ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

京都造形芸術大学でのACOPオーディションに参加したメンバーのレポートをお届けします!(2018,12,8・9参加)

2019-01-15 22:16:28 | 対話型鑑賞
京都造形芸術大学でのACOPオーディションに参加した、みるみるの会メンバーの房野さんのレポートです。


ACOPオーディション 参加レポート                 
文責 房野伸枝

 2018年12月8日、9日の2日間、みるみるの会メンバーの春日、房野の2人で京都造形芸術大学 ACOP オーディションに参加させていただきました。

 年末の京都造形芸術大学では、アートプロデュース学科の必修科目としてACOP(Art Communication Project)の「鑑賞会」のための<オーディション>が行われます。「鑑賞会」は一般応募したボランティアを対象に行われるもので、アートプロデュース学科1回生の皆さんは、本番前の<オーディション>に合格して初めてこの「鑑賞会」のナビゲーターとなり、単位を取得できるという、まさしく合否のかかった真剣勝負を連日繰り広げています。そうした時期、ビシバシ鍛えられている学生さんに混じってオーディションに立ち会える機会を与えていただき、島根県から駆けつける甲斐がありました。  

 指導にあたられる伊達さん、岡崎さん、青山さんをはじめ、学生の皆さんは見ず知らずの私たち二人を温かく迎え入れてくださいました。3班に分かれてオーディションを行っている場へ、春日、房野がそれぞれ分かれて参加しました。その中で印象的だった作品と鑑賞についてレポートします。




「メイヤー・シャピロの肖像」 ジョージ・シーガル 作

私は初めて鑑賞する立体作品でした。プロジェクターで画像を写したものを鑑賞するのですが、スタート時にナビゲーターは作品名、作者、来歴などの情報は伏せておき、鑑賞者が自由に感じたことを発表します。

青い背景に半ば埋もれたような初老の男性の上半身が彫刻されています。鑑賞者からは以下のような発言がありました。
<鑑賞者の発言>
・青い海に浮かんでいるようだ。顔と手以外も青いので背景に溶け込んでいくよう。
・浮かんでいるなら作品は寝かせて置くのでは。立てて表現してあるということは、記念碑的なものにも見える。
・口角が上がって静かに微笑んでいるよう。瞑想しているようでもある。静かな音楽を聴いているようにも見える。
・深呼吸しているような、香りを楽しんでいるような。喫茶店のマスターのようにも見える。
・青い背景は切り取られ断面が見える。この周りにはさらに雄大な海が広がっていることを示唆しているように見える。
・重いものを背景に抱えているようだ。それは、経験や時間や歴史や様々なもの…等々。

途中、ナビからこの作品に関する情報提供がありました。
「この作品の男性は美術史の教授であり、その弟子が石膏で師匠を型取って制作した作品です。」

情報を得ることにより、さらに鑑賞は焦点化され、鑑賞者同士の相互作用により解釈が深まっていくのでした。ACOPでのナビゲーターは適切なタイミングで作品に関する情報を与え、鑑賞の深化を促します。(平野智紀氏 「対話型鑑賞における鑑賞者同士の知識構成」2017年JSET島根大会 参照)みるみるの会の鑑賞でも同様に「いかに情報を適切なタイミング、内容、量で伝えるか」ということがナビのスキルアップのための重要な検証ポイントとなります。
このオーディションのナビに伊達さんが以下のように指導されました。

◎ナビのパラフレーズは、鑑賞者の意見から抽出したものを返すことが大事。例えばコーヒー豆にお湯を足してそのまま出すような返しではなく、ナビがちゃんと濾過して出すべき。
◎フルコースの料理を一つの皿に盛って出すようなナビゲートは良くない。鑑賞者の感じていないことまで足してパラフレーズしては味わえない。

伊達さんの指導を聞いて、平易な言葉で、「なるほど!」と納得させる言葉選びがとても大切なのだと考えさせられました。

 春日の参加した班では、同じ作品で3回オーディションを受けて、仮合格をもらったという学生さんもいたとのこと。1回目より2回目、3回目とナビゲーターが大切にするべきことに留意して、果敢にナビゲートに挑戦し、変容していく姿に感動したそうです。そして、仮合格を我がこと以上に喜び、涙を流している周りの学生さんの様子を見るにつけ、以前、福のり子先生が語っておられた言葉を思い出しました。「近年の学生は、失敗と他者を極度に恐れている。「『失敗だ』と決めるのは他者だ」と彼らは思っている。だから、失敗を恐れるあまり、価値観の尺度を握っている他者を排除する、あるいは逆に盲従する。」「だから尋ね合ったり、意見のすり合わせをしたりもしない。」と。けれども、そもそも鑑賞に正答が一つであるわけもなく、完成形もない、ということをACOPの授業を受けた彼らは経験的に学び、時には寝食を共にしながら議論を戦わせるという濃いコミュニケ―ションによって、仲間の合格の喜びを共有できるまでに精神的な成長を遂げているのだ、と感動せずにはいられませんでした。ちょうど我が子と同じ年代の学生さんたち。SNS等で浅く短いコミュニケーションを行うことに慣れた我が子や、中学校教員として日々中学生に接している我が身を顧みて、この「対話型鑑賞」の重要性をひしひしと感じます。
福のり子先生が始められ、継承・発展し続けているACOPの活動。そのめざすところを「みるみるの会」でも今後も続けていきたいと思います。
京都造形芸術大学アートプロデュース学科の皆さま、ありがとうございました。今後もどうぞよろしくお願いいたします。


文中でお名前を記させていただいた方々は、下記の京都造形芸術大学の先生方です。敬称を「さん」で表記させていただきました。
福 のり子 アート・コミュニケーション研究センター 所長/京都造形芸術大学芸術学部 教授
伊達 隆洋 アート・コミュニケーション研究センター 研究員
/京都造形芸術大学アートプロデュース学科 准教授・学科長
岡崎 大輔 アート・コミュニケーション研究センター 専任講師・副所長
青山 真樹 アート・コミュニケーション研究センター 研究員/非常勤講師


<みるみるの会からのお知らせ>
ACOPのDNAを受け継ぐ「みるみるの会」の今後の活動予定をお知らせします。



【その1 島根県西部にて】
今年度も「みるみると見てみる?」が開催されます!(写真は昨年度の様子)
島根県立石見美術館(島根県益田市 グラントワ内)のコレクション展
「あなたはどう見る?-よく見て話そう美術について」(会期2019年1月23日~3月4日)の関連イベントです。

「みるみると見てみる?」コレクション展関連トークイベント
開催日時:2019年1月27日(日)、2月3日(日)、2月17日(日)、24日(日)
     いずれも14:00から(40分程度を予定)
島根県立石見美術館 展示室Aにて

「あなたはどう見る?-よく見て話そう美術について」は、鑑賞者が自由に思いを巡らせたり、感想や意見を述べられるよう、
キャプションや解説を付けずに作品が展示されている展覧会です。


【その2 島根県東部にて】
島根県の東部にあります加納美術館でも鑑賞会を開催させていただきます。
安来市加納美術館(島根県安来市広瀬町)
企画展「愛しき島根」にて
開催日時:2月9日、3月31日
     いずれも13:30から


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