セミナーのレポートです!!
「みる・考える・話す・聴く 鑑賞によるコミュニケーション教育」刊行記念セミナー
参加報告(午前の部)
期日 2014年3月22日(土) 場所 京都造形芸術大学
レポーター 正田裕子(みるみるの会 会員)
○始まるまで…
遠く北は宮城県から南は沖縄県よりこの鑑賞によるコミュニケーション教育に大きな可能性を感じる56名の皆さんとの出会いを心待ちにしていました。私たちの評価実践を全国の皆さんと共有する責任も感じ、少しばかり緊張もしながらも、前日より京都入りして最終準備を整えて当日を迎えました。
日本文教出版の教育資料出版記念であるこのセミナーは、美術教育関係者はもとより、全国の美術館・博物館関係者及び一般企業の人材育成等に携わる方々が集まり、開会10分前には席も埋まり、参加者同士で情報交換するなど、始まる前から参加者の皆さんの熱気と期待の大きさが伝わってきました。
○はじめに…
レクチャー「みる・考える・話す・聴く」
福のり子教授 (京都造形芸術大学 アートプロデユース学科長)
熱い思いをもった多くの参加者へ歓迎の言葉で始まりました。そしてご自身が現在行っているACOPという「グループで芸術作品を観る」教育とは、具体的にどういった内容なのか簡単な説明と自己紹介がありました。
その後早速、国立教育政策研究所教育課程研究センターが行ったアンケート「『図工・美術』は大切ですか?」、「『図工・美術』は身近な生活に役立っていますか?」同じく「『図工・美術』は将来の生活や社会に出て役立つと思いますか?」の問いに、「どちらかというとそう思わない・そう思わない」と答える児童・生徒が無視できない割合で存在していることを示し、それは今までの「図工・美術」教育では自分たちが将来生き抜くための力にはなっていないと子供たち自身が感じ、警告している状況であり、それを美術教育に携わる私たち関係者はどう受けとめていくのかが一番の課題であると指摘されました。あわせて指導要領の「理科」と「図工・美術」の目標の文言を比較し、今までの制作中心の感性・心情的理解ではやはり、児童・生徒が美術科に対して将来へ役立つ実感が持てずにいても不思議ではないと問題提起されました。続いて、「美術館や博物館へ作品を見に行きたいか?」と言う質問にも、55%以上の中学生が「どちらかと言えばを含め、行かない」と答えている実態があり、その数字は大人になっても変わらないことがアートプロデユース学科の博物館調査等で確認できることも示され、私たちは今日までの美術教育の在り方が抱える問題を大きく感じることになりました。しかも、美術館関係者は入館者減少の現実を目の前にして危機感を抱いているのに対して、文部科学省(美術・図工教育に携わる者と言ってもよいのでは)は危機感が薄いことも指摘されました。
そんな中で、対話型鑑賞の中には「分からない課題にどう取り組んだらよいのか」、「どういうスキルを身につけられるのか」に対するヒントがあると示唆されました。
鑑賞者の時代や住む場所によってアート作品の価値は変わっていきます。アート作品の価値づけは鑑賞者自身がおこなうので、作品を活かすも無駄なものにするのも鑑賞者次第であることを確かめました。そして、作品のよき鑑賞者になることがアート作品を理解することにつながるのではないかと思います。対話型鑑賞では鑑賞活動の際に鑑賞者の発言を整理し、つなげる役割が重要となります。この役割を受け持つ者をナビゲーターと呼びます。ナビゲーター(授業者)に求められる資質は、聞きたいことを聞きたいように受けとめるのではなく、鑑賞者の発言を鑑賞者の意図や思いに寄り添いながら、想像し、キャッチボールのように受けとめること。ナビゲーターも一鑑賞者として、参観者の発言と発言をつなげたり、応援の励ましをしたり、もう少し深く考えられるように「そそのかす」ことも大事な役目であると語られました。一方的な情報伝達は決して学びではなく、思いやりや想像力を持ちながら、意識をもって相互にコミュニケーションすることによって、自分の経験にしていくことができ、互いの学び合いにつながるということでした。
また、その学び合いの中から、分からないからこそ興味が湧く、自主的に知ろうとする姿勢が生まれると聞かされ、これが活動の中で自然に起きるのが対話型鑑賞であり、対話型鑑賞の醍醐味であると感じました。
