モーツァルトさん、こんにちは。
昨年11月のソロ演奏会「モーツァルトに会いたい」の練習過程で書いた
20通あまりの手紙。
今、思い出してみても、
書いていてなかなか楽しかったです。
しばらくご無沙汰していましたが、
また書き始めることにしました。
07年、今回の「モーツァルトに会いたい・2」は、
室内楽を特集します。
まず6月10日は「ピアノトリオ」。
モーツァルトさんが書いたピアノトリオは
現在7曲残されています。
1776年作曲の、「K.254 変ロ長調」以外、
残りの曲はすべて晩年の作品なのですね。
3曲は、1786年、あとの3曲は、1788年。
さすが、味わい深いです。
その中で、今日は「K.542ホ長調」について。
この曲、
私は前世紀(20世紀のことです)に本番で弾いたことがあります。
あまりの上等さに、当時、本当に驚き感激しましたが、
21世紀に入って久しぶりに弾いてみて、
以前には意識されなかった、玄妙な味に気がつき始めています。
特に、再現部にヤラレてます。
再現部というのは、
つまり 「A」「B」「A'」の、「A'」 です。
すなわち、冒頭の「提示部A」のテーマが
「展開部B」を経て「再現A'」される。
でも、「A」 と 「A'」 は、
そっくりではないの(あたりまえ)。
この曲では、
冒頭から、ホ長調という♯4つのやや特殊な調性。
その潤いを帯びた調性の中で、
優雅なダンスの3拍子のテーマ。
それが「再現部」に戻ってきて
第2テーマに入るまでの
約34小節間の、
なんというデリケートな移ろい方!
光と影が入れ替わって
水の反射が葉に揺れているような、
日の光の虹色がときおり見えるような。
ホ長調→ホ短調→ハ長調(一瞬)→ホ短調(一瞬)→ト長調→ホ短調→ニ短調(一瞬)→ハ長調(一瞬)→イ短調(一瞬)→ホ短調→ホ長調
(「一瞬」と書いたのは、約1小節間=3拍=1秒あまり)
たった34小節(1分足らず)の間に、
これだけの調にわたってひらひらと移ろうのです。
あれよあれよと弾いているうちに
色のグラデーションの中をあちらこちらに旅するみたい。
それを、誰も気づかないような自然さで
モーツァルトさんはそっと差し出す。
さりげなく運ばれる音たち。
モーツァルトさんは、
書き終えたこの曲を、
お姉さんのナンネルさんに送ったとき、
「ミヒャエル・ハイドンに聞かせてください。」と
手紙をわざわざ書いたそうですが、
相当の「自負」があったのですよね。
その、モーツァルトさんの密かな自信、
ものすごくものすごくよくわかります。
ほんとにこの曲を弾くのって「喜び」です。
指と、脳と、それから魂がきれいに上等になります。
近いうちにご自慢の楽譜をアップするつもりですので
待っててくださいね。♪
昨年11月のソロ演奏会「モーツァルトに会いたい」の練習過程で書いた
20通あまりの手紙。
今、思い出してみても、
書いていてなかなか楽しかったです。
しばらくご無沙汰していましたが、
また書き始めることにしました。
07年、今回の「モーツァルトに会いたい・2」は、
室内楽を特集します。
まず6月10日は「ピアノトリオ」。
モーツァルトさんが書いたピアノトリオは
現在7曲残されています。
1776年作曲の、「K.254 変ロ長調」以外、
残りの曲はすべて晩年の作品なのですね。
3曲は、1786年、あとの3曲は、1788年。
さすが、味わい深いです。
その中で、今日は「K.542ホ長調」について。
この曲、
私は前世紀(20世紀のことです)に本番で弾いたことがあります。
あまりの上等さに、当時、本当に驚き感激しましたが、
21世紀に入って久しぶりに弾いてみて、
以前には意識されなかった、玄妙な味に気がつき始めています。
特に、再現部にヤラレてます。
再現部というのは、
つまり 「A」「B」「A'」の、「A'」 です。
すなわち、冒頭の「提示部A」のテーマが
「展開部B」を経て「再現A'」される。
でも、「A」 と 「A'」 は、
そっくりではないの(あたりまえ)。
この曲では、
冒頭から、ホ長調という♯4つのやや特殊な調性。
その潤いを帯びた調性の中で、
優雅なダンスの3拍子のテーマ。
それが「再現部」に戻ってきて
第2テーマに入るまでの
約34小節間の、
なんというデリケートな移ろい方!
光と影が入れ替わって
水の反射が葉に揺れているような、
日の光の虹色がときおり見えるような。
ホ長調→ホ短調→ハ長調(一瞬)→ホ短調(一瞬)→ト長調→ホ短調→ニ短調(一瞬)→ハ長調(一瞬)→イ短調(一瞬)→ホ短調→ホ長調
(「一瞬」と書いたのは、約1小節間=3拍=1秒あまり)
たった34小節(1分足らず)の間に、
これだけの調にわたってひらひらと移ろうのです。
あれよあれよと弾いているうちに
色のグラデーションの中をあちらこちらに旅するみたい。
それを、誰も気づかないような自然さで
モーツァルトさんはそっと差し出す。
さりげなく運ばれる音たち。
モーツァルトさんは、
書き終えたこの曲を、
お姉さんのナンネルさんに送ったとき、
「ミヒャエル・ハイドンに聞かせてください。」と
手紙をわざわざ書いたそうですが、
相当の「自負」があったのですよね。
その、モーツァルトさんの密かな自信、
ものすごくものすごくよくわかります。
ほんとにこの曲を弾くのって「喜び」です。
指と、脳と、それから魂がきれいに上等になります。
近いうちにご自慢の楽譜をアップするつもりですので
待っててくださいね。♪