走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

条件をつける その4

2021年01月23日 | 仕事
シリーズ4日目

この患者が点滴を嫌う理由は入院に縛られたくないから。お酒を飲む自由も違法薬物をする自由もなくなるから。

医療者は今あるEBPでベストな治療を提供しようとする。患者全員が教科書のようにシンプルだったら、医療者の事をなんでも素直に聞いてくれる患者だったらと願うか?

でも実際はいろんな背景があって、治療を拒否する理由も様々。中には全く筋が通らないものだってある。人間社会と言う規則自体を嫌う輩立っている。だから教科書通りにはものが進まない。しかしこのような人が大半ではない。稀だと言った方が良いかもしれない。だから医療者は驚き、上手く反応できない時もある。喧嘩越しになったりする事だってある。

最初の日に書いた、達成感の連続が人間に自信を持たせ、成功へ導く。

私の患者層の多くは、この経験を全く得れずに大人になった人が多い。そして命令されたり、条件を出されると過剰に反応する。日常が四面楚歌的な状態なのに馴染みのない救急室と言う非日常で簡単に追い込まれる、、、そうなれば逃げ出すしかないでしょう。そうしないと心のバランスが取れないような崖っぷちに立っている人たちなのです。

そんな人たちに崖っぷちではない事に気付いてもらうためにも、医療者側の要望を全面に出すより、患者が求めているものから信頼関係を築いて行く。そんなアプローチがインスリンドリップより大切になる時だってあるんですよ。

初日のケーキの質問で条件を出したばっかりに貴方の子供は家出をして、そのまま帰ってきませんでした、てなことは誰も望みませんから。

シリーズ終わり

冬の日差しが長く長く




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