最後に、この鑑賞は、他者が存在することで自分であり続けることができ、自分がいることで他者の存在が価値あるものであると感じられる場となる。そこに、疑問(?)と発見や驚き(!)があれば、教室や美術館は楽しい場になるはずだと。そんな場にするために教師は、ナビゲーション力とファシリテーション力とそそのかす(その気にさせる)力が必要である。と私たち参加者のやる気を奮い立たせる言葉で締めくくってくださいました。
ワークショップ「目隠しをした人に言葉で絵を伝える」
北野 諒(京都造形大学 講師)伊達隆洋(京都造形大学 准教授)
百聞は一見にしかず。映し出された作品を目隠しをしたペアの相手に伝えることの難しさを実感しました。
様々な作品を自分でもみてきているのですが、みたこともない作品に戸惑い、気になったことから筋道を考えずに伝えてしまったので、相手に全体像を伝えることができませんでした。何が伝わって、何が伝わらなかったのか、そこに何が必要だったのかをペアの方と振り返りました。私たちは、全体像もしくは、全体の印象から細部の説明をしていった方が分かりやすいのではないかという反省をもとに二作品目をみました。聴く側に回ったのですが、全体の構図と何が描かれているのかということをもとに、描画のマチエールなども聴くことができました。相手の方は、以前にもこのワークショップの経験があるとのことでしたが、自分が不明な点を積極的に聴くことで、作品の大まかなイメージをつかむことができ、アイマスクを外した時も納得する作品でした。このワークショップでは、自分の話し癖、聴き癖を確認できました。そして、相手の言葉の奥にどんな思いがあるのか想像するのが大切だと感じました。また、限られた時間の中で目標に迫れるだけのスキルも身につけていく必要性を感じました。
○福先生の思いを聞くことができ、この鑑賞教育のすばらしさと深さを感じることができました。また、たくさんの関係者の方々がこの鑑賞教育に対して期待と可能性を感じていらっしゃることを実感しました。レクチャーやワークショップを通して、改めて他の人とつながる難しさや楽しさを感じ、鑑賞教育を通して人間教育にも関わることができる喜びを強く感じる午前中の活動となりました。
「みる・考える・話す・聴く 鑑賞によるコミュニケーション教育」刊行記念セミナー
参加報告(午前の部)
期日 2014年3月22日(土) 場所 京都造形芸術大学
レポーター 正田裕子(みるみるの会 会員)
○始まるまで…
遠く北は宮城県から南は沖縄県よりこの鑑賞によるコミュニケーション教育に大きな可能性を感じる56名の皆さんとの出会いを心待ちにしていました。私たちの評価実践を全国の皆さんと共有する責任も感じ、少しばかり緊張もしながらも、前日より京都入りして最終準備を整えて当日を迎えました。
日本文教出版の教育資料出版記念であるこのセミナーは、美術教育関係者はもとより、全国の美術館・博物館関係者及び一般企業の人材育成等に携わる方々が集まり、開会10分前には席も埋まり、参加者同士で情報交換するなど、始まる前から参加者の皆さんの熱気と期待の大きさが伝わってきました。
○はじめに…
レクチャー「みる・考える・話す・聴く」
福のり子教授 (京都造形芸術大学 アートプロデユース学科長)
熱い思いをもった多くの参加者へ歓迎の言葉で始まりました。そしてご自身が現在行っているACOPという「グループで芸術作品を観る」教育とは、具体的にどういった内容なのか簡単な説明と自己紹介がありました。
その後早速、国立教育政策研究所教育課程研究センターが行ったアンケート「『図工・美術』は大切ですか?」、「『図工・美術』は身近な生活に役立っていますか?」同じく「『図工・美術』は将来の生活や社会に出て役立つと思いますか?」の問いに、「どちらかというとそう思わない・そう思わない」と答える児童・生徒が無視できない割合で存在していることを示し、それは今までの「図工・美術」教育では自分たちが将来生き抜くための力にはなっていないと子供たち自身が感じ、警告している状況であり、それを美術教育に携わる私たち関係者はどう受けとめていくのかが一番の課題であると指摘されました。あわせて指導要領の「理科」と「図工・美術」の目標の文言を比較し、今までの制作中心の感性・心情的理解ではやはり、児童・生徒が美術科に対して将来へ役立つ実感が持てずにいても不思議ではないと問題提起されました。続いて、「美術館や博物館へ作品を見に行きたいか?」と言う質問にも、55%以上の中学生が「どちらかと言えばを含め、行かない」と答えている実態があり、その数字は大人になっても変わらないことがアートプロデユース学科の博物館調査等で確認できることも示され、私たちは今日までの美術教育の在り方が抱える問題を大きく感じることになりました。しかも、美術館関係者は入館者減少の現実を目の前にして危機感を抱いているのに対して、文部科学省(美術・図工教育に携わる者と言ってもよいのでは)は危機感が薄いことも指摘されました。
