきらい、僕婢とかわらぬものを食べ、市場の近くの粗末な家に住む生活を送っている晏嬰にすれば、葬儀に家が傾くくらいに財産をつぎ込むことを孝行と説く孔子の考えには賛同しがたいものがあったのでしょう。
 ‘しめったところに建っており、せまく、あたりが騒がしく、塵が多い’ と言って
大きな新しい家を景公が建ててくれたというのに
住みやすい家というのは家そのものの構造にあるというより、環境にある。もっとはっきりいえば、隣家の住人にめぐまれた家こそ、住みやすいといえる。
と、家を元の大きさに戻し、別の地に追いやられていた隣人を呼び返す晏嬰。
歴史小説というよりもリーダー論として、読み終わった後、清々しい気持ちになる一冊です。

晏嬰が亡くなり、景公は泣哭しつづけ、葬儀における礼をはずしたので、側近の一人に「非礼である」と言われたのに対し「このようなときに、礼がなにか。わしはかつて、一日に三度晏嬰にいさめられたことがある。だが、聴かなかった。今後、わしにそうする者はいまい。晏嬰を失えば、わしの亡びも遠くにあるまい。亡ぶ者に礼が要ろうか」
孔子は礼の国・魯の出身だけに、元々斉という国は合わなかったのでしょう。
確か孔子って、結局どこでも仕官出来なかったような。。。違ったかな?

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