いろはにほへと

ちりぬるを

いろはにほへと

2018-06-07 16:58:06 | 日記

 

 

その男は其処から動かなかった。

小高い山裾の墓所に腰を下ろした儘こっちを眺めていた。

膝を立ててその前で両腕を組み、顔は正面を向いた儘だった。

その場所迄の道は綺麗に雑草が刈られ、

男の横に置かれた草刈機が静かに横たわっていた。

 

この情景を見た誰もが、その男を見続けたわけではない。

男も、其処が自分にとって最後の場所になるとは思ってなかった筈だ。

偶然が偶然を呼んだとしか言いようがないことが起きてしまった。

 

翌朝、其処には未だ草刈機が静かに横たわった儘だった。

綺麗に駆られた道の終わりで、その男は前を見つめた儘、突然に生涯を終えた。

 

初夏の青い道がすっきりと刈られて、男が座っていた墓所まで伸びている。

 

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