そんな中で、対話型鑑賞の中には「分からない課題にどう取り組んだらよいのか」、「どういうスキルを身につけられるのか」に対するヒントがあると示唆されました。
鑑賞者の時代や住む場所によってアート作品の価値は変わっていきます。アート作品の価値づけは鑑賞者自身がおこなうので、作品を活かすも無駄なものにするのも鑑賞者次第であることを確かめました。そして、作品のよき鑑賞者になることがアート作品を理解することにつながるのではないかと思います。対話型鑑賞では鑑賞活動の際に鑑賞者の発言を整理し、つなげる役割が重要となります。この役割を受け持つ者をナビゲーターと呼びます。ナビゲーター(授業者)に求められる資質は、聞きたいことを聞きたいように受けとめるのではなく、鑑賞者の発言を鑑賞者の意図や思いに寄り添いながら、想像し、キャッチボールのように受けとめること。ナビゲーターも一鑑賞者として、参観者の発言と発言をつなげたり、応援の励ましをしたり、もう少し深く考えられるように「そそのかす」ことも大事な役目であると語られました。一方的な情報伝達は決して学びではなく、思いやりや想像力を持ちながら、意識をもって相互にコミュニケーションすることによって、自分の経験にしていくことができ、互いの学び合いにつながるということでした。
また、その学び合いの中から、分からないからこそ興味が湧く、自主的に知ろうとする姿勢が生まれると聞かされ、これが活動の中で自然に起きるのが対話型鑑賞であり、対話型鑑賞の醍醐味であると感じました。
最後に、この鑑賞は、他者が存在することで自分であり続けることができ、自分がいることで他者の存在が価値あるものであると感じられる場となる。そこに、疑問(?)と発見や驚き(!)があれば、教室や美術館は楽しい場になるはずだと。そんな場にするために教師は、ナビゲーション力とファシリテーション力とそそのかす(その気にさせる)力が必要である。と私たち参加者のやる気を奮い立たせる言葉で締めくくってくださいました。
ワークショップ「目隠しをした人に言葉で絵を伝える」
北野 諒(京都造形大学 講師)伊達隆洋(京都造形大学 准教授)
百聞は一見にしかず。映し出された作品を目隠しをしたペアの相手に伝えることの難しさを実感しました。
様々な作品を自分でもみてきているのですが、みたこともない作品に戸惑い、気になったことから筋道を考えずに伝えてしまったので、相手に全体像を伝えることができませんでした。何が伝わって、何が伝わらなかったのか、そこに何が必要だったのかをペアの方と振り返りました。私たちは、全体像もしくは、全体の印象から細部の説明をしていった方が分かりやすいのではないかという反省をもとに二作品目をみました。聴く側に回ったのですが、全体の構図と何が描かれているのかということをもとに、描画のマチエールなども聴くことができました。相手の方は、以前にもこのワークショップの経験があるとのことでしたが、自分が不明な点を積極的に聴くことで、作品の大まかなイメージをつかむことができ、アイマスクを外した時も納得する作品でした。このワークショップでは、自分の話し癖、聴き癖を確認できました。そして、相手の言葉の奥にどんな思いがあるのか想像するのが大切だと感じました。また、限られた時間の中で目標に迫れるだけのスキルも身につけていく必要性を感じました。
○福先生の思いを聞くことができ、この鑑賞教育のすばらしさと深さを感じることができました。また、たくさんの関係者の方々がこの鑑賞教育に対して期待と可能性を感じていらっしゃることを実感しました。レクチャーやワークショップを通して、改めて他の人とつながる難しさや楽しさを感じ、鑑賞教育を通して人間教育にも関わることができる喜びを強く感じる午前中の活動となりました。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます