ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

愛媛県美術館公開セミナーでお話しさせていただきました

2016-01-25 19:10:27 | 対話型鑑賞


公開セミナー「ともにもみる、ともに考える」
1月23日(土)愛媛県美術館 講堂

上記の日程で開催されたセミナーに講師として登壇させていただき、中学校の現場からの報告をしました。参加者の皆さまから質問をいただきました。セミナーの終わりの会での時間では答えきれなかった部分もありましたので、ブログにUPすると宣言しました。
そこで、
セミナーでの質問に答えたいと思います。意を汲みきれない部分や、どんなに言葉を尽くしても、文字情報だけでは伝えきれないところがあります。どうか、そういうところがありましたら、また、ご意見をお寄せください。また、来年度開催される愛媛県美術館の研修会に参加しましょう。

作品選びに関すること
Q1 達磨大師さんの絵が何百年も受け継がれてきた絵だから、子どももこれだけのことを感じるのだと言われたのをきいて、作品を選ぶのに世間の名の知れた作品のほうがよいのでしょうか?

A1 世間に名の知れたというのをどこまでの範囲とするのかは難しいところですが、やはり歴史を経て現在に残されている作品を選ぶのがよいと思います。どんな作品がよいのかは、基本を学んで、実践していく中で分かっていくと思います。

Q2 中学校の教材はどうやって選んだのですか?教材を選ぶときに何を一番重要視していますか?

A2 どの年齢でもそうですが、この鑑賞にはじめて取り組むときには、描かれているものが分かりやすく、しかも、色んな解釈のできそうな作品を選ぶのがよいと思います。だんだんとこの鑑賞法の回数を重ねて経験地があがっていけば、複雑で多様な解釈の出来る作品を選ぶとよいと思います。
  セミナーのときに光中学校で実践した作品を紹介しましたが、それらがみるみるの会ではてっぱん作品です。

Q3 いろんな校種、グループ年齢への実践、すごいなあと思います。実践を繰り返すうちにひとりの生徒が変容していくのもとても興味深かったです。みる作品はどのように選んでいますか?

A3 お褒めの言葉をありがとうございます。1,2でもお答えしたように、この鑑賞法の経験値と年齢に応じた作品を選ぶのがよいと思います。低年齢の作品は私の幼稚園での実践作品をブログでチェックしていただいて参考にしていただければ幸いです。

Q4 古い時代のものは表現のコード(きまり)が今の時代と違っていてうまく読み解けない読み取れないものもあると思いますが、そういったものは教材としては不適当ですか?

A4 古い時代のものでも、たとえばギリシャ彫刻等は鑑賞作品として使用しています。カラカラ帝の頭像などです。どんなものをイメージされて質問されたのかが分かりにくいのでお答えしにくいのですが、モナリザなどルネサンス期のものはかなり古い時代になると思いますが、可能です。もっと前のエジプトの壁画なども利用できます。ですから、コードを知らなくても、みえているものを根拠に解釈はできると思います。ただ、宗教の教義が関わるようなものは日本人には馴染まない面があるのは否定できません。しかし、学校の授業場面で鑑賞ができる時数は限られているので、あえてそのような作品を扱わなくても、オーソドックスな作品で鑑賞されれば十分ではないかと考えています。(この時の宗教とは主にキリスト教を指します。)

ナビゲーターのスキルに関すること
Q5 ナビゲーターの力量を上げるために効果的だったことはありますか?

A5 自分のやっているときの様子をビデオやボイスレコーダーに取っておいて、後でその様子を文字起こしすると、鑑賞者の発言をどのように拾ってつなげて行ったかをチェックできます。時間はかかりますが有効です。そのほかには、同じナビゲーターを志す仲間に同席してもらってナビの様子を観察してもらうこと。同じ学校や職場にナビを志す仲間がいればお互いにチェックしあうと力がつくと思います。しかし現実的に仲間が身近にいることは稀なので、私たちはサークルを立ち上げ、研鑽に励んでいるわけです。

Q6 対話型鑑賞法に興味を持ってしようと思うとき、ナビゲーターのスキルをつけるにはどうすればよいのか?みるみるの活動を少し教えてください。

A6 ナビゲーターのスキルは、愛媛の学校関係者であれば、来年度の愛媛県美術館の企画に応募してください。そうでない方は、福先生のいらっしゃる京都造形芸術大学の教員免許更新講習に参加するとよいと思います。この講習は教員の方以外の参加もOKなので、そちらを活用してください。詳細はACOPのHPに掲載されると思います。
  みるみるの会では月に1回美術館でナビゲーターのスキルアップ会を開催し、会員が交代でナビ役を務め、他の会員が鑑賞者になり、その後振り返りをすることでより質の高いナビができるよう研鑽に励んでいます。この会には一般の方も参加できますので、このブログを時々チェックしてみてください。

Q7 歴史的事実(回答に類するもの)を話すタイミングやその「コツ」などがありましたら教えてください。

A7 とてもお答えするのが難しい質問です。「コツ」はナビをしていくうちにつかめるものだと思います。鑑賞者のニーズの高まりや、このタイミングで情報(歴史的事実)を伝えると鑑賞が深まると感じるタイミングは千差万別、まさにケースバイケースです。ナビを繰り返しやるうちに身についていくものだと思いますので、しっかり実践を繰り返していきましょう。

Q8 ナビゲーターとして注意していることなど何かありますか?

A8 まず「聴く」ことを意識します。鑑賞者が何を語っているのかを的確につかむことが一番重要だと思っています。
  次に大事なのは、どの発言も平等に扱うことです。ちょっとおかしいな?とか変だな?と思うような発言にも耳を傾け、聴くことで話し手の伝えたい事を読み取り、他の鑑賞者に伝える努力をします。私もまだまだ十分に聴く力がついているとは言えません。日々精進です。

Q9 対話型鑑賞がうまくいかなかった例と原因などを教えてください。

A9 初めてこの鑑賞を行うときに、鑑賞者に戸惑いがあることです。何を言ってもよいと言われても何を言えばいいのか分からないといった混乱が起きるからです。しばらく手が挙がらず「し~~~~ん」となることはままあります。そんなときにどんな言葉を投げかけるかは結構気を使います。中学生のときは「みえているものを言って!」と言います。そうすると、ゴッホのいすの作品のときは「いす?」とかって、すごく不安そうに発言するので「そうだよね。いすがあるよね?みんないすはみえているよね?」などと声をかけ、「なあんだ。ホントにみえているものを言えばいいのだ。」と安心させるとバンバン手が挙がって「ドアがある」とか「奥に箱みたいなものがある」とか言うようになります。
 もうひとつは、「怒らないこと」です。ふざけたことや変なことを言っても「どうしてそう思ったの?」「どこからそう思ったの?」と冷静に対応することが重要だと思います。怒ると生徒は萎縮し発言しなくなるからです。この鑑賞法を面白いと感じてもらうためにも、つまらない、しかられたという負の評価が出ないように心がけています。

Q10 中学生でふざけた発言は実際にありましたか?そうなら、どう対応されましたか?

A10 残念ながら、ふざけた発言に出会うことはありませんでした。どんなことを言っても良い。とは言いますが、あくまで授業なので、評価をするわけです。限られた時数の中での鑑賞の授業なので、この鑑賞法で鑑賞の評価を行うことをあらかじめアナウンスします。発言したことやその内容、授業後の振り返りで評価をすると告げると、真剣な態度で臨む生徒がほとんどです。時折、不真面目な発言をする生徒も出ますが、その時は、怒らず「どうしてそう思ったの?」「どこからそう思ったの?」と問い続けると、降参しますね。でも、それだけです。くどくどは言いません。「根拠に基づいた自分の考えを言えるようにすること。」と働きかけ続けるだけです。評価をすることをあらかじめアナウンスすることも大事ではないでしょうか?私は評価の規準も示してから始めるようにしています。

Q11 スタート時の不安について、実際はどうでしたか?失敗したこと、どう解決したか知りたいです。

A11 初めの頃は、私もおっかなびっくりだったので、それが生徒にも伝わるのか挙手発言がなかったので、指名しました。しかも片っ端から・・・。そうすると、次は自分が当たると生徒は危機感を感じて、必死で自分の考えを考え始めました。「わかりません。」と言って逃れようとする生徒もいますが、「作品はみえているのなら、みえていることを言って。」と言わすようにします。そうすると、必ず何か言います。そうすれば、もっと問い続けて話させるように働きかけます。また、「一緒です。」という生徒も出ます。そういう時は「一緒でいいから、自分の言葉で言って。」というと、不思議なことに同じことは言いません。そういう時は「一緒って言ったのに、ちゃんと自分の言葉で言えたね。」と褒めます。そうすると生徒は「わかりません」も「一緒です」も通用しないことに気づき、真剣に自分の言葉で考えるようになります。
また、最初の頃は生徒の発言も上手く繋げることができないので、全員1回は言ってもらう。などのノルマを生徒に課して、当てたりもしました。近頃の生徒は、単語で答えることが多いので、そこは突っ込んで確認することを忘れないようにしました。自分が上手くナビできていない(失敗した)と思っても、生徒には分からないので、その時間中に軌道修正できればするし、できなければ、次回に生かす轍としました。

Q12 私が中学生の頃はいじめやスクールカーストがあり、自分の意見を言いにくい、言ったらからかわれるという空気でした。春日先生はそういう学級で対話型鑑賞をしたことはありますか?また、そのときのエピソードがあれば教えてください。

A12 クラス経営が上手くいっていない学級もあると思います。私は美術科の教師として学校規模(島根は中小規模校が多い)から全学年全学級の美術の授業を行うことが多いです。どの学級にも平等にこの鑑賞法を実施しなければ公正な評価もできないので、クラスの実態がどうであろうとこの鑑賞を行ってきました。しかし、授業ですので、A10でも触れましたが、評価も行うわけです。授業のねらいに沿って授業を行うので、発言を促し、発表すれば、内容ももちろん大事ですが、発言したことを褒め、特定の生徒に発言が偏らないように配慮しながら発言を求めます。同じ生徒しか手が挙がらない場合は、「手を挙げてくれているのに指名しないのは悪いけど、他の人の意見も聴きたいので」と断って、手を挙げていない生徒にも発言を求めたりします。そうやって、さまざまな意見をクラス内で披露することで、他者理解が進むと思うし、自分の発言にクラスメイトが感嘆の声をあげる場面などでは自己肯定感も満たされると思います。どちらかといえば、学級経営が上手く行ってないクラスでこの鑑賞をやると、クラスが変われるかもしれませんね。そんな場面には残念ながらまだ出くわしていませんが・・・。

授業に関すること
Q13 ワークシートに個々で記述する前に、その時間の対話型の着地点、締めくくり方で気を付けていることはありますか?

A13 中学校の1時間の授業時間は50分です。振り返りの時間をある程度担保してやろうと考えた時に対話型鑑賞が正味できる時間は30~40分です。その時間内に1作品を十分に語りきることは出来ません。ワークシートにじっくり自分の考えを記述するように促すので、終了のチャイムが鳴っても、まだ書き続けている生徒がほとんどです。ですから、「時間が来ても途中止めにせずしっかり書くこと。回収は終礼時。」と指示するにとどめます。生徒の記述の中で生徒に紹介したいと思ったものは「美術通信」などをつくって配布したり、美術室に掲示して共有できるようにしています。作家名と作品タイトルも通信で知らせることが多いです。

その他
Q14 アクティブラーニングでは音は使わないのですか?それは音楽の授業の範囲なのでしょうか?リンクさせることも面白いのではないかと思いますが?

A14 音を使っての実践もできると思います。作品鑑賞と音を組み合わせる活動は島根県立石見美術館で実践が行われています。HPをチェックしてみてください。私はセミナーの翌日にこの試みに参加しましたが、とても面白いコラボレーションになっていました。音楽の先生ならば、挑戦してみてください。私も挑戦してみます。

感想から
〇今の子どもにとって「聴く」って難しいですが、この活動だと「聴く」価値を伝えられると思いました。

〇楽しい時間が目に浮かぶようです。

〇対話型鑑賞法を実践することで得るものは大きいということが分かりました。同じ中学校教員なのでやってみたいと思いました。

〇中学生での対話型鑑賞が、コミュニケーションを高めるものということがよく分かった。

質問や感想をお寄せくださった皆さまへ

 私の授業の最後に言わせてもらいましたが、みなさんがファーストペンギンになってくださることが何よりです。私が福先生に背中を押していただいたように、最初からうまくなんかできません。でも、やれば、子どもの力が伸びていくことが確実にわかります。私たち教師は、私たちの生きない時代を生き抜いていかなければならない子どもたちを育てていることを忘れてはいけないと思います。この子たちが未来を生きていくときに、どんな力を持っていればいいのかを、私たちが想像し、創造していかなければ教育とは言えないのではないでしょうか。
 ともに前を向いて進んでいきましょう!!
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